無料ブログはココログ

本の紹介

« 驚異! 割り箸メンマ | トップページ | 「限界集落」と「廃村」 »

2010/05/23

イタチ林業かライオン林業か

先に、現在進められている林業再生の手法としての欧米式の「大規模・機械化」の方向性は、肉食系林業だと書いた。そして、昔ながらの林業を草食系として対比した。

だが、戦後の林業華やかしき頃を改めて振り返って思ったのは、当時もかなり乱暴な施業をしていたことに思い至る。

戦後の一時期、木材不足と価格高騰を受けて、かなり無茶な増産を行った。現在のような高性能林業機械はなく、チェンソーさえあるかないかの時代だったから、生産効率はしれているが、全国的に過伐だったのは否めない。そもそも戦争時の乱伐で山は荒れていたのに、そこへ大増産の掛け声がかかったのだ。

とくに悪名高きは、1961年の河野一郎農林大臣の「木材価格高騰緊急対策」だろう。国有林を含めて1200万立米もの大増産を命じたのだ。また外材の大規模な輸入も進めた。

おかげで、生長量をはるかに上回る伐採を行った。それに追随する林学者が出て、将来の生長量を今伐ってもよいという理論?まで発表した。

その結果、山は荒れに荒れたのだ。これだって、肉食系林業と言えるのではないか。

つまり、この時期の日本林業は、肉食系だったのではないか。いや、江戸時代だって過伐気味だった。
もしかして草食系林業なんて、これまでは存在しなかったのかもしれない。むしろ林業の衰退時期に、生産量は伸びず、機械化など改革意欲もないまま否応なく、そうした性向になっていたとも言える。

ただかつての肉食系の救いは、しっかり造林もしたことだ。まあ、これも伐採跡地を植え終わると、拡大造林路線へと突き進むのだから、あまり野放図に褒められないが、少なくても伐ったら植える、という原則は貫いた。それが現在の豊富な資源量につながる。

残念ながら、現在の森林林業再生のベクトルは、生産効率を高めることを至上とする肉食系ではあるが、伐採後の造林についての施策は、まだ見えてこない。それどころか日本全体の生長量は膨大だから、現在の2倍3倍伐っても森林は減らないという理論を振りかざす。

この2つの時代の肉食系林業を、どのように評価するか。悩む。

ところで、肉食動物にも、その獲物の捕り方には2種類あるらしい。一つは、イタチのような身体は小さいながら、とにかく動く小動物を見つけると、すべて襲うタイプ。この仲間のクズリは最強・凶暴動物とされる。ヘラジカやオオカミまで襲う。
もう一つは、ライオンに代表される大型肉食獣で、腹が減ったときだけ狩りをするタイプ。強いことは強いが、実は狩りが下手くそだったとか。

重要なのは、肉食動物は、必ず草食動物より数が少ないことだ。ライオンやトラなどの大型肉食動物は数が少ないし、獰猛なイタチ類はたいてい小型だ。だから生態系バランスが取れている。

この生態的バランスを林業にも当てはめると、肉食系林業は、大多数を占めてはならない。そのすそ野に、草食系の林業地帯が広がっている必要がある。しかも肉食系の場合も、必要以上に獲物を取らず、再造林などを行うライオン型であるべきだろう。

果たして、今の日本の林業が進もうとしている肉食系は、イタチとライオンのどちらか。まさかイタチのようなライオンを指向しているのではないよな。

また草食系林業地帯以外にも、雑食系林業地帯を想定する。草食系は、効率や量を追わない林業を「副業」で成り立たせる。雑食系は、希少価値のある「多彩な商品生産」で生き残るというのはどうだろう。

……というようなことを考えてみた。でも、林業を動物の食性に当てはめて分類するのは、無理があるかなあ。

« 驚異! 割り箸メンマ | トップページ | 「限界集落」と「廃村」 »

林業・林産業」カテゴリの記事

コメント

森林・林業再生プランは再造林の視点が抜け落ちていますね。このプランが実行されたら10年後にどうなっているのでしょうか?

私が読んだ限りでは、「生長量は年間8000万立米以上あるから、現在の2倍以上の4000万立米伐っても大丈夫、みたいな書き方です。でも、そんな単純じゃないやろって。ただでさえ林齢の構成は高齢側に偏っているのに。

はじめまして。
All Aboutの児山と申します。

先ほどメールをお送りさせていただきました。ご確認いただければ幸いです。

私の実家近くの山林は、後継者がおらず手が行き届かないで荒れております。
過度の伐採を行う肉食系ではもちろんだめですが、草食過ぎても荒れてしまうようです。

関西では「テレビ東京」系の報道はされないでしょうか?

実はテレビ東京から取材を受けて,湧水探訪の番組が放映されるのです.

その水に至る道は,本来あまり難しくないものだったはずなのですが,実際行ったら違いました.カラマツの切捨て間伐が積み重なっていまして,総勢で猛烈な藪漕ぎを強いられました(長野県です).

「こんな切捨てをしたら山仕事の人自身も入れなくなるんじゃないか?」と本気で心配してしまいました.

卓球の中継が入るので開始時間は不明なのだそうですが,一応明日(5/30)午後19:54開始予定とのことです.

関西のテレビ東京系列は、テレビ大阪のほか各県の独立局が個別番組ごとに対応しています。ちなみに奈良はは奈良テレビ。その番組は、明日放映されるかな? 日がずれることはよくある。

番組は「日曜ビッグバラエティ」という名なのですが,奈良テレビでも19:54(予定)からやるみたいですね.

http://www.tv-tokyo.co.jp/sun/backnumber/yokoku.html

ただ,卓球の中継がその前にあるので,番組順延・中止の可能性は大いにあります.今日なんて23時をすぎてもまだ卓球やってましたし.

現在(また)読み直している天藤真の「大誘拐」(週刊文春ミステリーベスト10の20世紀国内部門第一位に輝く名作)ですが,いまは地図を見ながら読み直しています.和歌山と奈良にまたがる壮大な大作戦,40000ヘクタールをもつ山林王のお婆ちゃんが国家に挑んだ渾身の巨大犯罪は,何度読んでも本当に面白いですが,なんといっても「山の匂い」を強く感じさせてくれる自然の描写がいいですね.真相を看破した刑事とお婆ちゃんがしみじみと語り合う晩秋の村の風景も,絶品です.

>番組は「日曜ビッグバラエティ」という名なのですが,奈良テレビでも19:54(予定)からやるみたいですね

その時間は、「龍馬伝」です(笑)。

「大誘拐」は、映画でしか見ていないのですが、それほど評価が高かったのですか。今では山林王は山林負うだからな……。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/36391/48438803

この記事へのトラックバック一覧です: イタチ林業かライオン林業か:

« 驚異! 割り箸メンマ | トップページ | 「限界集落」と「廃村」 »

2017年3月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

森と林業と田舎