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2010/06/22

木材自給率、劇的伸長

昨日、書き上げた原稿を編集部に送った。

その中で、日本の木材自給率の中身に触れる部分があった。民主党の「10年後に木材自給率を50%」というマニフェスト絡みである。

すると、深夜に早くも初校が上がってきた。

それは良いのだが、同時に仰天のデータも見つけてしまった。

林野庁のホームページのプレスリリースで、
「平成21年 木材需給表(用材部門)」の概要(平成21年1月~12月:丸太換算)について
である。

もともと、この原稿を書く際に、そろそろ今年の発表があるころだと探したのだが、まだ出ていずに昨年のままだった。

昨年(平成20年度分)は、24%である。それより上がっているのは確実だ。そこで、25%くらい? と思いつつ勝手に決められないから、「24%程度」と濁しておいた。

ところが、初校が上がると同時に見たサイトによると、

「自給率は3.8ポイント上昇して、27.8%となりました。」

な、なんと、いきなり3,8%も伸長したのである。もう少し詳しく紹介すると、

用材の総需要量は6,321万m3となり、前年に比べ1,475万5千m3(対前年増減率(以下同じ)△18.9%)減少しました。

用材の国内生産量は、1,758万7千m3となり、前年に比べて114万4千m3(△6.1%)減少しました。

用材の輸入量は、4,562万2千m3となり、前年に比べ1,361万2千m3(△23.0%)減少しました。

木材(用材)自給率は、用材の国内生産量が114万4千m3(△6.1%)と減少したものの、輸入量はそれを上回る1,361万2千m3(△23.0%)の減少となったことから、前年に比べ3.8ポイント上昇し、27.8%となり、平成元年の水準となりました。
(注)木材(用材)自給率:平成元年26.9%

ようするに、木材需要そのものが激減し、それにともなって外材輸入も激減したのだ。ただ国産材は、減り方が少なかった。そのため相対的に自給率は上がった……という構造である。国産材だって、かなり落ち込んでいるが、外材に比べればマシというわけだ。

おかげで、あわてて原稿を書き直さなくてはならなくなった(;_;)。まあ、間に合わずに、掲載される頃に恥かくよりはいいか。
それにしても、この手で木材自給率を上げることは可能かもしれない。民主党がマニフェストを守るためには、木材需給を減らせばいいんだ、なんて。

ともあれ、原稿に統計の数字を使うのも、ヒヤヒヤだよ。自給率約3割というと、なんだかそんなに悪くないように感じちゃう。単に数字を直すだけでは、記事の趣旨が曲がってしまうかもしれない。

今夜、早くも再校が出てくる。怖くて見直すのがイヤ(^^;)。

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コメント

田中様

あら、まあ!
インターネットを駆使しておられる田中さんですから、林業ニュース等を毎日チェックされていると思いました。

これからは外材ではなくて国産材の時代ですよ!
まもなく30%となり、10年以内には50%になります!
国産材が余っているのが現状です。
ヨーロッパは、輸出先を中国にシフトして来ています。

早く50%を越えて欲しいものです!!

先日来日したドイツの森林関係者が、日本の木材材績量に驚いたというニュースを目にしましたよ。
何しろ国土の67%が森林という、世界に冠たる森林大国ですから!!

こんな広告が出るのを期待してます(笑)

「森林大国、ニッポン!」田中淳夫著 ◯◯文庫
(2011) ¥750 ◯◯社

 薪炭材はここのところ横ばいなのですね。当たり前か。いやいや、当たり前ではない。住宅用エネルギー、食品加工熱源など・・・。
 製材品は丸太換算していないみたいですね。一方、集成材は丸太換算しているみたい。本当かな?最終ページに換算採用表があったけど・・。読み間違えかな。

 木材の歩留まりも気になるところだ。供給量と需要量がイコールの実績数値だ。総量が減少しているのはとても木になりますが、カスケード利用による、有効活用はどう進んでいるのだろう。そうすれば、材の総価値は上がるはずだと、何かの本に書いてあったような木がします。
 
 ちょっとは、その統計に上がってこない新規の流通形態、流通変化もあるみたいですし。
 とにかく、生産をもう少し上げていかないと。需要側にアテにされる供給を模索していかないと。迎合ばかりではだめだけど。
 そんなこと思いました。

自給率という相対的な数字が増えるだけでは、あんまり感心しないんですけどね。実際、国産材の生産量も減っていますから。
結局、山村にお金が落ちていない。いかに価格を上げるか考えないと。

統計のとり方は、結構いい加減な前提だから、実態とはズレはあると思います。でも、傾向としてはこんなものでしょう。

ちなみに「森林大国ニッポン」は、『森林からのニッポン再生』のタイトルを考える際に候補に上がっていました。

 今日は1日中、年がいもなく、他人に分からないようにぐれていたので気を取り直して、IWハーパーを・・・。美味しい。

 というわけで、もう1つ。

 木製コースターを住宅1軒分作ると150,000枚ぐらい出来るらしい。どうやって売るかは別にして、1枚500円とすると、売り上げ7千5百万円?
 うそみたい。
 今、IWハーパー、木製コースターに乗っています。高級感が漂う。さらに美味しい。
 洋酒とヒノキ、雰囲気が合う!
 国産材自給率上げるために、木製コースター1億2千枚売るぞ!住宅24000棟分だから、大手ハウスメーカー3社分?
 飲みすぎたみたい。。。。。。。すいません。

田中さんが著作で何度も何度もおっしゃる通りの当たり前のことが、当たり前にできる国にしたいものですね。

そのためには、山林関係者はもちろんのこと、川下からの働きかけがもっと大きな力になっていくような仕組みを作り上げたいものす。

縮小社会になることで統計的に自給率が上がるという皮肉な結果になるのは、嬉しいことではありませんからね。

「森林大国ニッポン」が候補だったんですか。採用されなくて良かったですね。次の本の名前が留保されたんですから(笑)

新しい「森林革命」を期待します!

先日、東大愛知演習林のK 氏(一応イニシャルにします。バレバレ?)のお話を聴きました。
同氏は、近年の日本人は森林に対してエネルギー源という認識を全く持っていない、と指摘されていました。
薪炭林という言葉は、最早死語なのでしょうか?これを復活させれば、自給率は上がると思うのですが。

先日あった林野庁の「公共建築物・・・促進法」説明会では、自給率50%は木材需要量8000万~1億㎥を前提に考えていると言っていました。委員会の検討資料がそうなっています。これって今の水準と一緒なわけで・・・だから自給率向上の本質はやはり「外材⇒国産材」の問題で、「コンクリート、石油⇒木材」という同法(バイオマス燃料の利用も含め)は国産材の需要喚起による供給力の向上という形での寄与が期待されていると考えるべきなのかなと思った次第です。

バイオマスのエネルギー利用は、もちろん好ましいのだけど、前提として木材産業が盛んになることですね。その派生商品として木質燃料があるのだから。長年育てた木を、いきなり燃やしちゃうのはモッタイナイ。

自給率の上昇を、木材需要の拡大ではなく、外材のシェアを奪うことで達成しようというのは、言うは易し実行するは難し…でしょうね。
ただ木材需要8000万立方メートルでも、今よりかなり増やさないといけないけれど。

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