「私のしごと館」で発見!
細い間伐材の利用法として、かつて建築現場の足場があった。しかし今は金属パイプに変わってしまった……という話をよくする。
ようするに、かつては細い丸太は細い丸太なりに商品化していたのに、現在は姿を消して、それに変わる商品を生み出していないことを指摘するためだ。
で、パワーポイントでも商品見本を示そうと思うのだが、もはや建築足場に間伐材を使っているケースはまったく見かけない。おかげで写真も取れないでいた。そこで苦しい写真を利用しているのだが、ついに昨日、見事な間伐材を利用した建築足場をケースを発見。
それは、「私のしごと館」である(^o^)。
ご存じだろうか。雇用保険を湯水のように使って(建設費581億円以上!)、さらに維持費に年間20億円赤字を垂れ流していた、独立行政法人雇用・能力開発機構が設置した施設である。とうとう、今月末にて閉館が決まった。
実は、我が家からそんなに遠くないところにある。これは行かねばならないでしょう、と閉館前に行ってきた。
まあ、不思議な施設だった。面白かったのは、マスコミにはあまり報道されていないが、いろいろな職業体験をさせる以外に「労働」の博物館的要素もあることだ。とくに建設やものづくり現場が展示されているのだ。ここは子供向きではないなあ。
そこで見つけたのが、これ。
しっかり間伐材を使って足場を作っているじゃないか!
それどころか、丸太を結んでいるのは全部藁だ。へええ、これでよく重さを支えられたものだ。
ちょっと古すぎるから、この写真をパワポで使うのはマズいかと思ったが、次にあったのが、昭和の建築現場。
こちらは洋風の団地などの建築現場を模しているようだ。でも、こんな雰囲気は記憶に残る建築足場そのままである。ちゃんと、丸太を番線でくくってある。
これなら使える。今後、講演でパワポを使う場合、何食わぬ顔して、この写真を「昔の間伐材商品の使用例ですよ」と映し出すかもしれない(^o^)。
まあ、よく見ると、どちらの写真にも職人の実物大フィギアが写っているのだが、それには触れないこと(-_^)。
この施設に関しては、いろいろ思うところはあるが、こんな形で私が活かしてあげるよ。
« ツバルの水没 | トップページ | 吉野林業は土佐の人がつくった? »
「木製品・木造建築」カテゴリの記事
- 「昔ながらの樽丸づくり」展(2025.06.21)
- 大阪万博の木質パビリオン(2025.06.16)
- 謎は解けた!大屋根リングの木材(2025.06.05)
- 皇居「松の間」の床(2025.06.01)
- 謎!大屋根リングの木材(2025.05.25)
足場丸太、80年代にはまだ売ってました。たしか埼玉県の小川町か都幾川村あたり買った記憶があります。上総掘りというむかし式井戸掘りの櫓を、伝統に則って藁縄で組み上げたことがあります。
丸太を藁で組むやり方はいろいろあるようですが、陸軍工兵隊式を教わりました。江戸時代どころか、昭和の前半まではバンセンは普及してなかったようです。
現在の建設現場では丸太足場は許可にならないと聴いたことがあります。
庭師の世界では間伐材の細丸太は健在です、ときどき注文があるのですが、なかなか出せません。切り捨て間伐の山からタダで手に入ることもあるようで、値段はとっても安い。
細い丸太で、一寸角くらいの垂木をつくっているところも、まだあります。芯持ちの垂木は丈夫ですが、コスト的に合わないので絶滅危惧種でしょう。
投稿: yuni | 2010/03/29 19:16
垂木は一寸五分角です。訂正。
投稿: yuni | 2010/03/29 19:19
藁で組むのも昭和まで残っていたんですね。
当時、番線は値が張ったのでしょうか。
細丸太の現代的な需要を考えるのは難しいですね。価格や使い勝手では金属パイプに負ける。ただ園芸のような感性や見栄えを重視する世界なら、イケるのではないかと思うのですが。
投稿: 田中淳夫 | 2010/03/29 22:00
4年前に見かけた土木現場の足場丸太(水俣)と解体現場の丸太(足場でなくてシートを張るため・杉並)の写真を撮りました。平成時代の丸太の写真がご入り用でしたらお送りします。
雇用保険のカネを無駄遣いした奴には責任をとってもらわないといけませんね。同じ額を雇用保険で配れば、ずいぶんな人数が救われたでしょうに。
投稿: 沢畑 | 2010/03/30 00:00
「平成の足場丸太」。この響、いいですね(笑)。貴重な時代の記録になるかもしれない。
それにしても「私のしごと館」の展示物、すごいですよ。何がすごいって、フィギアが……。リカちゃん人形のコレクションなんて、ファン垂涎の的でしょう(笑)。
投稿: 田中淳夫 | 2010/03/30 10:34