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森と林業と動物の本

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2010/08/09

菅総理への一般視線

先の土曜日は、地元の祭だった。

私も同窓会気分で出かけたら、地元選出の国会議員に会う。

手を伸ばされて思わず握手し、立ち話。

そこで話したのは、菅総理の例の林業を成長政略に、という記者会見のこと。

首相が林業について触れたことを歓迎しつつも、あのまま作業道づくりの大号令をされたら危険……とかいう話になって、どこの作業道の作り方がどうの、大橋式と四万十式がどうの、あの内輪もめは止めさせようよとかナントカ。彼も政府の一員なんで、いや、道づくりの補助金だけにせず、道づくりの研修や規格づくりをしてから……と、なかなか熱心に語ってくれた。

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祭の喧騒の中で、ウチワをパタパタさせながら立ち話で林業政策を暑く語る我々の姿は、いかなるものであったか(笑)。




そして翌日、つまり昨日。某週刊誌の記者が来生駒したので、例の棚田の中の応接間・スリランカ料理店で話し込んだのだが、そこでも菅総理の記者会見について触れた。

彼は経済関係が専門なのだが、記者会見でのほかの記者の反応は冷たいものだったそうだ。「林業」を口にした途端、経済記者はまったく無視無反応になったらしい。林業再生が日本の成長に結びつくわけない、林業の経済波及効果なんてどれだけあるんだ、という見立てなのである。

たしかにGDPのコンマ以下にすぎない林業生産高が多少増えようが、巨大な日本経済に影響を与えられるわけない、というのが経済の専門家の計算なのだろう。

その見立てが正しいかどうか、経済だけでない日本社会への波及効果はどうか、など反論はこの際置いておく。

私も、森林・林業にどっぷりつかってしまっている。私の周りの人、このブログの読者も、皆さん林業に興味を持っている人が多いのだろう。だから菅総理の発言には、批判も交えつつ期待しているところもあるわけだ。

しかし、これって狭い林業のコミュニティ、いやゲットー(~_~;)の中、井の中の蛙の話題なのかもしれない。

世間の大半、政治や経済を論じている人々の大半は、林業なんぞは眼中にない。こちらが熱心になればなるほど、白けているのかもしれない。

この一般目線を忘れてはいけない。一般人を見る目がないとか、森林や林業の大切さを知らないなんてダメな奴……と線引きをした途端、こちらの負けだ。

そう、世間は森林にも林業にもたいして興味は持っていない。その中で、何を主張すべきか、どのようにしたら伝わるか、を考えなければならない。

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林業・林産業」カテゴリの記事

コメント

田中様

おっしゃるとおりだと思います。
一般市民や学生の大部分は、わが国の林業についてほとんど関心がないと言っていいでしょう。
その理由の一つは、学校でキチンと日本の森林について教えてない事にあります。また、新聞社も生物多様性とかに関連した取り上げかたしかしてませんね。

また、経済至上主義が蔓延して安ければいいんだ、という考えが当たり前になっているからでしょう。
国家戦略として、林業を位置づけるような計画を立案していく必要があります。
中国人が水源地を購入してもいいんですか?という題名の本は、その意味で刺激的ですね。

まともな議論が理解されない土壌が広がっている事に対して、もっともっと見近かな話題でもいいから話題をつくり関心を持たせる必要があります。

田中さん一人では出来ない事を、多数のサポーターでイベントを企画するのもいいですね。

U洋行が仕掛けている全国スギダラケ倶楽部もまだまだ参加者が限られていますが、地道に各地で国産材の良さを広めて行く一方で、他にも何か出来ることありませんかね?

ほんとだ!
どっぷりつかるのは、危険ですね。
いい感じに出たり入ったりしないと・・・
ふやけてしまうし、のぼせてしまう。
あ。鼻血・・・。

興味のない人に、大切だから、重要だから、という論法で押しつけても、絶対に受け入れないでしょう。環境問題で、よく起きています。

彼らにとって関心のある形に(多くは利害関係)いかにつなげるか、というマーケティングとテクニックが要求されます。
その点からすると、ビジネスのマネージメントと同じですね。こんなこと思うのは、「もしドラ」効果か?

熱い心と、覚めた目線。
これが大切です。

熱い温泉に浸かるときは、肩をお湯から出すように。するとのぼせません(^o^)。でも、毛皮を脱いで入ってね。

 そういえば、近藤真彦さんは25年ぐらい前に「さめたしぐさで熱く見ろ!」「ギンギラギンにさりげなく」と唄っていましたね。
 私は今でも、たまにカラオケで歌いますが、これからはメッセージソングになりそうですね。

林業の側だって、林業以外のことには無関心なのですから、一般市民が林業に無関心でも何も問題ないでしょう。
もし、林業に関心を持って欲しかったら、林業の側も一般市民にたいして関心を持たないとダメと思います。


近藤真彦の「ギンギラギンにさりげなく」ですか!

ここにつながるとは思わなかった(笑)。

どちらも無関心だから「問題ない」ことはありません。
どちらもつながっていることに気づくことが必要なのです。林業は山村だけで成立しているわけではなく、都会は山村を含む全世界とつながることで成立できている消費地域です。

知らない、わからない人に伝えることが大事。
簡単に伝わるように思っていると思わぬ落とし穴が待っています。
それこそ熊も抜け出せないような。

>>どちらも無関心だから「問題ない」ことはありません。

たしかに、おっしゃるとおりですね。
「問題ない」は言い過ぎでした。


自分のことを知って欲しければ、自分も相手のことを知る努力はしないといけないと思います。林業の側にも、もう少し努力の余地はあるかなと思った次第です。

おそらく人間は、自分に利害関係がないと本気で知ろうとしないものです。
ここでいう「利害」とは、何も金銭的なものだけでなく、たとえば近しい人が林業をやっているとか、自分がつかっている道具の木が、どこそこの山の木であるということを教わった……という関係性でも成立します。

それらを発見し、つないでいく努力が必要なのでしょうね。

 林業の経済価値についてですが、国単位で考えると影響が少ないでしょうけれど、地域単位で考えるとそうでもない地域があることはあるでしょう。
 しかし、その消費する地域、人口が多い地域に林業がない、例えば1つの市町村区域に林業生産地と消費地の両方を有する市町村はほとんどないかもしれません。私が、思いつくのは、豊田市、浜松市ぐらいです。
 いろんなモノつながりがあると思います。水道水であったり、農業用水工業用水、林間学校、この前食べたヤマメそば・・・・。

 やっぱり、語り継いでいくことが必要でしょう。

 ギンギラギンにさりげなく・・・。
 使ったり、気を(木を)使ってくれる人たちがさめたしぐさでも熱く見てくれるように。。。

おそらく菅総理も、経済成長というよりは地方における雇用対策や地域経済の底上げを考えたのではないかと思います。

でも、それが会見場の記者には伝わらなかったのだから、プレゼンとしては出来が悪かったことになりますね。話しようによっては、夢のある構想にできたのに、と思います。

いつもの様にまとめて拝読させていただいてコメントさせて頂いております。

菅総理の発言はともかく、第一次産業が経済の起爆剤になるなんて、マスメディアの方々が白けるのは当然だと思います。
でもね、インターネットが発達する前に「そんな事が起こる訳ない・・・」と冷ややかに見ていたのはマスメディアでしたし、マスメディアの関心がないうちに、そのインターネットの重要性に気付き「楽天市場」で一人勝ちしたのは三木谷さんではなかったでしょうか?
ソフトバンクの孫さんもその一人だと思います。
と言う事は要するに、林業を(大林業?)行っている側からすれば、皆が「あれ?林業って最近景気ええやん?」と気づく前に一人勝ちする状態になっているのが理想的ですよね?
今の林業は「ひと昔前の林業」と比べれば確かに木材価格が安いので景気が悪いと思われがちです。
でも、悪い、悪い、と言われながら20年も林業していれば、何やかやと生き残る術が見えてきて、気がつけば他の産業と比べて今でも営業利益率が良かったりする。

最近の林業には「これって、昔と比べるから悪いだけとちゃうのん?」と思える要素がふんだんにあるように思います。
こんな気持ちの持ちようだけで林業が良くなったりはしませんが、自分の生業である林業が良くなる事を夢見て、世間には今、関心を持って欲しくはないなぁ・・・と。
その意味でマスメディアの記者が白ける状態は嬉しい限りです。
今に見ていろ!と言う反骨精神も湧きますしね。

現在の材価で頑張っているところの財務体質は、おそらく筋肉質になっていると思いますよ。そういうところは強い。それに案外、林業家は含み資産(隠し財産?)が多い(^o^)。だから、苦しい苦しいと言いつつ生き延びているんじゃないかな。

メディアの評価はどうでもよく、菅総理には周りの声に惑わされず、初心を貫いた政策をとってほしいものです。(実は、ここが一番心配。)

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