皆伐の条件
岐阜ネタ続きで見つけた岐阜の林業。
岐阜県では、「災害に強い森づくり」の指針として、皆伐の指針を出していた。
https://www.city.gifu.lg.jp/c/Files/1/07020059/attach/sinrin-pr.pdf
そこに面積が一ヘクタールを超える皆伐の条件を並べている。
・小面積・分散的な皆伐することが原則
・保残木を設置する
・保護樹帯を残置する
・更新が困難な場所では、裸地化を回避する
・伐採跡地は、原則、植栽する
ある意味、当たり前であるが、生ぬるくもある(^^;)。
だって、「原則、植栽」ですか。まあ、法的に強制できないのはわかるし、所有者が「天然更新だ」と言い張れば手を出せないが、やはり伐採したら植える、ことを強く訴えてほしい。
ともあれ、もっと皆伐指針を前向きに出すべき時期に来ているのではないか、と思う。
世の中、間伐ならOKだけど、主伐はいけないような風潮がある。そして皆伐こそ山を荒らす元のようなイメージが強い。にもかかわらず、現場では無原則な皆伐が平気で行われている。20ヘクタールくらいの単位は当たり前。それをつなぐと100ヘクタールを越すケースが多発しているのだ。
どちらでもない、良い皆伐の指針が必要だ。
私は、基本的に皆伐こそが林業の基本ではないかと思っている。
これは山仕事の作業面から、コスト面からでもあるが、同時に生物多様性(この言葉出すと、イマドキは注目されやすい 笑)からも重要だと思うのだ。
間伐の場合、それが切り捨て間伐では逆に山を荒らしているかのようだし、列状間伐にしても、イマイチ光が林床に射し込んでいない。3残3伐の場合は、真ん中の一列は光の恩恵を浴びないだろう。
生物多様性の概念の中には、生態系の多様性も入っているのだから、森林生態系とは別の草原生態系も確保するべきだ。その点、皆伐地は草原的要素がある。もし1~3ヘクタール程度の皆伐地をモザイク状に設けたら、生物多様性は高まるはずだ。
まず、皆伐の面積制限をする。個人的には、10ヘクタールを超えるものがよいとは思えない。できれば3~5ヘクタールにとどめる。これは地形や地質条件による。
保護樹帯とか保残木ではなく、一つの皆伐地の隣接地は10年くらいは伐採不可にすべきだ。年数ではなく、次の木々の生長度を基準にしてもよいかもしれない。
そして裸地化した期間の間に災害を起こさないためにも、植栽は絶対条件。伐採直後は根系がしっかりしているから、それが残っている間に次の世代を育てることが重要だ。
そして伐採・搬出に関わる作業道の入れ方や重機の使い方にも条件を付けたい。
もちろん100ヘクタールの大面積皆伐は問題外。こんな山にするくらいなら中国人に売ってしまえ(笑)。
行政は「外資が山林買収」なんてくだらないネタに労力使う暇あったら、皆伐指針づくりに取り組んでほしい。
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よくよく考えて行動(仕事)するようにします。
投稿: 鈴木浩之 | 2010/07/06 12:29
静岡にも「中国人が山林買いに来ていないか調査せよ」というお達しがお上から下りてきていませんか(^^;)。
そんな仕事より、もっと実のあることに取り組みましょう。
でも、外国人に土地を斡旋していますよ、国際交流ですから、なんて返事したら面白いだろうな。
投稿: 田中淳夫 | 2010/07/06 15:11
① 間伐率80%(!)のところがある。
へええ・・・。
② 行ったら、残りの20%もなかった。
①は幻聴で②は幻覚だったかもしれん。
投稿: 熊(♀) | 2010/07/06 17:57
ただ今マンションやリゾート地などで不動産業界は活況を帯びています!
某財団の度重なる情報発信が、景気を動かした感は否めません。
業界はこの中国ブームを作ってくれた某財団に感謝する必要があります!
しかし水源林を買いたいという話が、弊社にはただの一件も来ません。何故ですか?
投稿: kao | 2010/07/06 20:23
熊(♀)さん。それは幻聴です。聞こえなかったことにしましょう。身のためです……。
投稿: 田中淳夫 | 2010/07/06 21:21
おお、そうですか。某財団は不動産業界活性化のために情報発信していたんですね!
もし大面積皆伐の現場を見かけたら、「中国人が伐ったんだ」と言い逃れするといい……。
投稿: 田中淳夫 | 2010/07/06 21:23
田中さんのつけた条件はほぼ賛成です。植栽は義務ではなくて、何年か後に調査して成林していればOKといった風ではいかがでしょうか。うちの近くを見れば、ほっといても森になるものですから。
重機の制限も必要なのですが、うまい条件を思いつきません。機械道の延長をha当たり○○mまでにする、といった感じでしょうか。
うちの近くの大面積皆伐は残念ながら日本人によるものです。
投稿: 沢畑 | 2010/07/06 21:30
人が作った「生物多様性」という指標に違和感を感じています。
人工林ではどんな施業をしても人工生態系です。
生物多様性のために森林内に草原生態系を…
という論法で行くと、
砂漠も極地も高山生態系も作った方が良い!
畑や湿地もなるべく詰め込んで…!
という話になってしまうのではないでしょうか。
要は、その地域の潜在自然植生が失われない事が
究極目的、と考えます。
そのためには、ある面積割合で天然林ゾーンを配置して、
草原生態系的なものもその中に出現すれば充分と思います。
投稿: | 2010/07/06 22:08
重機は制限するんではなくて、ていねいに使うかですね。いろいろ条件は考えられる。国を待たずに民間で試案を作って提言したらどうでしょうか。
なお大面積皆伐地は、全部中国人が伐ったんです。表に日本人が出ているのも操られたのに違いない(^^;)。>危険思想か?
投稿: 田中淳夫 | 2010/07/06 22:22
何も「生物多様性」のために皆伐を勧めているのではありません。皆伐には、こういう効用もあると指摘しているので、砂漠の生態系を作る必要はまったくないのです。
それに日本は、ほぼ全域人工生態系ですからね。いや、地球上は、というべきか。そもそも生態系に人工も天然もないか。
潜在植生が究極目的と言われると、某宮脇センセイを思い出しますが、私の究極目的は地域が豊かになることかなあ。
投稿: 田中淳夫 | 2010/07/06 23:03
私は森林の施業には直接たずさわっておりませんが、国産材家庭用品を販売しています。最近とくに顧客から「これは間伐材?」と聞かれます。間伐材だけが善では、放置人工林対策はコスト的にも追いつかないと思います。「これは国産材ですか?」という社会認識になるように、間伐以外にも、皆伐のルールと正当性が分かりやすくなると良いと思います。
投稿: 木曽のS | 2010/07/06 23:59
猫も杓子も・・・。エコエコ・・・。
本当に、3.9%の二酸化炭素の削減で・・・温暖化が抑制されると思ってるのか?。温暖化もオゾン層の穴も・・・もう手遅れです。ただただ・・・国家・企業戦略の一環に過ぎません。私は、中国・インドを含めた先進国の我々が、50年前のライフスタイルができるかどうかにかかっていると思いますが。
投稿: ganesha | 2010/07/07 04:56
田中様
いや、実は笑い事ではなくて、一連の報道をきっかけに不動産ブローカー達が動き始めたのは事実なんですよね。
「ネタ」で飯を食う彼らにとっては、その噂が本当かどうかということには興味はありませんからね。嘘も100回言えば真実になる。その点ではマスコミと本質的に変わらない(田中さんすいません)。
無いとは思いますが、本当に山林が流動化したら某財団の功績は大きいですよ。中山間地域に資金の流れが蘇るかもしれません。
タイトルと関係ない話ですいません。
投稿: kao | 2010/07/07 08:50
間伐材という言葉には、免罪符が付いているんでしょうか。いっそ「かいばつ材」と平仮名書きにして、間伐材と勘違いさせるのはどうでしょうか(笑)。
投稿: 田中淳夫 | 2010/07/07 09:21
山林不動産が動き出したのなら、「笑い事」ですよ。「笑いが止まらない」かな。業者にとっては。
でも、買い手は国内のどんな人たちなのだろうか…。お金を持っていて、国家主義に同調しやすくて、でも林業には興味のない人?
最後は持て余して、外資に転売したりして。
投稿: 田中淳夫 | 2010/07/07 09:25
林業に関わりのない人の山林投資は、ご承知のとおり昔から継続的に行なわれていますけどね。
最近ブローカー達が言うのは、いきなり外資に売りませんかって話ですよ。でも本当にお客さんを連れてきた例は知る限りありません(笑
投稿: kao | 2010/07/07 10:12
あっそうか。「外資に買われたら大変ですよ」ではなく、「外資に売りませんか」なのか!
不動産業界の奥深さを知った(笑)。
某財団は、外資に買われたら大変だと主張していますが、それを「外資は、山林を買いたがっている」と理解して、高値をふっかけるとしたら、敵もさる者、財団の負け。
愛国心のない奴らだ…と私が書くと怒られるか。
投稿: 田中淳夫 | 2010/07/07 10:24
田中さんより
>(重機の制限について)国を待たずに民間で試案を作って提言したらどうでしょうか。
そうしようと思っているのですが、試案を作れないのです。それで何か良い知恵はないかなとおすがりした次第です。
熊(♀)さんより
>① 間伐率80%(!)のところがある。
家の近くに90%のところがあります。ほそいヒノキがぽつぽつと立っていますが、南向き斜面ということもあり、元気がありません。やっぱり無理だった模様。これは幻覚ではないので、おいでの際はご案内します。それまで10%のヒノキが立っていればいいですが。
投稿: 沢畑 | 2010/07/07 23:11
80%や90%になると、もはや、「か〇ばつ材」と2文字目が表記できなくなりそう。
実は九州にはまだ渡ったことがありません。
きっと初九州は、久木野でしょうから、その際には、沢畑様に案内をお願いします。
幻覚ちっくな風景を期待しております。
投稿: 熊(♀) | 2010/07/07 23:44
重機に関する指針なら、実際に重機を扱った施業をする人でないと作るのは難しいですね。
でも、鹿児島大では、そうした林業技術者を育てる講座を開いていますから、参考になるはずです。
いっそ間伐率99%の奇跡を演出して、高値で売るとか……。
投稿: 田中淳夫 | 2010/07/08 01:03