住宅市場と国産材の相性
昨日、某議員秘書と会って話したのだが、森林政策に関連して住宅問題に触れられた。
そこで私も、改めて住宅について考えてみた。いうまでもなく、住宅は、最大の木材消費分野である。
昨年の新規住宅着工件数は78万件にまで減少したが、これは一過性ではなく、今後も続くだろう。いや、この数字を標準と考えるべきであって、これまでが多すぎた。人口比で見れば、ようやく欧米並になったといえる。
となると、木造住宅の着工件数も現在の水準が続くことになり、木材需要は減ったままだ。回復を期待してはいけない。だいたい高齢化・少子化が進んでいるのだから、家の需要が減るのは、何十年も前から予測されているのである。何も、不況だから減ったのではない。
そう考えると、木材需要が増える要素を思いつかない。
なかでも大量の需要がなくなるとすると、ハウスメーカーは窮地に立つ。最大の利点が、大量生産方式でコストダウンを図ったり、建材なども買い手市場を形成することだと考えられるからだ。今後は、着工数を競う企業は沈没するのではないか。
では、リフォーム市場はどうか。
新築よりは安く、それでも傷みがひどくなってきた住宅を一新するのだ。ローンを支払い終わったら資産価値がなくなる現状を変えるためにも、リフォームをして長期住宅に変えることが重要だといわれている。
そのとおりだが、見落としがちなのは、リフォームはスケールメリットがないことだ。一軒一軒違うからだ。技術も多岐にわたる。するとハウスメーカー的な経営は難しいだろう。
……と、ここで気づいたのだが、スケールメリットがなくて、ケースバイケースの技術が要求されるのは、国産材とそっくりなのである(笑)。
国産材は、大量に注文すると、単価が上がるという不思議な構造がある。ストックが少なくて大量に集めるには手間がかかるからだ。しかも木材は一本ずつ扱うから、スケールメリットがないのである。
そして地域ごとに山も木も違うので、林業家も製材業者も技術が違う。それそれの流儀がある。製材も、寸法が同じなのに、なぜか工場ごとに形が違う(笑)。
このようにリフォーム市場は、多品種少量需要である。
国産材市場の流れから未来を推測すると、こうした業界は小回りが効かないと破綻する(笑)。で、今の住宅業界は思い切り膨れ上がって大回りも効かない状態だ。結局、ハウスメーカーは、リフォーム市場に参入しない、できないのではないか。
だが、国産材と相性がよいのだ。「国産材はリフォーム素材に向いている」と言えなくもない。それこそ地場の木材を少量でも取り寄せられ、注文に合わせて加工できる。リフォーム市場が膨らめば、国産材市場も共に伸びていく……!
国産材の木材産業も、コストダウンを狙って大型化を進められているが、実は危険かもしれない。むしろ個別対応できる製材所の方がリフォーム向き素材を提供できるのである。だから国産材の将来は明るい。
……なんて、夢を見る(笑)。
とはいえ、甘くない。ハウスメーカーだって、汎用性のなる建材を開発するだろうし(それは、木材であるとは思えない)、国産木材を扱う業界も、そうした小回りを帰化した経営ができるところはどれほどなるのか。
どんな業界も「環境の変化に対応できる」ことが生き残る秘訣であるのだけど。
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