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2010/01/20

木材自給率50%の不安

先のシンポの様子をもっと教えてほしい、という要望が幾つかきた。

事務局もまとめると言っているので、そちらに期待してほしいが、私も記憶に残っているものを亡備録的に記しておこう。

そこで、わりとシンポの骨格になっていたのが、民主党政権になってから出された初めての農林業政策としての「森林・林業再生プラン」。

その中に「木材自給率50%」目標がある。地球温暖化ガス25%削減とともに、野心的な数値である。

多少とも林業事情を知っている人なら、そんなの不可能だ、という感想を述べている。
しかし、相川高信論者のいうとおり、目標として高い数値を掲げるのは悪いことではない。だから私は反対しない。結果的に達成しなくても、それに向かっての動きが重要である。

だが、私は疑問を挟んだ。

というのは、以前このブログでも指摘したとおり、日本の木材需要の約半分が製紙用チップなのである。そしてそのうち86%くらいが外材だ。つまり全需要の4割以上が外国産チップ。

ということは、木材自給率を上げるためには、このチップの国産化も相当上げないと不可能ということになる。製材をいくら国産化しても無理なのだ。

そこで考えてほしい。せっせと育てたスギやヒノキをチップにするのか? 
製紙用だけでなく、バイオマス燃料とされるのもチップに近いもので、国産材のバイオマス需要を増やそうとすれば、スギやヒノキなど人工林で育てた木を細かく砕いて燃やすことになる。

もちろん廃材や端材ならよい。しかし、これらはすでに引っ張りだこだ。いくら林業を振興しても、限度があるだろう。

なにより、今でも木材自給率を上げている合板用は、価格が安い。そこにチップ需要を生み出しても、安いままだろう。

ということは、しゃにむに木材自給率を上げることに熱中したら、チップに国産材をどんどん投入することになり、木材価格は安い方へと引っ張られる可能性が高い。林地残材を商品化するということは、実はこんな側面もある。

それは結果的に、山元への還元が少なくなることにつながる。まさに「林業振興」が、「山村疲弊」へと結びつくジレンマ!

だから、木材自給率にこだわるのは危険なのだ。できれば山元への利益還元率とか、絶対額のような指標を持つ方がよいのてはないか。

ところで、私の発言を受けて、熊崎実大先生は、「ドイツの木材自給率は、約50%にすぎない」と言った。あれほど製材などを輸出しているのに、木材自給率はそんなに高いわけではないのだ(日本より、相当高いけど)。

実は、残りの50%は主にチップを輸入しているのだそうだ。製材・集成材・合板は輸出するほど作っているが、一方で安いチップは輸入する。

ある意味、水平分業体制が成り立っている。もっとも、そのチップを輸出している国はどこか、チップの価格でその国の林業者は潤っているのかはわからない。輸送エネルギーのことも考えないといけない。それでも、一つのモデルになるかもしれない。

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林業・林産業」カテゴリの記事

コメント

木材自給率を単にあげることを目標にしていたのではだめなんですね。
森林会社に入って、最近このブログを読み始めましたがとても勉強になります。
ところでその安いチップはどこから入ってきているのでしょうか?南米とかですか?

田中さん、こんにちは。先日はお疲れさまでした。シンポ終了後の飲み会でですが、この話題にちょっと参加したので初めてコメントします。

おっしゃるように一番需要が多いのはパルプ・チップ用材なので、自給率を押し上げるにはこの分野での国産材供給量を増やす必要があります。この分野は現在の自給率も低いので伸びしろも大きいと言えるでしょう。

ところが、紙パルプ需要を詳しく見ると、樹種別では広葉樹チップの需要が大きいという実態があります。輸入チップも多くは広葉樹チップで、これは製紙会社が海外でユーカリなどの早く育つ広葉樹を盛んに植林し、そこからの輸入を増やしているからです。

ではなぜ広葉樹チップの需要が多いかというと、印刷用紙などの上質紙はインクの乗りをよくするために繊維の短い広葉樹チップの配合率を高くする必要あるのです。つまり、紙パルプ分野で自給率を高めるためには国内の広葉樹チップ供給量を増やさなければなりません。

しかし、ほとんどが天然林である広葉樹林を大量に伐採するという行為がいまの日本で社会的に許容されるでしょうか。そんなことをしたら自然保護関係者の攻撃を浴びて痛い目を見るのが落ちだと思います。本当は木が大きくなりすぎている里山を若返らせるために広葉樹もある程度伐る必要はあるはずですが、自給率アップのために伐るというのはおかしいと思います。

今後は住宅着工が減るので、需要自体が減少し、相対的に自給率が上がることはあるでしょう。ただ、このように分母の動向に左右される自給率を目標に掲げること自体もどうかと思います。「率」をうんぬんするために山に過度の負担がかかることのないようにしてもらいたいものです。

長文になってすみませんでした。また飲みましょう。

輸入チップは、主にオーストラリアですかね。ほかにチリとかアメリカ、カナダ、ニュージーランド……。南アフリカもあったと思います。

今、国会中継を視ています。何だか怖くなる位に“林業”とか“路網”という言葉が飛び交っていますよ。
上滑り、という気がします。

すぐにテレビで国会中継を見ましたが、残念ながら林業の部分は終わっていたようです。

里山の雑木林を伐採することは、前回も提案したのですが、難しいでしょうね。市民団体だけでなく、コスト的にも、また森林の集約化の面からも。山林以上に細分化されていますから。

住宅需要が減れば、製材需要が一番減るでしょうが、チップ需要はそんなに減るとは思えず、逆に木材消費に占めるチップの率が高まることも考えられます。
こうなれば、山の再造林の際は、ユーカリを植えるしかないな(^^;)。

雑木林 自然林 天然林 そして 原生林

広葉樹が生えている山は 色々あります。

自然の とか 昔の とか言われますが 人の手が入っていなかった山は 日本にどれくらいあるのでしょうか。

メソポタミア文明より昔から 日本は人が森林と上手く共存して今まで続いてきた スゴい国なのだそうです。

広葉樹林も そこそこボチボチに 人の手を入れる事で 森林を更新させていました。

森の食物連鎖の頂点にいるクマタカ イヌワシの研究をされている方が 込み入った山の広葉樹も伐らないと 生物の多様性が守れないとおっしゃっていました。
私がお会いした本当に現地に足を運び、人生をかけて研究されてきた方は、皆さん広葉樹林も更新をしなくてはとおっしっています。

昔 炭や薪 木地師の原材料などを供給していた一度人の手が入っていた広葉樹林は(日本のほとんどの山でしょうが)再び 一刻も早く 更新させてあげないと 森の生命力が落ちてきます。

松から始まりナラ枯れは そのシグナルではないでしょうか。

燃料としての需要が少なくなった今、ルールは必要ですが
製紙会社に 使っていいよ と 消費者がOKをだせば 世界の森も日本の森も守れます。

ただし、自然を守りながらなので効率のよくない作業になります。国の山河を守る為には使う人も負担するのが筋ではないかと思います。

ユーカリは 持続可能でCO2吸収にはなりますが、現地では緑の砂漠と言われているそうです。

日本の広葉樹林も 森を守れが森を殺している が 当てはまるのではないでしょうか。

ちなみに 広葉樹の間伐も 私の近所では施業されています。

樹さんのおっしゃる通りだと思います。

広葉樹林を健全な森にすることもきちんとした目標にすべきですよね。

私が困るな、と思っているのは、「自給率50%」という率が目標になっているので、それを達成しようとするあまり、無茶な伐採が行われることになりはしないかということです。本来は森をどう整備するかの目標をきちんと立て、それに伴ってどれくらいの木材(針葉樹も広葉樹も)が生産できるかを示すのが筋だと思います。

難しいのは、無茶な伐採なのかどうかを誰がどういう基準で判断するかですよね。

年間10ha二次林を皆伐していますが、一応80年サイクルで計画的にやっています。でも天然更新してそれなりに見えるようになるには最低10年はかかりますから、実際に伐採の現場を見れば結構な自然破壊に見えるでしょうね。

数十年前に同じように一度伐った山なんですよ、と説明すれば、たいがいの方には納得してもらえますが、感情的になられるとお手上げです。

ちなみに皆伐地はトンビの良い餌場になっています。

スギ・ヒノキなど針葉樹は育林が必要なものが多いですが、広葉樹なら植えっぱなしでもなんとかならないか? まあ、その後の資源確保につながるかどうかはわかりませんが。

なお、ユーカリも捨てたものじゃないですよ。「緑の砂漠」というのは、熱帯雨林の伐採跡地に植えた場合で、さすがにジャングルの多様性は失われますから、嫌われたのです。原産地では、ユーカリ林は非常に有効な森林となっています。

sunheart03:;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+:;;;:+*+

フザケルナ

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