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2010/08/08

ボルネオとぽんぽこ

なんちゅうタイトル付けてしまったんだ……。

これまで紹介してきたとおり、ボルネオ(マレーシア)は、21世紀に入って激変している。

熱帯雨林の伐採は続き、代わりに油ヤシの農園と、パルプチップ用のアカシアなどの早生樹種の人工林が増えている。そして少数民族の生活も変わらざるを得なくなった。

ムルで案内についたガイドは、なかなか博識で、ジャングルの中を歩きながら多くの動植物について説明してくれた。植物に昆虫に動物に、そして森全体のことや環境にも触れた。ときに「この植物は、私たちのトライブ(族)は吹き矢の毒に使う……」といった言葉も出た。

一方で、冗談も多く、話し方もうまい。名前をリバンといったが、「タリバンじゃないよ」と付け加えた(~_~;)。

何族の出身なの? と尋ねると、ケニャ族だという。サラワクではメジャーな少数民族の一つである。全体ではイバン族が多いが、東地域ではカヤン族とケニャ族が優勢である。プナン族は非常にマイナーな少数民族になる。

そしてムル出身かと聞けば、違った。バラム川上流域の村だそうだ。

バラム川と聞いて、血が沸き立つ(^^;)人はいるだろうか。かつて野放図な木材伐採が進んで、少数民族とのトラブルが相次いだところだ。すでに触れたが、プナン族などが林道にバリケードを築いて、伐採会社を入れないようにしたこともある。いや、今も相次いでいる、というべきであろう。今年4月にも、林道封鎖は行われた。また逮捕者を出したのではないか。

1990年代は国際的なニュースになったが、今ではローカルニュース扱いだ。すでに資源量は減っているうえに、伐採した木材の行き先が日本は減りインドや中国が多くなったからだろうか。

彼の立場もあるから、あまり突っ込んだ話はしていないが、やはり「多くのトラブル」を体験したそうだ。そして、生活のためにバラム川の村から離れて、ムルのガイドになったのだ。

伐採を止めるために、多くの土地をナショナルパークに指定した。今ではナショナルパーク(国立公園だけでなく、各種保護区なども含むようだ)の森林だけが残された」

そして、そのナショナルパークに観光客を誘致し、彼らを案内するガイドとして生計を立てる人々が生まれたわけである。

ある意味、ぎりぎりの棲み分けを図り、政治的に言えば、「落としどころ」なのかもしれない。木材や農園などに土地を奪われた人々のために、新たな職業を作り出したのだ。

が、これでメデタシ、と言えるのだろうか。

たしかにリバンのようにガイドとして、うまく生きていく人々もいる。だが、彼は、ある意味エリートであり、優秀な一握りの村人ではないだろうか。動植物の知識はあっても、英語がうまくない、語り方もうまくない人は、ガイドとしての能力に欠ける。接客能力も求められるからだ。

実は、私が前回訪れた際についたガイドがそうだった。一緒に森を歩いても、何も話さない、説明しない。単なる道案内だな、と思っていた。もっとも1本の木道の上を歩くのだから、迷いようがないのだが。

はたして、ガイドになれた少数の人々以外は、どうしているか。もはや森の産物を採集することもままならなくなったはずだ。別の職業につかねばならない。人数的には、ガイド以外の人の方が圧倒的に多いはずだ。町へ出稼ぎか。伐採会社や油ヤシ農園に雇用されるのかもしれない。

私が連想したのは、「平成狸合戦ぽんぽこ」である。

このジブリアニメの結論を思い出してほしい。多摩ニュータウンの建設に追われたタヌキたちは、化け学で人間たちに戦いを挑むが、ついに破れてしまう。そこで、どんな選択肢が残ったか。

キツネが提示したのは、「化け学を駆使して、人間に化け、人間社会で生きる」という道である。事実、ラストシーンで主人公たちは、人間として満員電車に乗って会社勤めをしていた。

だが、化けられないタヌキはどうしたか。

彼らも人間社会に紛れ込んでいた。下水溝などをうまく使って生活の場を確保し、残飯をあさって食べ物を得る。そして街の中に作られた緑地「ゴルフ場」に入って、踊るのである。

人は、(タヌキも)、なかなか適応力があって、環境が変化してもなんとか生きていくものである。ただし、どちらの選択肢も、彼ら自身が真に望んで選んだものとは言えないだろう。

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