無料ブログはココログ

本の紹介

« 限界集落に「支援」は役立つか | トップページ | 携帯電話と役物 »

2010/05/26

「定住圏のリストラ」を望む勢力

なんだか「限界集落」シリーズとなりかかっているが……。

先日、たまたま検索で引っかかったHPで、「限界集落のような過疎地に税金を投入するのはけしからん」という論調があった。その理由は単純。私たち(都会人)が払った税金を、無駄に使っているから、というもの。人口密度の低いところへの資金投入は効率が悪いし、元が取れない、というわけだ。

この意見に反対するコメントもついていたが、両者が折り合うことなく、最初の「過疎地なんぞ見捨てたらよい、限界集落の住人は強制移住でもさせたらよい」という意見に変化はなさそうであった。

この手の意見は、実は珍しくない。いや、本音のところでは都会人に多いだろう。ただ、世間体?と建前に縛られて公には口にしないだけだ。匿名性の高いネットでは、多く出ている。

ここで私が反論するつもりはないが、気になるのは個人レベルの意見に止まらない可能性があることだ。

不況が続き、国民生活とともに国家財政も追い詰められていく中、おそらく遠くない日に、国家的な定住圏のリストラが始まるのではないかという思いが私にはある。

以前は狭いニッポンと呼ばれたが、案外山襞が続く複雑な地形の国土は広く、人口減少期に入った今、満遍なく人が住むことは行政効率の低下につながる。そこで集中とコンパクトな定住圏を構築したい発想が、生まれているのではないか。

1962年の全国総合開発計画(全総)に始まる国土計画構想は、五全総まで繰り返しつくられ、2008年には国土形成計画がつくられている。最後の形成計画では、これまでの開発(拡大)構想から舵を切り、「国土の利用、整備及び保全に関する施策を総合的に推進する」と方針転換を示したように思われるが、まだとば口にすぎない。
今後は「国土(定住圏)の縮小」が課題に上がってくるのではないか

その際に、真っ先に縮小・撤退の対象として取り上げられるに違いないのが、限界集落を象徴とする過疎地だ。

すでに私も触れてきたとおり、撤退やむなしの集落が増えているは事実だ。住民が集落維持の限界を感じているのに、無理強いすることはできないからである。

しかし、ここで気になるのは、辺境の住人の視点からの撤退ではなく、国家主義的な撤退の発想である。国土を守り、税収の再配分の理念を塗り替えるための「辺境からの撤退」を考えている勢力がいるような疑念が私の中で膨らんでいる。

それは、強力な国家の再構築のための国土のリストラだ。企業にたとえれば、赤字を垂れ流す事業は、すっぱりと切り離し、資金とともに雇用していた人を重点事業へ再配置する。それが無理なら退職に追い込む経営戦略である。

国家における赤字事業に相当するのは、辺境の地である。行政コストが高いこれらの地域をリストラすれば、浮いた資金で都市部の生産性を高めて、中央集権国家をつくる。そう考える人が増えているように思えてならない。

実は、今日生駒を訪れた来客と話している中で、集落撤退の研究に興味を示す財団が現れている話を聞いて、これまでモヤモヤ感じていたことが急速に輪郭を描き出した感覚になった。

まだ在野の主張だと思っていた国土のリストラ、すなわち辺境集落の切り捨て論は、すでに深く国家論壇に浸透しているのではないか、という想像が働いた。

思えば、外資が日本の森を買収する、と煽っている勢力ともつながっているような気がする。危機を煽りつつ、辺境地でもある森林を中央の直接の管轄下に置きたがっていることと相似形に見えてきた……。

そのうち、「美しい日本の再構築」を唱える論客が、辺境地からの撤退(限界集落の強制的撤退)を主張し始めるかもしれない。一見、辺境の将来に思いを馳せ、住民のよりよい暮らしを送らせるための支援のふりをして強制移住を迫る……。

これが妄想でないことを祈りたい。

« 限界集落に「支援」は役立つか | トップページ | 携帯電話と役物 »

地域・田舎暮らし」カテゴリの記事

コメント

「国土の均衡ある発展」は東京・大阪など大都市への一極集中による弊害を是正するために言われた概念だったはずなのですが,いまやベクトルは逆向きになり,「国土の均衡ある縮退」になっているのですよね(後者の表現は,小泉内閣時に某ビジネス誌で見たものであり,誰の発言かはわかりません.文脈では広中平祐氏と読めましたがソース確認ができていません).

一方,「コンパクト・シティ」構想も,やや前者とは意味が違いますがこの問題と同一の基軸に載っていると考えられますね.

小泉内閣時代に、そうした意見が出ていたのですね。政権が変わっても、そうした論壇の根っこは消えないだろうなあ……。

「国家の人口減少」という事実が、こうした思想にまで波及しているのでしょう。

「過疎集落の撤退や消滅はありえない。ありえないから考えない(思考停止)。『考える人』がいればそれは『経済優先の悪者』にちがいない(他者の足を引っ張る)」の反動でしょう。おそろしいことです。「真っ白」(すべての過疎集落を守れ)から、一気に「真っ黒」(問答無用で撤退)へ。現実の解は「真っ白」でも「真っ黒」でもない「灰色ゾーン」にあるはず。でも「灰色ゾーン」の議論は進まない。だから一気に「真っ黒」まで走ってしまう…。ちなみに共同研究会「撤退の農村計画」は灰色ゾーン。「真っ白」からも「真っ黒」からも攻撃を受ける最悪のポジションです。

「全集落の維持」と「完全撤退」。両極端に走る不幸もありますが、どちらの選択肢にも「住民目線」と「国家目線」があるように感じます。

国の論理として、全集落を維持しなければ国土を失うという理屈もあれば、強力な体制を築くためには無駄な支出を減らすため撤退を強制するという両極端。
一方で住民目線として「住みたい人がいるなら絶対に死守」と頑張るのか、「住民は等しく豊かな生活を送る権利があるんだから撤退して都会に」を叫ぶ両極端。

それぞれのグレーソーンに解はあるでしょうか。

 都市集中が国策の方向だとしても、物理的な強制移住にいきなり進むよりも、インフラ更新の停止のような兵糧攻めから始まるような気がします。すでに拠り所となる自治体が存在しない旧村ではインフラ更新停止はたいした議論もなくすすめられます。

 このままいけば10年以内に学校の統廃合で子育て世代が住めなくなります。10年後に光ケーブルの張替えができなければ、テレビもネットも無い地域になります。

 ただし、水と食料と燃料はあるので、暮らしは継続可能です。ある意味で野生生物とのフロントとして存続を黙認されるかも。アドベンチャーランドの案内人として生計をたてる方法もあるかもしれません。

 あえてここで暮らし続ける人々は、反権力的集団として監視対象にはなるでしょうが、非武装山岳ゲリラとして都市を包囲し続けることでしょう。「解放区」を自覚的に創ることができるかどうかが、新しい山の民の成否の鍵だと思います。


山村集落の非武装山岳ゲリラ基地化! 解放区!
その頃には、ネットは人工衛星から電波飛ばすようになっているかもしれないし、十分生きていけます。

新たな国土像の提案ですね(^^;)。
いや、実際に新たなフロンティアの登場なのかもしれません。国は、コスト減を喜ぶのか、まつろわぬ人々の存在を厭うのか。


「住民目線」も「国家目線」も両方とも必要。双方歩み寄って現実的な解をさぐるべきでしょう。わたしはこの問題を「住民(あるいは反権力)対国家」という単純な枠組みにおしこむべきではないと考えています。

山村に住みたいという人を説得して山村から追い出すのはやめてもらいたいものです。出て行きたいという人は止めませんので。だから、私もグレーです。は真っ白でも真っ黒でもないかな。

山村に住みたい人がいれば、そこで最低限の文化的生活を送ることを憲法は保障する(だから統治権力である役人と政治家はそうしなければならない)のですね。以前から住んでいた山村に住み続けることが公共の福祉に反しますか?

一方で、いらん山林を買いますと政府が言えば、「買ってくれ」と言う人は多いように思います。東北の軒先国有林の村とか東京都水源林が大きな面積を占めている山梨県小菅村(だったかな?)は、森林公有化を既に行ったわけですが、幸せな山村生活を送っているのでしょうか。自分の上に他人の山がどんとあって大丈夫なのかな。

山村に人がいなかったら、九州の人工林の手入れをするのに雇うカネが結構かかります。棚田も少ないとはいえ食糧生産地ですから、やがて来る食糧危機に備えるのは悪くない選択と思います。平地に移住しても、農地をつぶして住宅を造るのでは?

ところで、本日の熊日新聞には北川フラム氏が「奪われる日本の森」の書評を書いていて、中国人が山を買いに来た話は本気で信じているようですよ。以前にも書きましたが、日本人が水俣の山を買ったおかげで巨大産廃処分場ができそうになってちょっと苦労した私としては、村外資本はどれも同じようなもんです。

限界集落も、放置林も、「辺境」つまり国家体制の中枢からもっとも遠い部分の問題です。ここを国家がいかに管理するか……という視点で動いているような気がします。
管理(行政)コストは下げたいし、かと言って放置してしまうと「外国が買い占める」から困る。なら、国家が買い取って、そのうえで放置する、なんてこと考えてるのかな。

それにしても、プロの書評家ならメディア・リテラシー持てよ。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/36391/48467172

この記事へのトラックバック一覧です: 「定住圏のリストラ」を望む勢力:

« 限界集落に「支援」は役立つか | トップページ | 携帯電話と役物 »

2017年11月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    

森と林業と田舎