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2010/05/28

携帯電話と役物

iPadが日本に上陸したニュースが飛び交っている。いや、その前から、日本の携帯電話を「ガラパゴス化」が指摘されてきた。

いわく、日本の携帯は、独自の機能を進化させたものの、それは国内向きであり、海外では受け入れられなかった。その結果、市場が狭いゆえ携帯端末の価格は高くなり、いよいよ世界市場に置いてきぼりとなった。気がつくと、肝心の独自機能も国民からそっぽを向かれつつあり、iPhoneなどの普及により携帯OSは世界標準に切り替わってしまっていた……。

ま、こんなところか。

いやあ、実は昨夜、日本の木材の「役物」について調べてみたのだが、見事に符合する。

役物とは、日本の住宅市場で、和室の見える部分に使われる装飾性の高い木材のことだ。わかりやすいのは、床の間の磨き丸太や、無節の柱材などである。これが戦後の住宅市場を一世風靡した。

価格も通常の木材の何倍何十倍もしたうえに、実にさまざまな種類が登場するのである。

たとえば磨き丸太一つをとっても、最初は間伐材のような細めの丸太の川を剥いて磨いたものだったはずなのに、やがて表面がでこぼこの絞り丸太が人気を集めたり、錆丸太みたいにカビを生やして斑点模様を付けたり。またそれらを生産するために、立木の幹にでこぼこになるコルセットみたいなものを巻き付けたり。あえて節を強調した出節という磨き丸太だってある。(写真)
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一方で無節の柱材が高値を呼ぶと、表面だけ無節のツキ板を張り付けた化粧張り集成材も考え出した。これで大量生産できるうえ、大儲けできた。

よく考えれば、無意味な産地ブランド化も起きた。



それぞれはすごい技術や発想なのだが、もちろん、こんな木材、日本国内でしか売れない。いわば木材のガラパゴス化だ。それでも、国内市場だけで十分と思っていたため、世界的な潮流に目を配ることはなかった。

それでも、役物は1990年代まで高値で売れ続けた。並材の価格下落を補えるほど。ところが、21世紀を迎えるころから、一気に消費者に飽きられる

役物は和室にしか使えない。ところが消費者は和室を嫌いだした。価格が高いこともだが、そもそもデザインとして評価されなくなった。また、品確法などで住宅の品質が問われたとき、強度などにニーズは移り、見栄えは求められなかった。

すでに役物は、壊滅した。今後は細々と特殊な木材として天然記念物のようにして生き延びるだけだろう。世界遺産くらいにはなれたらいいのだが。

なんだか、iPhoneが、いきなり斬新なインターフェースとものすごい数のアプリを提供して世界中を席巻したのと似ている。このままだと、日本の携帯の独自機能は役物のように衰退して、携帯OSまで外国企業に押さえられてしまうだろう。そうなったとき、携帯の特殊なオタク機能として、産業記念物?、いやサブカル記念物にでもなるかもしれない。

ちなみに木材のガラパゴス化は、役物だけではないのかもしれない。

いまだに無垢材が最高! なんて言っているのもガラパゴス化だと私は思っている。世界は集成材へと向かっているのだよ。気がついたら、無垢材で家を建てることは世界標準から見放されている。そのうち無垢材の家は、文化財になるかもね。

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コメント

阪口製材所の社長は、集成材について「材の寿命が、木の寿命でなく接着剤の寿命で決まってしまう」「接着剤の混入によるリサイクル上の問題」「シックハウスの懸念」といったデメリットを排除するために、集成材をやめて無垢材に転換したとおっしゃっていました。
http://wood-sakaguchi.jp/
これらのデメリットは実用上考慮すべきほどではない、というのが世界の流れということなのでしょうか?

はい、そうです。欧米ではエンジニアウッドが当たり前です。
正確に言えば、板ですかね。内装材やツーバイフォーも含めて。その板を合わせたのが集成材。
無垢の角材は、減っていくばかりだと思います。

ところで接着剤の寿命って何年くらいでしょう? 

ガラパゴス化の一つの要素に、過剰品質があります。コンピュータの分野が好例です。CPUやソフトの技術の進歩が急激で、「高品質」「長寿命」にそれほどメリットが無いのです。
住宅も似たようなものです。高齢化に伴って、住宅のバリアフリー化が求められていますが、寿命が短かった時代に建てれた古い住宅は、介護のし易さなど考慮されていません。ゆえに、家の部材自体は健全でも、その家に住み続けることが出来なくなるという事態も発生しています。
また、社会構造の変化の急激な現代の日本にあって、1カ所に住み続けることが難しくなっています。
こういう状況にあって、柱などの部材が高品質で
長寿命ということにどれほどの意味があるのでしょうか?
200年もつ家より、たとえ30年しか寿命がないとしても、ライフスタイルの変化に柔軟に対応できる家の方が消費者には喜ばれると思っています。

生産者としては、高品質な物を消費者に提供したいというの当然の良心ではありますが、しかし、それだけでは、家の中に住む人の人生の人生への想像力が足りないように思います。

聞いたら、接着剤の寿命は「未知数」だそうです。戦前から実用化されているレゾルシノール接着剤は信頼性はあるとのこと(毒性あり)。
家を短い周期で建てかえるのが現在のニーズだとして、しかし材としての期待される寿命が短ければ短いほど、リサイクル時のことが問題になると思います。無垢材ならチップ化してその後の用途もさまざまですが、集成材は?

住宅寿命のニーズについて、私が密かに考えていたことは、まさにこのことです。
200年住宅なんて言っていますが、住まい手の本当のニーズは、もっと短いはず。少なくても世代を越えて同じ家に住むことを望んでいないと思います。初代はいいけど、2代目はやはり自分なりの思いがあるから。また家族構成や世代変化、そして情報化など社会変化もあります。

リサイクルに関しては、集成材でもチップ化してパーティクルボードにすることは可能ですが、サーマルリサイクル、つまり熱エネルギーに供されるのが現実的でしょうね。

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