フェアトレードと日本の農山漁村
先に、国産材商品を扱うには、生産者に何を創るべきか、どんな売り方をするか、そのための手続きは、デザインはパッケージは……と全部根気強く教えていかねばならない話を聞いた。
それほど田舎の生産者は、ビジネスのイロハを知らないことを意味するのだが、国産材など資源は充分で、その加工の技術は優れている。潜在的に価値あるそれらの部分を、いかに引き出すかが販売業者の仕事になっている。
これを聞いて思い出したのは、フェアトレードの世界。
発展途上国の資源を、先進国など海外市場で売って利益を還元できるように、何を創るべきか、どんな売り方をするか、そのための手続きは……と、手がける業者が懇切丁寧に教える。そして流行に乗せて売れるべき商品に仕立てていく。ただ、単に自分が利益を上げるためだけでなく、相手にも適正な利益を還元する。そうした結果、地域が経済的に潤い、自立を助けることになる……。どう、似てるでしょ(^o^)。
日本の農山村の将来を考えるモデルは、国内にはなく、海外にあるのではないか、と思った。これは、何も振興策だけの話ではない。
日本の農山漁村が直面している問題は、日本史上、前代未聞の事態かもしれない。交通網の発達、教育の高度化、情報化社会。
それらの理由による、人口減。流出人口だけではなく、少子化も進み、高齢化が進展している。一方で、車社会による交通過疎。医療過疎。
そうした社会変化に対して、辺境の地に住むものは、どう対応していけばいいのか。
その解決モデルを探しても、日本国内では見つけられない。もちろん、世界中でも、こんな急速な過疎高齢化が進む国はないのだが、問題の要素を因数分解をしたら、もしかしたら発展途上国にモデルが見つかるかもしれない……と思えるのだ。
それも、日本人が、各地の海外援助でやっていることが国内向きに役立つような気がする。
たとえば、私が訪れたボルネオの少数民族の村では、若者がどんどん町に出て高齢化が進んでいた。そこで集落丸ごと(ロングハウスという一つの住居なのだが)、幹線道路沿いへの移転が進んでいる。
一方、中米ニカラグアでは、戦乱の中で崩壊した医療を立て直すため、日本人の鍼灸師が活躍していた。鍼灸師は、医者より技術が身につけやすいうえ、気軽に、安く、そしてなかなか効果的だ。
ソロモン諸島には、漁民に獲った魚を町に売りに行く仕組みづくりを行い、その方法を教えようと奮闘する日本人がいた。
日本には、多くの海外援助の実績がある。それも、青年海外協力隊のように、現地に住み込みで入って悪戦苦闘しながら取り組んだ経験者がたくさんいる。彼らこそ、日本の集落援助のノウハウも持っているのではないだろうか。
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実は私、学生時代に反対のことを考えておりました。日本のむらおこしのやり方を学び、海外に住んで実践するというパターンです。
日本でも海外でも、基本的な考え方(地域の風土と歴史に基づく商品化)と手法は似たようなものだと思います。
で、東京からインドネシアかマレーシアへ引っ越しだと思っていたのですが、途中の水俣で17年目に入りました。
今週末の就森者大集合、楽しみにしております。
投稿: 沢畑@水俣 | 2010/11/24 23:24
普通に考えれば、日本でノウハウを磨いて海外に持っていくことを考えますよね。
でも、今では国内の方が難しいと思います。下手に言葉が通じるのがイカンのか(~_~;)。法律でがんじがらめなのか。
投稿: 田中淳夫 | 2010/11/25 00:51
田中様
24年前に協力隊でザンビアに赴任していました。
大変でしたが、楽しかったですよ。
まったく何にもないところからスタートできるので私自身は、やりやすかったです。
ザンビア工科大学という大学の講師でしたが、教科書がないから、教科書をつくる。とか、木造のローコストハウスの図面を標準化したり、休み期間に地方の実家に帰る学生にアルバイトで伝統建築の調査をやらせたり、ゼロからできることは、案外、幸運かもしれません。
投稿: 海杉 | 2010/11/25 22:35
私も大学卒業時に、協力隊でザンビアに行くつもりでした。職種は森林管理。補欠でしたが、もし行っていたら、帰国後その経験を活かして日本の森林管理もできたかもしれないですねえ。
海杉さんの今も、ザンビアの経験が活きているんじゃないですか。
投稿: 田中淳夫 | 2010/11/25 23:33
田中様
そうですね。結構、役に立っているかもしれません。なぜ?ザンビア来たんだ?というザンビアの人たちに日本は、いずれ沈没するから、その時、逃げてくるから、必ず助けてくれ!と言っていました。(笑)
多分、今でも、最後に逃げ場所をつくっているので、日本で暴れても大丈夫と私は勝手に思っているところです。さあ!もっとやるぞ!
投稿: 海杉 | 2010/11/26 19:18