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2010/08/06

ランビルの研究

ボルネオ・ランビルの熱帯雨林の研究で注目されたのは、「一斉開花」の謎だった。

東南アジアでは、数年に一度、種の違う植物も含めて多くの樹木が一斉に開花する。季節のない熱帯で、それも数年に一度の頻度でいくつもの科にまたがる樹木がなぜ一斉に開花するのか。
その謎を追うことが、熱帯雨林の生態系を解明するのに大きな手がかりになるとともに、生物多様性が誕生した秘密に迫ることができる……とも言われた。

この謎は、研究者の心をいたく捉えたようだ。ランビルに樹上回廊やツリータワーが作られたのも、花の咲く樹冠に近づく手段だと言ってもよい。実際に1996年に一斉開花を始めた時は、みんなこぞってランビルに駆けつけ、昼夜を違わず調査したという。

それは、「研究者の熱狂」と言ってもよいものだった。オタク的でもあった(笑)。

実は、私もその熱に当てられて夢中になった一人だ。研究者ではないけれど、研究する人々を追いかけて取材したのである。かなり記事も書いたなあ。

そして、一斉開花の理由は、エルニーニョ現象と関係あるのではないか、とか、いやモンスーンかも、乾燥が重要だ、花粉を運ぶ昆虫たちが鍵を握る……とか、いろいろ推測された。

たしかに興味深い。今でも、その謎は完全に解けていないが、注目したくなる。

でも、改めて距離と時をおいて眺めてみると、この研究テーマは、かなりマニアックだ。世間一般の人からすると、ピンと来ないだろう。その研究が何の役に立つの? と問いかけるかもしれない。

実は、一斉開花は、小規模ながら1998年や2001年にもあったようだ。その後も、起きているはずだが、私は耳にしていない。

なんだか研究者の熱が冷めたのだろうか? そんなことをいうと怒られるかもしれないが、研究テーマにも流行があるから……。とくに中心人物だった井上民二教授が亡くなったことが大きいのかもしれない。

では、今は何が研究されているのだろうか。

実は、ランビルのタミジハウス(井上教授が亡くなった後、遺族が寄付した現地の研究拠点)に、研究者はいなかった。朝早く出て、夕方まで帰らないといわれて、お会いすることができなかったのである。

どうやら、ランビル国立公園外の農村地域に調査へ出かけているらしい。

実際、現在サラワクで行われている研究のテーマを調べると、焼き畑とかオイルパーム農園とか森林開発とか、地元の住民たちの土地利用が与える環境変化に関するものが多い。
熱帯里山」という概念を提唱して、人の利用と生物多様性を考える人もいる。

純粋学問ともいうべき「一斉開花の謎」を追うことから、人間が熱帯地域の森林に及ぼす影響に軸足を移しているように感じる。

実際、ツリータワーに登ると見えた景色が、コレである……。

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国立公園に面したところで、大規模に山を切り崩す工事が行われていた……。農園開発ではないかなあ~と思う。

ちなみに、こちらがムルの奥地。

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よく見てほしい。林道に加えて作業道が、それこそ網の目に入れられている。すでに伐採済の森林だろう。そして、その奥に広がる裸地っぽいのは、オイルパーム、つまり油ヤシの農園をつくるために切り開かれた農地である。

これでは、プナン族も狩りで飯は食えない。

なんだか、日本の奥山にも同じような光景が広がっているような気がした。

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森林学・モノローグ」カテゴリの記事

コメント

田中さん、お久しぶりです!

ここ数日のボルネオレポート、興味深く拝見しております。
専門家の話や映像などで見聞するものの、私にとって熱帯林は
未知の領域ですので現地からの報告はとても新鮮です。

ムルの油ヤシプランテーションについて最後に言及されましたが、
現地での状況は実際どんな様子なのでしょうか?
最近では米国の某環境団体が非常に用意周到な活動を世界的
に展開していますが…。

やはり一人の消費者としては、熱帯林を取り巻く昨今の動向が
気になります。

油ヤシに関しては、明日のネタにしているのよ(^^;)。

かつてあれほど騒がれた熱帯雨林問題。今や日本では影が薄くなりましたが、決して納まっていません。今後も注視すべきでしょう。

一斉開花が話題になったのはそんなに前のことでしたっけねぇ。NHKのTVでも見た記憶が・・・
他にも井上民二さんが亡くなる前に出た番組もありましたね。(記憶曖昧)

熱帯雨林について田中さんがよく書いていたので、私にとっても身近な内容だったのですが、当時の流行でもあったとは。

思えば、私が森林に興味を持ちだした頃です。

そう言えば、パソコン通信時代も、随分熱帯雨林の一斉開花について書きましたね(笑)。その頃の記憶が残っているのなら、望外の幸せです。

懐かしいというか、純然たる生態学の話題を書けた頃は楽しかった。
ボルネオの森も、日本の森も、改めて今危機にあると思う今日この頃。

奥地にこんな風景が・・・。驚きです。

日本でもあるかもしれませんね。
奥地で密かに伐採や開発。

密かにだから、記録上は毎年1歳ずつ年を取り、
木が生えていないのに110年生の森林とかって・・・あるかも。

奥地と言っても、道沿いですけどね(笑)。

ランビルの森の中を彷徨していても、時に自動車の騒音が響くんですよ。ジャングルの真ん中を道路が横断しているから。

でも、木が生えていないのに記録上は113歳の原生林……なんか、ありそう。日本にもいる、いやあるに違いない。

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