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2010/09/14

「撤退の農村」より「廃村の転用」

「撤退の農村計画」は、現在住民がいる集落の問題である。当然、住民目線で考えないといけない。

が、前々から思っていたのだが、肝心の集落が移転もしくは完全無人化した「廃村」の可能性を考えてみないのだろうか。

集落の移転は、合意形成のほか、移転先の決定やインフラ整備、さらに移転先近隣の人間関係まで考えると、かなりの難問だと思っている。
一方で、過疎化が進み、限界まで来ている集落の復活もかなり厳しい。「種火集落」的な発想もあってよいが、移住希望者がいても、そこに馴染むまでの苦労を思うと、あんまり勧めたいと思わない。

だが、「廃村」の転用・活用はどうだろう。

一度は、住民がいなくなったところに移住者を招くのである。そして新しい村・集落を作ってもらう。

もちろん土地を始めとして権利関係の整理は大前提だが、住宅建設に始まる、いわばニューヴィレッジ建設。タウンまでいかない規模がいい。

「入植者」は公募になるだろうが、まったくの開墾に比べたらはるかに楽だ。荒れていても平坦な宅地や農地があるうえ、水の心配もない。電気関係もおそらく復活はゼロから電線引くのに比べたら簡単だろう。そして道もある。多少の補修は必要でも、莫大な建設費はかからない。かつて人が住んでいたところは、やはり人が住みやすいのだ、完全なフロンティアよりも。

そして新住民だけだから、伝統や慣習に縛られることもない。最初からみんなで集落のルールづくりを行える。ただ、この点は厳格に最初からルールづくりのシステムを考えておかないといけないし、人も選ばないとマズい。

一方、仕事は各自がつくるにしても、昔のように自給自足しなくてもよい。町に通勤してもいいし、元から手に職を持って移住するのが原則だろう。

もちろん、残っている集落とのつきあいとか、いろいろ課題はある。しかし、同じ集落内に先祖代々組と移住組が混ざって、軋轢を引き起こしてエネルギーを費やすより、古い集落のすぐ近くに新たな集落を移住者が作って、相対する方がお互いのためとも考えられる。

どうやって伝統、文化を受け継ぐかって? そんな面倒なことは考えない(笑)。
理想的なのは、消える集落の前に記録を残しておき、それを新住民が受け継ぐことだが、それも上っ面になるだろう。新しい文化を築いてもらう気概を持つ方がいいのではないか。

……実は、本音のところで移住者はその方が喜ぶと思うし、また先祖代々組も、新参者とは交わりたくないのではないか。無理に融合を唱えるのはやめて、近くに住んで時折交流する関係にとどめておこうや。いや、何も嫁姑とか親子関係のことを言っているんじゃないんだけどね(^o^)。

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地域・田舎暮らし」カテゴリの記事

コメント

台湾ではそのような取り組みがあるようですね。実際、私も同感ですし、8〜9世帯になった集落の再生活動をしてくる中で、いったん消滅を待ってからやった方がいい、ということは何度も考えたし、周囲からも言われました。また、伝統文化継承には記録だけでいいのか、という疑問は持ちながらも私的にはあまり拘っていません。うちの場合それはもう不可能ですから。
心配するのは土地などの所有権が更に不明になることです。国なりが早急にいったん買い上げて、その上での移転や消滅でないと、次への引き渡しが出来ないんですね。

そうです、撤退するにしても消滅するにしても、土地の所有権・境界線を明確にしておかないとどうにもならないですね。それこそ中国にさえ売れない。

行政が、この問題にどこまで関わるかは別として、権利関係だけはしっかりさせてほしいですね。
さもないと、手を付けられない土地として「国土」自体が消えます。

こんにちは。
全くそうだと思います。
使っても墓参りだけです。

死んでも名義が残り持つ者の世代交代もなく
希望者が居ながら意識差でただただ荒れてしまいます。

私が訪ねた自治体では限界集落について教えてもらえずでした。一面自治が及ばないから集約したいと思っているようでした。
権利関係については
いままでのやり方には問題が多すぎると感じます。
ここでも政治主導が必要なのかも知れませんが、菅氏に資質があるのか。

大規模に線を引いての悪意の時効取得が視野から外れません。

書き忘れてしまいました。

いつも読ませていただきありがとうございます。

未利用地の固定資産税を上げて権利をはっきりさせて某国の戸籍のような幽霊地主を税からあぶり出すと動くと思うんですが。・・

今の逆三角有権者の割合からそんな事を言う人は当選しないでしょう・・残念です。

これは集落の「居抜き」活用ですな!
最近、大手飲食の閉店した店をそのまま活用、
「居抜き」で開業や企業する人が増えています。
集落も基本インフラが整っているし、本当に
その方が「Iターン」にはいいと思います。
「居抜き」として考えたら、その手の本を改良して
「集落創造」とか「消滅集落の活用」の本を
出したら、意外に売れたりして?(爆)

土地に関する法律は、本当にやっかいですね。農耕民族的執着を感じる(^^;)。
なんとか政治主導で解決の道筋を付けてほしいのだけど、法制局がストップかけそう。

そこで、やはり勝手に占拠(いや、境界線を間違ったふりして)20年ばかり待って、そのまま確定させるしかないかと(笑)。

法的な面をクリアしたら、「居抜き」の発想、いいですね! 廃村専門のリフォーム業者も現れたりして。

こんばんは

>一度は、住民がいなくなったところに移住者を招くのである
ちょっと記事の趣旨から外れるかと思いますが、この部分を読んで思い出したのが、長野県飯田市の「大平宿」でした。
昭和45年に全戸離村で無人となった宿場街を、管理・保存しつつ希望者には宿泊施設として貸し出しています。最近の「廃虚ブーム」にも後押しされて、利用者も増えていると聞き及びます。

記事の「廃村(集落)に移住者を」にはほど遠いと考えますが、地権管理等は叩き台に使える部分も有るのでは?と思いますが、如何でしょう。

>廃村専門のリフォーム業者

 (笑)(^^)出てきてもいいと思います!
 私は今、「農業」に参入している企業が、この
発想で「集落創造」「廃村再生」とか、企業の
「世間的な企業イメージアップ」などの目的も
込みで、やってみる企業が出てきても面白いかな~
と考えますが、さて。
 どこの業界が一番乗ってきますかね~?

飛魔人様

大平宿ですか。興味深い情報ありがとうございます! これは面白い試みだなあ。一軒だけならよくありますが、宿場町全体を残すなんて。
時代劇や映画のロケにも使えそう。

地権管理はもちろん、集落文化の保存としても、一つの形態になりますね。

廃村リフォーム業は、本当はもっとちゃんと確立してほしいんです。
田舎物件を扱う業者はいますが、集落全体を扱って、新たな息吹を吹き込むような。行政とタイアップしてもいいし、別荘とか2地域居住地としても売り出せるはず。

皆さん土地の権利や法律に関心が高いようですが、
実際に無人となった集落に移住した者から一言。
人が去るところにはそれなりの理由・原因があります。
無人となってから多少の人が戻ってきたところで行政は多くの人が住む地域ほどには対応してくれない。
我が家へのアクセス道路は町道ですが、未舗装。
大雨が降れば道は雨水でえぐられ、ぼこぼこ。
我慢に我慢をして何年かに一度町に連絡し、漸く土砂をいれ整地してもらう。
車の痛むのが確実に市街地より早いです。
台風や降雪による倒木があれば、町が対処してくれるの待っているか、何とか自力で片付けなければ通勤もままならない。
ここ数年は除雪も車1台の幅のみになり、積雪後は対向車に気をつけながらの通行。
予算のあった以前はすれ違いで通行できるよう時間をかけて丁寧に除雪してくれたのに。
まあ、好きで移住したんだし、威張れるほど税金も納めていませんが。

無人となっても復活できる地域は
その前に何とかすれば
本当は無人とならなくても良かった地域なのでは。

無人集落に移住したんですか!
もちろん苦労は多いでしょうが、何か可能性を秘めているような気がします。

いつか取材したいなあ。

無人になってしまうのは、地の利だけでなく、人の利、時の利に薄かったように思います。今度は人の利だけは、期待したいですね。

おもしろいですね!姉妹研究会「廃村の農村計画」をつくろうかな。それはさておき、撤退するしないにかかわらず、所有者のチェックなどは不可欠ですね。ひとつ気になったことは、転用後の村が再び高齢化して…と、同じような問題が発生する危険性です。新しい定住の文化、そしてかなりの計画性が求められるような気がしました。

>無人集落に移住したんですか!
もちろん苦労は多いでしょうが、何か可能性を秘めているような気がします。

正確には1軒だけになった集落に移り住んで、
その後残ってた1軒が集落を離れました。

可能性のある土地ならその1軒も離れなかったでしょう。

高齢になって車が使えなくなれば終わりですよ。
生まれ育った土地を離れたがらない方々の思いも
充分わかりますがね。

故郷は遠きにありて想ふもの
よしやうらぶれて異土の乞食(かたい)となるとても
帰るところにあるまじや

でしたか?誤字脱字はご容赦を。

廃村に移住者が入っても、彼らが高齢化して住めなくなるケースは、もう発生しています。
そうでなくても、彼らの息子娘は田舎を嫌がって出て行くケースは山ほど。
その一歩手前で、自分の老後を見つめて、介護と送迎サービスを行うNPOを作った人もいます。

移住者を迎えることも、集落存続の決定打にならないようですね。

スポット様

無人集落に移住とは、すごいですね。
なかなかそんな決心する人は少ないでしょう。

話をしているだけと、実際に住んでみるとご指摘のように大変ですね。

私が知っているのは、奈良県のある山奥の集落ですが、村人は10年以上前に集団離村して交通の良い所に住んでいます。
その集落は,鳥も通わぬ○○村、とよばれ奈良県内に70年以上住む老人でも行ったことがない所でした!

そこには、まだ住める家が無人で残されており、勝手に神戸のある男が住みこんでいましたが,持ち主は文句もいわないで容認でした。
というのは、誰も住まなくなった家はすぐに朽ちますが,誰か人が住んでいれば家にもいいからです。
法律的には、無断侵入罪に問われる行為ですが,村人は仕方なく容認しているという状態です。
離村するとはこういうことかとビックリした次第です。

そこには、大変古いお寺(そこの仏像は有名な写真家の写真集にも載っているとか)がありますが、そのお寺だけは村人が管理しており、年に2回のお祭りで使用するということでした。

2年前の梅雨の季節に学生を引率して訪れましたが,そのお寺から眺めた景色は、まさに桃源郷でした!

室生犀星の詩が現実のものとなった場合は、悲しいですね。


ふるさとは遠きにありて思ふもの
               室生犀星

「小景異情(その二)」

ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの
よしや
うらぶれて異土の乞食となるとても
帰るところにあるまじや 
ひとり都のゆふぐれに
ふるさとおもひ涙ぐむ
そのこころもて
遠きみやこにかへらばや
遠きみやこにかへらばや

奈良には、袋小路のような集落がたくさんありますからね。そして、そのほとんどが限界化もしくは消滅に向かっています……。
それにしても、そこに無断で住み着く人がいて、それを知った持ち主も容認してしまうとは……。もはや想像を絶する展開です。

うむむ、コンスタントに移住者が入る状況を作る必要がありますね。むずかしいけど…。

そんなに存続にこだわらくてもいいんじゃないかと。
たまたま入ってくる人が続けば、集落も続く。いなくなれば消滅するということで。人口減少時代ですから、移住者が入ってくるということは、別の地域の人口が減っていくということです。

>無人集落に移住とは、すごいですね。
なかなかそんな決心する人は少ないでしょう。

無人でも、下の町まで数キロと単純に距離的には
便利なところです。
コンビニもスーパーも町内にあり、マックもあります。

でも、かつての住民は皆、下の町に移住しました。

それと一番の問題は医療機関です。
私の地元の県でも都会との2地域居住といった事業
をしていますが、医療体制の崩壊している地域が
少なくありません。
高齢になって倒れても医療機関への距離で
助からないなんてことも。
小児医療も問題です、救急での診察が必要でも
車で夜中に40分も走らなければ診察してもらえない地域もあります。
まず、こういった部分の問題点を解決してからの
2地域居住だと思います。

実際に都会から風光明媚な地域へ移住して
十数年後、奥さんが癌になり治療を続けましたが、
病に苦しむ奥さんに望まれてご主人が
奥さんを殺害なんて、ショッキングな事件もありました。
この事件は決して他人事ではないと感じました。

元気なうちの田舎暮らしです。

世界で一番競争力のない日本の自治体が
財政再建、コスト削減に取り組めるように
住民も役場に近いところに寄り集まって暮らせば
インフラ整備の費用も少なくて済みます。

私は地域興しに興味を持っていまして、その考え方には全面的に賛同します。
むしろこれからドンドン推し進めていくべきです。
自然保護の観点やコスト面からも非常に優れています。

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