医者の2地域居住
突然、某医科大学の教授よりメールが来て、お逢いすることになった。
医学者と言っても、臨床医ではなく政策研究をされていて、日本社会の適正な医療システムと施設配置を課題としている。
そして限界集落などの医療問題を扱うために話を聞きたいということだった。
それについては準備もしていないから、「思いつき」で語るしかなかったが、そこで私が提案したのは、理想を追って完全な医療体制を望むのは無理ということ。今より一歩進めるしかない。無医師地帯には、通常なら巡回医療を思い付くが、そこを一歩進めて、田舎暮らしを考えている医者を誘致してはどうか。
別荘感覚の設備を用意して、田舎暮らしを求める医者に住んでもらう。とはいえ、ゆっくり田舎を楽しみたいのに、医院を開かせて忙しくさせたらイヤになるだろう。だからオープンするのは1日2日だけにする。
あるいは医者の2地域居住を推進してはどうか。
医院がまったくないよりマシではないか……。
ところで、その際に聞いたのは、日本の医療施設の現状だ。
大都市には大都市の医療問題がある。過疎地の問題もある。
今は人口50万人くらいの地方の中核都市が、今一番うまく機能しているという。病院配置と患者数のバランスが取れているのだ。
ところが、5万~10万程度の地方都市が、今もっとも危険だという。自治体が背伸びして病院づくりを行ってきたからだ。明らかに過剰設備を抱えており、赤字。経済成長している時代なら、政策的に支えることができたが、今やそれが不可能となり、崩壊が始まっているという。
……そんな話を聞くと、まさに私の住む生駒市がそれに当てはまった(^^;)。人口12万人で病院はいくつもあるものの、中核の病院が廃業してしまい、新しい病院づくりを市長が進めているのだ。絶対に経営が成り立たないって。
まったく、田舎と医療の問題は、どこから手をつけたらいいのやら。
ちなみに、教授は、生駒市に来るのならぜひ「忍性」の墓を詣でたいという。忍性とは、鎌倉時代の僧だが、専門的な病院建設に邁進した人物である。しかもハンセン氏病とか非人救済に取り組んだ。彼こそ、日本の病院建設の第1号ということなのである。そういう人物が、生駒市にいたとは。
竹林寺の忍性墓
« 国産ワイン樽 | トップページ | 家具メーカーのジレンマ »
「地域・田舎暮らし」カテゴリの記事
- 獣害でそば屋が休業(2025.03.17)
- 道の駅と富雄丸山古墳(2024.12.05)
- 熊野古道の雲海の村(2024.12.03)
- 道の駅「なら歴史芸術文化村」(2024.11.30)
- 流行る田舎のパン屋の秘密(2024.07.11)
田中様
医師不足は、どこも深刻ですね。
10年ほど前にこの問題で地元にインターネットで募集をしたらと提案したことがあります。
ただ、インターネットでの医師募集ではなく、医学の研究者を対象にしたらと言う提案でした。都会の雑音を離れ、静かな環境で研究したいと言う医師の条件をしっかり満たさなければなりませんが・・・。
投稿: 海杉 | 2009/12/01 14:34
医者も何を求めているのでしょうか単に待遇をよくすればいいわけではなさそうです。
森林療法で知られる信濃町の病院は、ここに勤務したいという医者が多くて、全然不足していないそうです。住みたくなる街づくりをすることが、ひいては医者不足の解決にもなるのでしょう。
投稿: 田中淳夫 | 2009/12/01 19:51