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2010/09/05

「撤退の農村計画」とボルネオのロングハウス

撤退の農村計画」を読んでいる。 (サイドバー参照)

この本については改めて記したいと思っていたが、実は現在ボルネオの記事を書いている。そこで妙に両者の記憶がリンクした。

「撤退の農村計画」は、大雑把に言って、「積極的な撤退」を勧めている。つまり集落移転だ。ずるずる限界集落化が進んだ結果の移転、それも五月雨式の分散ではなく、早めに計画を進めた意図的・積極的・戦略的な撤退である。

一方で、ボルネオの少数民族の世界でも、奥地集落の過疎化が進んでいる。私が以前訪れた奥地の村は、飛行場に学校、就学児童の宿舎まである地域の拠点だったが、着いてわかったのは、過疎高齢化の進行だった。

ボルネオでは、多くの民族はロングハウスと呼ばれる巨大な家屋に各家族が一緒に住む。昔は個室さえない、屋根の低い体育館?的構造だったが、現在は仕切りが作られるようになっている。ただ、広い廊下(ときに50m以上に及ぶ)では、共同作業や宴会、井戸端会議を行い、常に顔を合わせる場所として機能している。
ところが、そのロングハウスに入ると、ガラガラなのだ。そして若者が少ない。テレビは衛星放送が入って、私もNHK国際放送を見ていたほどなんだが、空き室がが多いのだから空疎でまいる。

一方、別に訪ねた幹線沿いにある集落は、まだ未完成で、開拓部落みたいであったが、元気だった。若者・子供がたくさんいた。聞けば、奥地から道沿いに移転してきたのだそうだ。

やはり目の前に道があって、そこにバスも走るので都市にもすぐ出られる。すると出稼ぎではなく、通勤になるらしい。

こうした都市に近い地域に移転・定住した村では、商品作物を栽培したり、なかには油ヤシ農園の経営に乗り出すところもある。油ヤシは、手間をかけずに一度植えたら定期的に収穫できるので、確実に現金が手に入る。おかげで集落は、ハッピーな状態だそう。

「なぜ、やらないのだろう」と、奥地で森林に固執する集落の人々に疑問を投げかける。

もちろん、移転を決めるまでは、議論があったらしい。彼らの世界には、強力なリーダーはいない。トゥライ・ルマーと言われる村長・酋長はいるが、あくまで調整役である。しかしロングハウスは、もともと村人家族がみんな一緒に住んでいるのだから、根気よくやれば合意形成は可能なのだ。

しかも、もともと焼き畑農耕と狩猟採集生活を行っていたから、移動は当たり前だった。ロングハウスも熱帯ゆえに傷みやすく、建て替えは比較的頻繁だ。

それゆえ集落移転は、そんなに意外感のない現実的な選択だったのだろう。

その点からすると、日本の集落の移転は、壁が大きいように思う。「撤退の農村計画」に書かれた要点は否定しないが、どこか甘い(笑)。ちょっとやそっとでは、うまくいかないのではないかなあ。

もしかしたら、集落移転ができるかできないかで、勝ち組負け組が生まれるのかもしれない

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コメント

 『撤退の農村計画』編著者のひとりの齋藤です。このたびはお読みいただきありがとうございます。ボルネオの事例は興味深く読ませていただきました。山村部の過疎高齢化が決して日本だけの事象でないことがよくわかります。
 この書籍の執筆者が属しています共同研究会「撤退の農村計画」では、「積極的な撤退」についての議論・研究をすすめており、今回の書籍はその成果のひとつとして出版されたものです。過疎地域の住民にとって、これまで活性化しか選択肢がない状況でした。そこへ「少し引いて確実に守る」というあらたな選択肢を提示することができたと思っています。もちろん、これで終わりではなく、この書籍を更なる議論・研究の土台としたいと思っています。
 確かにご指摘の通り、水田を中心とした農業を進めてきた日本では、狩猟採集生活がメインのボルネオなどよりは移転が難しい面もあるかもしれません。集落移転のより具体的な手順や課題の検討もまだ残っております。また、集落移転を選択したかしないかの違いによる、過剰な経済・生活格差の発生は避けたいところです。
 そのためにも、さらに研究をすすめ、ご指摘の「甘さ」を少なくし、「もうひとつの提案=積極的な撤退」がより現場にとって実現可能性の高いものになるようにしていきたいと思っております。
 今後とも、交流や意見交換等ができれば幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

昨日、東京・横浜に住む長男次男と“撤退の農村計画”のことを話していたのですが、双方曰わく、「みんなで移転させてくれるんだったら、前から居る人(移住者でないネイティブ)は大喜びだよね」と。
この息子たちが育ったのは、田中さんもおいでくださいましたが、奥山の8世帯(現在)の集落です。
つまり、撤退に対して合意形成が難しいかどうかは、その集落が置かれている条件によると思いますね。
最も、私はこの集落を存続させようとしているのですが、それは撤退を否定するからではないんです。
いずれにしても、撤退(集落移転)という選択肢があるだとしたら、それ非常に健全なことだと思いますね。
難しいのは、受け入れ体勢の作り方ということもあるでしょうが、むしろ跡地管理の方ではないか、と思っています。

これはこれは、本書の関係者がご来店(^o^)いただきありがとうございます。

実は、まだ読み終わっていないのですよ。全部読んだら改めて、と思っていますが、私が「甘い」と感じたのは、移転条件よりも「合意形成」に不安を感じたからです。
ボルネオのロングハウスは、少なくても村人は「同じ屋根の下」に住んでいますからね。ただ、実は若い世代にはロングハウスから出て、個別住宅を建てる例が増えているのですが。

「撤退の農村計画」の林です。サイドバーに取り上げてくださり、ありがとうございます!かなりうれしいです。

ご指摘のとおり、合意形成は大きな課題だと考えています。人数が少ない場合、調整役不在が壁に…など、いろいろなことが考えられます。今後とも、ご教示よろしくお願いいたします。

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