加子母森林組合のベクトル
話が高知に飛んだり岐阜にもどったり、まあ振幅が激しいが、加子母ツアーの最後に思ったことを。
加子母森林組合の作業班は、4、5人らしい。ただ職員と区別せず、人事異動もあるということだった。現場が好きなのにデスクワークになることもあるという。しかし、全体的に見るとそれはよいことだろう。作業班と職員を厳然と区別し、そこに給与体系の差まで持ち込んでいる森林組合こそが、時代遅れなのだ。
そして作業道をよく入れている。なんでも管轄地域は、ヘクタール当たり40数mの道が入っているという。全国平均の倍以上だろう。なかには70mを越える区域もあるというから、これが強みと言える。
ただ作業は、どちらかというと昔ながらで、高性能林業機械を持ち込むわけでなく、生産効率は高くなさそうだ。
そして、すでに紹介してきたとおり、木材生産を量で競うのではなく、単価を上げる方向を狙っている。そのため製材・プレカット工場も持って自ら刻んで家づくりまで乗り出しているのだ。
聞いてみると、森林所有者と組合、それに製材関係者との連携がうまく行っている。小規模山主が、ちゃんと組合を信用して預けているようだし、買いたたいたり高く売りつけたり、という全国によくある光景(^^;)ではない。伐採跡地の植林もきっちり行っているようだ。
さらに、もくもくセンターに並ぶ木材商品を見て、感心した。実にさまざまなものをつくって売り出していた。
割り箸まで売っている。さらにマイ箸もあり、マイ箸教室も開いている。
地元に副業でつくる人がいるそうだ。割り箸をつくるだけでなく、ツキ板でオシャレな巻物にするなど、デザイン的にも優秀だ。
同じ岐阜県の郡上の割り箸も、案外地元でつくれる人がいるかもしれないので発掘してみてどうだろう。
ほかにも彫り物や工作物、カトラリー(スプーンやフォークなど)まで、商品幅が広い。木曽檜の板まで売っている。
また削り屑や端材も、「キャンプファイヤーの焚きつけ」として販売していた。
これらは、そんなに大量に売れるものではないが、地元人に地元の材を使ってつくらせたものをコツコツ売る姿勢こそ重要ではないかと思う。
何より、木は無駄なく使えるというメッセージになるのではないか。
こうした組合のベクトルは、現在の林政が後押ししている大規模化・機械化の流れとは真逆だろう。しっかり組織の改革を進めながら、決してやみくもに時流に乗ろうとしていないことに期待が持てる。
もちろん、この方向性が成功するかどうかはまだ結論を出せないのだが、日本の林業現場で欠けている部分のように見えた。
だって、昔のまま変わろうとしないか、効率化を無理やり進めているか、周りからせっつかれて改革しかけたものの、いやいやだからうまくいかずに途中で投げ出しているか……そんなところばかりが目につくんだもの(-_-)。
加子母森林組合がそうした路線と一線を画して第3の道を選ぼうとしているように見えた。
その意気やよし。真逆のベクトルは、実は私が提起している商品の多角化と高価格商品の開発路線でもある。
ただ、この路線を進む場合は、ぜひ外部の目を取り入れてほしい。自分たち内輪だけで抱え込むと、全体像が見えなくなるから。
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>商品の多角化と高価格商品の開発
他の業界では当たり前のことなのに、
木材業界では、なかなかできない。
取り組むのに必要な資金・資本は充分持っているのに、
わざと目をそらしているようにも思えます。
小さな製材所などが連携を取って、
小回りを利かせればよいのに。
確か、大阪発祥の「アトム電気」という「町の電気屋」さんの
連合艦隊のようなフランチャイズチェーンが家電大手量販店に
負けないビジネスを展開しているとか。
森林組合などを核とした地域の製材所、工務店、木工所、
建具屋さんなどがそんな連携を取って行けば、
その地域の経済だけでなく、
風景だって守って行けると思います。
投稿: スポット | 2010/07/05 08:32
木材業界は、お互い仲が悪いみたい(^^;)。
お互い相手を出し抜くことを商売にしてきましたからね。いや、印象ですが。
また意外と資本や技術もあるんですね。問題は経営判断でしょうか。
投稿: 田中淳夫 | 2010/07/05 09:42