森林認証制度が日本の山を殺す?
林業界では話題にならないが、木材を扱う業界で最近話題になっているのは、合法木材の問題のようだ。
木材を使う場合、その木を得るために森林破壊になっていないか、という消費者意識にどのように応えるか、というのだ。
世界的に合法木材を求める声が高まっている。地球温暖化問題や生物多様性問題を抱えて、熱帯諸地域の木材はおろか、ロシア、そしてアメリカでさえ、非合法的な伐採をした森林が増えて、その木材が市場を占拠している。これをなんとかしろ、という消費者が増えてきた。
日本には、合法木材証明を出さないと公共工事に使えないなどの枠組みはあるが、その実態はあまり明確ではない。ちゃんと認証に耐えられる管理を行っている森林がどれだけあるのか心もとない。とくに外材の場合は、合法かどうか非常に難しい。
そこでFSCやSGECなどの、森林認証制度が登場する。
環境に配慮した林業を行っている森林を認定するものだが、これが合法証明にもなるし、それ以上の環境問題の切り札なのである。
もともと認証は、森林の管理ツールとして誕生した。だが、世界の趨勢は、徐々に変化してきたようだ。森林認証は管理ツールから、取引の義務ツールになりつつあるのではないか。木材貿易に森林認証が欠かせないパスポートになっていくことを示している。
とくにヨーロッパでは、PEFCsの認証が多国間貿易の際に義務化しつつあるようだ。もともとPEFCsは、各国の森林認証相互承認システムだが、この認証を取っている国の木材は、輸出・輸入しやすくなる。逆にいえば、認証がないと輸出入しにくい。
ところが、日本では森林認証制度は、まだまだマイナーだし、認証面積もしれている。そして市場に出される認証材の量は、極めて少ない。とても、消費者の要望に応えられる状況にない。
そこで気になるのは、日本独自のSGEC認証が、PEFCsに加盟しようとする動きだ。加盟すると、国産材が海外輸出できるようになる…のではなく、世界からヨーロッパを始めとするPEFCsの認証材がドドドと日本に流れ込んでくるだろう。
なんたって認証材である。環境に配慮してるもんね。合法木材のお墨付きみたいなものだ。外材だからと敬遠する向きも文句が言えない。日本の木材は、大半が人工林で持続的だ、と主張しても、認証がなければ信用されないし、そもそも再造林放棄が進む日本の山で、本当に持続的だと言える木材がどれだけあるのか。
下手すると、森林認証がないことを理由に、国産材が駆逐されるかもしれない。
森林認証制度が、日本の山を殺す、なんて言ったら、言い過ぎだろうか。
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今年初めてのコメントをさせて頂きます。
森林認証については、それなりに知っているつもりでしたが、先生のご指摘には目から鱗というかいささかドキリともしました。
“国際的な森林認証”という錦の御旗を前面に出されては、確かに異論は唱えにくいですね。
対抗策としては、ウッドマイルズか地産地消を主張する他ないですよね。
投稿: 中村和彦 | 2010/01/14 18:56
ウッドマイルズは結構な距離が許容範囲になっているみたいですね。地産地消を言い過ぎると、生産地の周辺に消費地がないと大変になるかも。
適材適所あたりかな。工務店、ハウスビルダー、木工所の方が満足でき、消費者の方も欲してもらえる木材を供給していくしかないでしょう。
その条件が、いい家、いい製品なのでしょう。それを支えるのが、品質、デザイン、機能あたりでしょうか。
当たり前のことを書いてしましました。
ただ、どなたにも簡単に理解してもらえる方法が「森林認証」を取得しているってことなのでしょうか。その内容は難しくて分からないとしても。
投稿: 鈴木浩之 | 2010/01/14 19:52
住宅の性能を10年間保証する「品確法」も、本来は国産材が巻き返すチャンスだったんです。
ところが国産材は前々性能表示をしていないから、海外の集成材にとって代わられて、見事にシェアを食われてしまいました。
同じことが森林認証制度で起きないかなあ、と。
とくにSGECはアブナイ(笑)。
投稿: 田中淳夫 | 2010/01/14 23:31
ウッドマイルズも、理念はいいんだけど、難しさが普及の足を引っ張っている気がする。そして外材との差別化よりも地域材同士の争いになってしまうと困る。
国産材は、とるにもかくにも多く認証をとり、ウッドマイルズを示し、そして性能表示もしっかりしてほしいですね。
投稿: 田中淳夫 | 2010/01/14 23:33