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森と林業と動物の本

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2010/06/03

列状皆伐

先日、飲み会の相手のところに、メールで私当ての質問が送られてきた。

「里山の広葉樹を伐採して、チップにして国産パルプを増やすとともに、雑木林を更新しようとすると、市民団体などの反対を受けそうですが、どうしたらいいですか」

たしか、そんな内容だった。これはツイッターかプログか忘れたが、「木材自給率50%を達成しようと思ったら、国産パルプを増やさないといけない。しかも広葉樹材パルプを。そこで雑木林を伐ったらいい」と放言したことへの質問だと思う。

そこで思いつきで応えたのは、「列状皆伐しよう」であった。

雑木林を抜き伐りしたり間伐するのは無理。本当はコストの面からも皆伐が一番よいのだが、たしかに里山の雑木林を丸坊主にしていたら、地元のみならず都会の市民団体が猛反対しそうだ。
そこで、一見皆伐に見えないように、雑木林を虎刈りする。幅は10mか20mくらい。そのままバリカンで刈ったように筋状に伐っていけばよい。もちろん道の両側は保全する。

角度を工夫したら、ほとんど道からは皆伐地は見えずに気がつかないだろう。それで2、3年ばれずに済んだら、その頃には幼樹が繁って、背は低くても雑木林は再生の気配を見せているから文句をつけにくくなる……。という考えだった。

ま、完全な思いつきなのだが、ここで肝心なのは、私は皆伐を推進してもよいと思っていることだ。

ただ大面積皆伐はダメだよ。100ヘクタールを丸ごと禿山などにしたら、再生種子の供給も難しくなる。また土壌条件の変化や保水力にも影響を与えるだろう。

では、どれほどがよいのか。理想的なのは、1区画3~5ヘクタール。どんなに多くても10ヘクタール越えてはダメだ。それを列状かモザイク状に配置すると、里山の動植物は大きく増えるに違いない。
そこで間伐率50%ほどの皆伐をする(^o^)。

たとえば10メートル間隔で無林地と雑木林が並んでいたら、無林地には光がよく差し込むし、草木の種子は隣から供給されるので、回復しやすい。それどころか里山の特徴である生態系の多様性を増すことになる。
間伐では、まだまだ光量が少なく、完全な草原性植物は生えてこない。やはり皆伐の方が生産量は大きいのだ。

この考え方は、林業でも同じである。もっと小規模皆伐をモザイク状に行った方が、施業上も生物多様性にもよいのではないか。

生物多様性。この言葉こそ、里山の皆伐に反対する声を消してしまう魔法の呪文だ(笑)。

P4300014


写真は、生駒山の山中に忽然と現れた草原。何かの理由で伐採されたのだろうが、不思議な景色を作っていた。

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コメント

小面積のモザイク皆伐とか、4残4伐くらいの思い切った列状間伐とか、悪くないと思います。

天然広葉樹林でなくても、間伐遅れで著しく劣化した針葉樹人工林やマツクイで壊滅の危険が迫る天然アカマツ林再生の手法としてもたぶん使えます。

現場からの賛同の声は有り難いです。

私は、どうも一般的な間伐(定性も、列状も)頼りなく感じるのです。もっと大胆に伐って、森林と草原が混じるほどにしたらいいのに、と思っています。
その方が、きっと環境的にもプラスのはず。

木材生産林の場合は、あんまり伐ると蓄積量が少なくなって損です。しかし蓄積重視でいくとどうしても多様性が失われます。劣化した蓄積なら多様性のほうが良いと思います。

多様性をあまり強調すると、施業しづらくなりますが、理論武装の一つの武器として……。

なるほど、よくわかりました。列状皆伐は、等高線に平行に行うイメージですね。

草原を増やすと、今増えつつある鹿がもっと増えるのではないかという心配は少しあります。でも、ウサギとか猛禽類とかも増えるかな。生物多様性は確かに高まるでしょうね。

たしかに獣害は、悩ましい。どこでも再造林ができないほどに猛威を奮っていますね。

いっそ、伐採跡地に大々的に罠をしかけて、一網打尽にする→食肉供給基地にするつというのはどうでしょう。

 雑木林の更新、大賛成です。ただ、皆伐にせよ列状にせよ赤字になるようでは後が続きません。ここはひとまず、限られる事例かとは思いますが、現状で金になる木(おそらく大径木)を伐って収入を確保し、多少の収入が得られるモデル例をつくることが重要だと思います。「雑木林でも経済林になる」が広まれば、森林所有者の意識も変わってくるのではないでしょうか。

大径木を伐るのは賛成です。太くて高い木ほど、樹冠が広がっていて、日陰をつくっているから。

そして太い広葉樹なら、材木としても家具材とか稀少な使い道もあって高く売れるでしょう。。

問題は、施業コストと出荷先ですね。ちゃんと引き取ってくれる市場があれば、里山林の大径木専門伐採業が可能になると思うのですが。

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