樹上回廊
ボルネオのムル国立公園は、巨大洞窟で有名。観光客も、ほとんど、というかほぼ全員は行くだろう。
その道筋は、すべて木道が敷かれている。
これは、観光客がジャングルの中を歩くに際して、非常に有効だ。結構な距離はあるが、おかげでサンダルでもすいすい歩ける。体力・技術がなくても訪問できるのだ。地元の人なんぞは、自転車で通っている(笑)。
が、同時にオーバーユースでジャングルが傷つくことを防ぐ役割も大きいに違いない。そもそも木道からそれることができなくなるので、妙なところに分け入る人が少なくなり、危険も減る。
こうしたシステムは、日本の自然観光地でも非常に参考になると思うが、今回は別の紹介。
それは、木道よりももっと面白い樹上回廊だ。(英語直訳では、樹冠歩道)
ムルのジャングルは、ほぼ原生林に近いと思われるが、いわゆる超巨木も林立する。その高みの樹冠部分を歩けるよう吊り橋のような歩道が設けられているのだ。
その長さ、480メートル。ぐるりと木から木へ高さ30メートルになる樹上を巡れる素敵な回廊だ。
実は、樹上回廊というシステムは、もともと樹冠研究のために作られた。1990年代に世界の森林の樹冠研究が、とくに熱帯雨林で始まった時に、ツリークライミング゙ではなく誰でも簡便に樹冠層にたどり着ける手段として、ツリータワーと樹冠部の歩道づくりが進んだ。中米や南米から始まったはずだ。
この樹冠にこそ、生物多様性の秘密が隠されているとされていた。
実は、私もこの世界に圧倒され、毎年のようにボルネオを訪ねて、研究現場を取材した。
その際にとくに訪れたのは、ムルではなく、ランビル国立公園である。ここに日本の研究者(当時は京都大学がメイン)が研究フィールドを築こうとしていた。
そしてツリータワーと樹上回廊が作られた。その長さが、たしか300メートルはあるというので、世界一長い? と自慢していたものだ。
これが、ランビルの樹上回廊。見た通り、網が張っておらず、ハーネスにカラビナを通して歩くもので、決して安全ではないが、素人が来る観光用ではなく研究用なので、これでよかったのだ。
しかし、ムルに、ランビル以上の回廊が作られるとは。(ムルでも研究に使われているらしい。)
平地ジャングル(ランビル)と、山岳ジャングル(ムル)の違いがあるから、どちらも意味があるのだが。
ただ、ランビルのツリータワーは現在修理中で、樹上回廊なども、それほど頻繁に使われている様子はなかった。
かつてランビルを訪問したら、いっぱいいた研究者の姿も見えない。
彼らは、ランビルの施設に宿泊しているが、研究フィールドは、公園内ではなく、別に持っているのだという。
今年は、名古屋でCOP10こと、生物多様性条約締結国会議が開催されるが、その割には研究現場では生物多様性より別のテーマに移っているのであった。
(この話題、続く。)
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マレー半島の国立公園で、樹上回廊を経験したことがあります。私はゆっくりと観察したかったのですが、後ろから人が来るもので、ゆっくりできなかったのが残念です。観光地だとそういうことになりますね。。。
投稿: 沢畑 | 2010/08/05 23:29
吊り橋部分は、二人まで、と言われました。幹部分に作られたテラスは、6人まで。
でも、ムルでそんなに行列をつくることはないと思うけどなあ。私の前に、白人の家族? がいた。
投稿: 田中淳夫 | 2010/08/06 09:58
田中さん、こんにちわ
ご存じの通り、研究予算を獲得するのに、同じキーワードを2度使えないとか、そもそも研究期間を短く短くされていくとか、いろいろ事情はあります。ところで、生物多様性というキーワードが出てきたので、ちょっと宣伝です
http://www.ffpri-skk.affrc.go.jp/event/H.22happyo/H.22_happyo_tirasi.pdf
高知は遠いですが,もし可能ならどうぞ(ぜひぜひ)
投稿: とり | 2010/08/06 12:16
予算獲得ですか。COP10は、もともと遺伝子資源の分配がテーマですから、ボルネオの少数民族の森林利用も、使えそうですね。
高知でもシンポジウムですか。「熱帯里山」の研究発表はないだろうか……。呼んでくれたら、喜んでいけるんだけど(^^;)。
投稿: 田中淳夫 | 2010/08/06 15:07