就森集会の会場は中学校
就森集会報告、だんだん連載化しつつある(笑)。閑話休題は、さすがに打ち止め。
この集会を開いた場所は、久木野中学校の音楽室だった。ピアノのある部屋、それも段差のある教室に音符の描かれた机とイスに座って行ったのである。なかなか風情がある。
が、この久木野中学校に、来年度はない。
校舎の階段には、いろいろな張り物がある。なかでも胸を突かれたのは、こんな言葉。
生徒数は少なくても生徒会はある。生徒総会も開くそうだ。そして、
<最後の1年、
久木野に誇りをもって
有終の美を飾ろう>
ここで、休校することに月並みな感想を述べるつもりはない。全国に姿を消していく小中学校は山ほどある。それは過疎地だけでなく、都市部でも頻発している。実は、私の出身校も姿を変えている。
生徒数が少なくなれば、学校といえども維持は難しくなる。コストはかかるし、少なすぎることで教育環境も悪化する。だから、ある程度統合はやむを得ないというか必然でもあるだろう。
とはいえ、小さな集落ほど学校がなくなることの打撃は大きい。子供らは確実に外へ出て行く。まだ久木野には小学校は残っているが、地域で中学生の姿が見られなくなる。
愛林館の前でも、子供たちは遊んでいた。
今回の会合には、小さな子供連れの家族もいたのだけど、幼い子を見るお年寄りの目はなんとも優しかった。
ところで、私が就森人へ訴えたことの一つに、「副業の積み重ね」という考え方がある。林業だけで食っていこうとすると、厳しくなる。さまざまな仕事を小さく掛け持ちすることで、あるいは共稼ぎなどで収入源を複数にして、、全体の収入を得るという発想である。
そして、それはセーフティネットにもなる。一つの仕事が失われても、打撃を最小限に押さえることができるからだ。実は、私のようなフリーにとっても同じであり、いかに仕事先を分散させておくかが重要なのだ。
これは決して新しいことではなく、そもそも農林業は昔からそうだったのだ。一つの仕事を専業にするのが増えたのは、戦後である。もっとも、今はまた兼業農家などが大半になっているのだけど。
そう考えていると、ふと、学校も副業を持てないかと思いついた。小学校、中学校だけと行き詰まる。そこで幼稚園・保育所やデイケアなどの高齢者施設、公民館、いやいや役所だって一緒にしてしまう。地域の人々を丸ごと集う場所として設定する。いっそ、レストラン(食堂)、コンビニ(よろず屋)だって誘致する。
そうだ、宿泊施設も作ろう。すると旅人がやって来る。そもそもユースホステルとは、学校を利用した宿泊施設としてスタートしている。
常に誰かしらが出入りし利用することで、お互いを支え合う。こうなると、すると生徒数が減ったことを理由に休校するのは難しくなる。それは異年齢集団であり、働く人を間近に見ることで、生徒にも教育効果があるだろう。生活こそが、教育だ。
……今の縦割り行政では無理だろうけどね。
でも、ローカル鉄道が赤字で存続の危機にあるとき、センベイを売って凌いだ実話もある。本業で稼ぐより副業の方が利益を出していたから、支えられたのだ。
それで思い出した。愛林館は、そもそも駅だったのだ!
そもそも愛林館は、久木野を走っていた山野線が廃止された駅跡に地域づくりの拠点として設立されたという。
だから愛林館前には、ちゃんと駅のホームが残されている。
愛林館の2階には、時刻表まで残されていた。
そうか、やっぱり愛林館は駅として副業できるはずだ。鉄道ならぬ就森を支える副業を。
ちょうど朝市も始めたし、ランチも出す。キオスクみたいな売店もある。バス停もある。
でも、愛林館を飛び出した方がいい。
日本一の棚田もあるのだから、この景色を眺めながらお茶を飲みたい人は、たくさんいるはずだ。棚田分譲の不動産業もいい。農地を売るのではなく、景色(の見える土地)を売る。耕作断念地を花の名所にして人を集める手もある。
……と、音楽室から話は飛んで、広げて、汽車に乗ったかと思えば脱線して、棚田を歩いて、どこか旅に出てしまいそうだ(笑)。
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愛林館は、もとは駅だったのですか。
元駅に元鉄の沢畑さま!
妙に納得。
来るべくして来たお方だったんですね。
愛林館を核とした展開には、
さりげなく(でもないか)注目しているところです。
投稿: 熊(♀) | 2010/12/03 23:45
そうか、元駅に元鉄が選ばれるのは運命的に決定されていたことであったのですね。
田中さんのアイディアもいただきます。山の駅、就森の駅、人生の駅になるよう、私の人柄にも一層の磨きをかけます。
投稿: 沢畑@運命 | 2010/12/04 00:11
生駒山の棚田地帯には、たくさんカフェができています。また棚田を市民農園に分譲?する動きも進んでいるし、菜の花祭も開かれている。ハイカーを集める「棚田の駅」になりつつある。
久木野を、廃鉄のメッカとして売り出すのはどう?
投稿: 田中淳夫 | 2010/12/04 10:44