一畳敷展
大阪のINAXギャラリーで開かれた、「一畳敷展」に行ってきた。
ここで開かれたセミナーが
「裏幕末伝 探検家、松浦武四郎が残したもの」である。
松浦武四郎、ご存じだろうか。私なんぞは20年以上前から興味を持っているのだが、ようするに幕末の探検家だ。とくに蝦夷地の探検で知られ、北海道の名付け親でもある。
一方で、彼は吉田松陰や木戸孝允(桂小五郎)や岩倉具視、大久保利通……という幕末から明治の志士・元勲までと交わっていた。そして幕末の動きに結構大きな役割を果たしているのである。
この人物の面白さは、なかなかのものなのだが、このブログで注目したいのは、晩年取り組んだ一畳敷である。簡単に言えば、一畳しかない書斎。
写真は、会場に再現された一畳敷。と言っても、実は畳み以外の周辺は写真ボードである。
私も中に入って座り込んでしまったが、なかなか快感。この狭さがいいなあ。
武四郎は身長148㎝しかなかったらしいから、現代人よりもう少し広く感じたかもしれない。
だが、この一畳敷のすごさは、単なる小さな書斎ということではない。材料が、全国の有名建築物の端材なのである。
木片勧進といって、各寺社に端材を分けてくれと頼み込んで、全部タダで手に入れた木材を使って建てているのだ。その数、91。
たとえば伊勢神宮の古材に始まり、太宰府天満宮や熊野本宮大社、平等院、法隆寺、そして後醍醐天皇陵の鳥居まである。法隆寺の木片なんて、もしかしたら飛鳥時代の木かもしれない。それらを組み合わせて作った書斎なんて、好事家の極みだ。
この書斎を研究するアメリカ人もいて、日本文化を誇っている。
木片から作る書斎であり、木にまつわる故事を活かした建造物として、一度は見てみたいと思っている。
ちなみに、この一畳敷は、現在国際基督教大学のキャンパス内にある。ただし、非公開ではなかったかな。
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おお。
多種多様なパワースポットの木片を使用!
三畳の部屋は体験したことありますが、一畳ですか。
ちょっと入り込んでみたいものです。
落ち着きそうですね。
zzzz・・・。
投稿: 熊(♀) | 2010/07/19 00:18
カプセルホテルみたいで落ち着く……。
こんな書斎を自宅内に作りたいね。折り畳み式のキットにして販売できないか。
パワースポット木片は無理だけど。
投稿: 田中淳夫 | 2010/07/19 01:26
一畳の書斎なんて日本人独特の美意識。
茶室などでは昔から名刹・古刹の
改修時の古材などを再利用していたようです。
でも、そんな材をもらえるのは
大商人、大名、茶道家元など
今でいう著名文化人くらい。
古材をたくさん入手するのは難しいので、
パワースポットの木を伐採して作ってはどうでしょう。
いっそ、パワースポット自体を作り上げてしまうのも。
投稿: スポット | 2010/07/19 09:39
狭い世界に広い大宇宙を描く、日本人特有の美意識でしょうか。
松浦武四郎は、この一畳敷に使用した木材を全部タダで手に入れたようです。「木片勧進」とその記録を残しています。
まあ、人的ネットワークの賜物でしょうね。
今のご時世は、たしかにパワースポットの木を伐採して使うのが一番。いや、伐ってからパワースポットだったと気づくこともありということで……。
投稿: 田中淳夫 | 2010/07/19 14:28