木材会館-高層ビルの木造化
東京では、「森林の市」以外に行きたいところがあった。それが、新木場の木材会館。
以前から考えていたのは、高層ビルディングの木造化の可能性である。
木材需要を一戸建て住宅ばかりに頼るのは、人口減少時代に無理がある。オフィスビルの木造化を考えるべきではないか。またマンションなど集合住宅も、基本的に同じだ。現在は鉄筋コンクリートで作られている建築物を、いかに木造にするか。
……実は、この考え方は、以前に本にも記した。(だれが日本の「森」を殺すのか)
取材を重ねると、すでに木造ビルディングの研究は進んでいて、それなりの成果を得ていた。技術的には可能だそうだ。ただ法的な問題があるうえ、耐震、耐火など膨大な実験データを積み上げる必要があった。当然、コスト問題もある。
また、本当に木造ビルが必要か、という原点でも考え込んでしまった。木材関係者が木材需要先として望むのは当たり前だが、ユーザー側にニーズがあるのか。メリットを十分に説明する根拠に欠ける。逆に、デメリットだってある。
そこで思いついたのは、木材を使うメリットは、基本的に人の目に触れることであって、何も見えないところの構造材として使う必然性はないということだ。むしろ鉄骨の方がよい場合もあるだろう。
となれば、構造材としては、十分な研究と実用データのある鉄筋コンクリートでよいではないか、内装と外装にたっぷり木材を使えばいいのである。
もう一つ。木の内装とか外装、あるいは木造建築物というと、どうしても和風建築を頭に描く人が多い。洋風というと、一気にログハウス的になってしまう。しかし、もっと現代的なデザインがあるはずだ。趣味に陥らない、穏やかな木装が。
さて、長い前書きになったが、そこで新木場の木材会館に注目したのである。
この建物は、東京木材問屋協同組合が昨年3月に建てたものである。さすがに木の町・新木場だけに、たっぷり木材を使うことを目指して設計された。
7階建て。敷地面積は500坪。使った木材は、ヒノキを中心とした国産材約1000㎥(一部、外材)である。と言っても、構造的にはほとんど鉄筋コンクリートで、内装、外装にたっぷり木材を使っている(一部は構造材にもなる。)
見よ。現在の建築法でも、ここまで木材を使えるのだ。
外向きの箱型空間が設けられている。
コンクリート壁面の上に組み立てられているらしい。外面だから、耐火性もあまり要求されない。また途中階には不燃処理したファイヤーストップ材が使われている。
コンクリートと木材との融合。
これ自体がデザインである。木材は、木材同士より異種マテリアルと合わさる方が似合う気がする。
1階ホール。ヒノキの舞台がある。壁材としても木材のデザイン性に目を奪われた。
これは、外壁のコンクリート。しかし、よく見てほしい。合板のコンパネは使わず、スギ板を枠材にしている。そして、見事に木目を転写した。これ自体が技術だね。
直接的な木材利用だけでなく、コンクリート建築物にも木材は使われてる。
正直、金かけたな、空間を贅沢に使ったな、と思わせる造りだったが、木材でここまでの外装ができるという見本だろう。何も新技術がなくても、十分木材を高層ビルに使えるのである。そして、景観に寄与する。
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貴重な写真ありがとうございます。
しかし、すごい量の角材(4寸角?)ですねえ。しかも、もしかして白木ですかね。いや、そんなわけないか。いずれにしても、非着色ですかね。どのくらい香りが残っているかという点も気になりますが。
すでに雨染みが黒っぽく見えていますが、コンクリートや鉄とあわせると、シブやサビで汚染されるというのが弱点という気がします。
経年変化で「汚く」なっていくのを、施主としてどこまで許せるかというところかと思いますが。
5年ごとの塗装とかって、コストかかりすぎて無理だと思いますので。
それにしても、こんな感じで「コンクリートから木へ」って時代になる・・・・はずないですね。
投稿: 楽山 | 2010/05/17 23:26
内装には、白木もあったと思います。
外装は、不燃処理のほか、撥水加工しているようでした。
「コンクリートから木へ」ですか。これ、いい標語だなあ。「人」に十字架背負わせると「木」になるのか。
投稿: 田中淳夫 | 2010/05/18 09:30