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2009/12/16

木材自給率は上がらない

予想通り? 民主党の迷走が始まっている。中途半端な事業仕分けに予算支出の組み替え、そしてマニフェストの揺らぎ……。

で、木材産業における民主党マニフェストを振り返ると、「木材自給率を50%にする」とある。まあ、この数字は自民党と同じなので新味はないが、果たしてどうなるか。

まだ林業政策は何も出ていないのに等しいから、何らかの予想をするのは無理なのだが、一つ言えることがある。それは、不可能でしょう、ということだ(笑)。

何も、政策的なことをくさしているのではない。統計を見ていると、原理的に無理であることに気づいたのだ。

というのも、平成20年度の木材総需要は7796万5000立米だが、そのうちチップの需要が3785万6000立米。その比率は48,5%以上。そしてチップの自給率は14%程度。言い換えると輸入されるチップが木材需要の約42%を占める

一方で製材品の国産材比率は41%、合板では21%に達している。合板はまだ底上げ可能かもしれないが、製材は思った以上に国産比率は高かった。

ということは、いくら製材や合板に国産材を増やしても、木材自給率全体を上げるのは難しい。だいたい製材品は木材需要の35%に過ぎず、それをすべて国産材で賄っても、ほかの部門が今と同じなら木材自給率は44%にしかならない。ちなみに合板は木材需要の13%。こちらも意外と少ない。

やはり木材自給率を50%にするために必要なのは、パルプやチップ、つまり紙の原料となる国産材を増やすことである。

ところが、国内でチップ用に伐採できる山は少ない。建設廃材・製材端材も使い切っており、今以上に増やすのは難しいだろう。林地残材を出すのも無理。そもそも皆伐になるから林業以上に自然破壊の声が高くなる。

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写真は、奥吉野のパルプ会社伐採地。10年たっても禿山のまま。

かくなるうえは、里山の雑木林を大伐採するしかない。……って、これも、無理だなあ。

かくしてマニフェスト達成は不可能だと結論づけたわけである。でも、これって、マニフェストづくりの際に計算しておくべきだよね。

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林業・林産業」カテゴリの記事

コメント

エコプロ展に行ったときもおもったのですが、製紙会社がなぜになかなかそこに着手しないのかとても疑問です。杉を使った紙の開発とか、もしくはパルプになる木の植林とか。間伐紙をつくっている平和紙業さんと話したときも、針葉樹で紙をつくるのが難しいとはおっしゃっていましたが、国が本気で研究費をかけてやれば不可能も無いのではと思ったりします。

針葉樹材で紙を作ることは、技術的には可能だと思うし,今もほかのチップに混ぜる程度には使っているはずです。パルプ用植林も、日本の会社は海外でやっているんですがねえ。

でも、なかなか弾けない。コストの問題が一番大きいと思いますが、何をどう変えたらいいのか、誰か研究してほしい。

田中様

政府も腰を上げました!

林業ニュースにこんな記事が出てますよ!

木材自給率10年で50%へ 政府の再生プラン

 低迷する国内林業の活性化と山村での雇用創出を狙い政府が策定する「森林・林業再生プラン」の全容が25日、明らかになった。木材を搬出する作業道の整備などに集中投資して効率化と安定供給を実現、林業を成長産業に育てるのが柱。木材自給率を今後10年で現在の24%から50%まで引き上げる目標を掲げた。

 政府はプランの具体化に向け、近く農林水産省に赤松広隆農相をトップとする推進本部を設置し、森林・林業基本計画の改定作業に着手する。

 日本の林業は零細な森林所有者が多く、作業道の整備も不十分で、木材の大量、安定供給が課題となっている。このため人工林の3分の2程度を対象に、1ヘクタール当たり100メートルの密度で作業道を整備。林業先進国のドイツ並みとし、低コスト化を図る。伐採作業を集約化するため、森林所有者や流通関係者と連携して収益の出る作業計画をつくれる専門家を、11年度までに2100人育成する。


いやあ、今回の政策は、結局のところ、これまでと代わりばえしません。
それに、これらの政策は林業の活性化を狙っていますが、製紙チップの国産化にはあまり影響しないでしょうね。多少C材がチップ用に出るようになるでしょうが。

今春、弊社の北海道の山で5ha程度ですがチップ材を間伐で出してみました。用材もぼちぼちあったこともありますが、意外に採算取れましたよ。

地形次第ではこういうのもありなのかなと思います。

補足

上記は「広葉樹二次林」の間伐です。

採算が合うなら、全国の放置雑木林・人工林を伐採してチップにするシステマティックなビジネスプランが作れたらいいんですけどね。
でも、所有者の問題もあるか。とくに里山では、細分化されすぎて集約化はきわめて厳しい。

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