ハウスメーカーに学ぶべきこと
ハウスメーカーは、主に柱に集成材を使う。
集成材は、無垢の製材より価格は高い。当たり前だが、一度ラミナ(板)にして、それを乾燥させてから接着するのだから、無垢の柱材より工程が多く、コストがかさむからだ。
逆に言えば、集成材の価格によって、それより安いように無垢材(国産)は設定される。
そう考えると、ハウスメーカーは高い素材をあえて選んで使っているわけだ。木材だけでなくだけではなく、営業費(モデルハウスとかチラシ、そして営業マンをたくさん抱えている)も高くつくだろう。
ところが、住宅価格自体は中小ビルダーより安かったりする。なぜだ? どこかで手を抜いているのか?
まあ、多少はそんなこともあるかもしれないが(^^;)、ハウスメーカー全体を悪徳業者みたいに言ってはいけない。むしろ街の工務店よりしっかりした家を建てているケースもあるし、何より施主の評判はよい。
実は、価格の高い集成材は、家になると安くなるのだ。なぜなら、集成材はちゃんと乾燥していて狂わない。おかげでプレカットできる。工期が短くなる。クレームも少ないから対策費もたいしていらない。
これを、トータルコストが安い、という言い方をする。無垢材は、木材としての価格は安くても、バラバラの流通とその後のケアが大変で、トータルコストが高くなる。
よく「住宅価格のうち木材の価格は1~2割だから、木材が多少高くても全体は変わらない」という。実は私も著作で書いてきた。が、無垢材を使うと、何かと工期が延びたりクレームがあるので、全体価格も膨らみがちなのだ。
そう考えると、国産材を売るには、3つの方法がある。
1、国産材も集成材化をもっと進めて、集成材市場の中で売り、生き残る。
2、無垢材としてブランド化して、価格が高いまま売る。
3、無垢製材も、トータルコストを安くする。
さて、どの道を選ぶだろうか。
世間の大勢は、1と2を選んでいるように感じる。国産材の集成材もかなり増えている一方で、無垢の柱を自慢している宣伝戦略を取る工務店はよく見かける。
だが私は、3を選ぶべきではないか、と思うのだ。ハウスメーカーに習って、トータルコストで安い住宅を造ってほしい。
ただし産直住宅は、失敗例が多くてお勧めしない。あくまで山元は木を売る人である。デザインや営業まで手を出すと、よほど人材に恵まれないと厳しい結果になる。
本当は、全部アウトソーシングしつつ、全体をネットワーク化してコストダウンを計り、価格を安くする戦略がある方法があると思うのだが……。
さて、どうだろうか。
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田中様
こんばんは!
木造住宅の話ですね。
一番の専門でありながら、これぞ!と言う手が打てないでいる弊社です。木材関係でいけば、他は、軌道に乗りつつあるのですが・・・。やはり、本業は、難しいものです。(笑)
海杉は思うのですが、ハウスメーカーも地場の工務店さんも外観などはさほど変わらない住宅が多いのではないでしょうか?それは、日本の住宅の作り方のほとんどが、メーカーのカタログでチョイスする形をとっているからです。この世界に無垢だの、集成だのと言っても、価格は、どうしても大量に仕入れる方が安いに決まっています。
集成メーカーにも年間契約でコストダウンを要求しているみたいですし、集成メーカー同士で価格の下げ合い?顧客確保に四苦八苦しているようです。最近は、ハウスメーカーの集成材志向が拍車を掛けているようです。
先月、弊社で竣工しました「延岡大手門の家」は、集成材と無垢材の入り混じった木造住宅でした。建築家の設計した住宅は、完全なオーダーメイドです。
当初の図面では、無垢米松E=110でしたが、国産ヒノキの集成を提案しましたE=105ですが・・・。
国産材の集成を使うには、もうひとつ問題がありますね。強度です。どうしても断面が大きくなって価格が跳ね上がるのです。
しかし、弊社の夢は、木造建築のコンストラクター専門会社です。どんな、木造建築も造ることのできる会社になりたいと考えています。
国産材を売るには、という題目には、離れているかもしれませんが、小さな建築会社が国産材で生き残るには、国産材を知り尽くしてどんな住宅でも造れる会社にするしかないと考えています。
今回の「大手門の家」も米松に価格と強度に対抗できる集成材と言うことで選んで提案しました。
今の建築会社は、この辺が弱いような気がしますので、国産材に強い弊社を売り込んで行こうと考えています。
まだまだ発展途上ですが、頑張ってみます。
投稿: 海杉 | 2009/12/07 23:38
海杉さん、本業を変えたら(木造鳥居屋とか)どうですか(^o^)。
集成材の値段が下がれば、無垢材はさらに価格を下げられますね。
私は、実は4つ目の選択肢も考えているのです。それは……木造住宅にこだわらない。構造材は鉄骨でもコンクリートでもいい。もちろん安くて強度があるなら木造でも、外材でもよい。
そこで国産材は、徹底的に内装商品に特化する。目に見える部分に木を使い、それは国産材であることを強調する。
その代わり、価格は高くする。内装木材の使用量は少なくても高ければ、山元への還元は増える。木材の伐採は少なくできるから、森林も守られる(^o^)。
ただ住宅全体は、トータルコストで従来の値段を保つ……。こんな戦略です。
どうかな~。
投稿: 田中淳夫 | 2009/12/08 00:08