沖縄に“国産材”を
国産材を海外に輸出するアイデアはかなり広がっているが、なかなか軌道に乗るまでにはいかないようだ。
その理由を分析すると、相手国のニーズやビジネス慣行、そしてやっかいな手続きなどいろいろあるのだが、大きく言えば日本側に慣れがないことだろう。どんなやっかいな国でも、木材以外の商品ではうまく輸出しているのだから。木材だけがうまく行かないことを、相手のせいにしてはいけない。
……というようなことを考えていたのだが、いきなり沖縄づいた(^o^)こととつなげると、沖縄に“輸出”しないのか、ということを思いついた。もちろん、まったく沖縄に本土のスギやヒノキを使っていないことはなく、それなりに持ち込まれているはずだが、私の知る限り、あまり目につかなかった。おそらく木材の国産材使用率を見たら、本土よりかなり低いはずだ。
沖縄の林業は、目立たない。実際、これまでは薪生産が多かったようで、用材として使えるのはリュウキュウマツくらいしかない。
もともと台風が多い上に、シロアリの害のため木造は寿命が短かった。加えて戦災が戦前の古い建物をなくしてしまった。そのため、今ではブロック積みやコンクリートの建物が大半を占める。木造も外材がほとんどだろう。
だが昔は、やはり木造建造物が大半だった。
写真のように重要文化財に指定された住宅は、木造である。
丸木をそのまま礎石の上に建てたような柱。
あるいは板壁も、礎石の上に置いているが、これらはシロアリを防ぐためだろうか。
ところでスギやヒノキなどは、比較的湿気やシロアリ害に強い。もちろん最新の木材耐久薬剤もあるし、構法なども工夫されてきただろう。
ならば、本土の木材を沖縄で使ってもらえる素地はあるはずだ。もちろん貿易障壁はない。日本語も通じる(^^;)し、流通網も完備されているはず。
必要なのは、現地のニーズを汲み上げ、「買いたい!」と思わせる営業努力だろう。
その点、国産材ビジネスの実験場として、沖縄は価値があるのではないか。国産材のシェアが弱い市場を切り開くことで全体のパイを膨らませられる。もちろん実験と言っても、沖縄にとっても新たな木材供給先の確保につながり、価値は十分あるはず。伝統的な木造家屋の復活の一助にもなるのではないか。つまりウィンウィンの関係を築ける……。
沖縄は、海外市場を切り開くワンステップにならないだろうか。
と、そんなことを考えて沖縄の夢を見たい。
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実は先日、竹富島を訪れました。昔ながらの離島の風情が、今も残っているように感じました。家屋の構造材や雨戸は、日本(九州?)産の杉と思われました。もしかしたら戦前・戦中の頃までは、木材流通があったのではないでしょうか?
投稿: 中村和彦 | 2011/01/24 18:49
おや、竹富島に……。
そうですね。かつては本土産の木材を使った建築が出回っていたかもしれない。実は上記の写真の家屋も、スギらしき板が使われているところもありましたよ。
ゼロから沖縄市場を開拓すると思わず、少し昔のシェアを取り戻すつもりになったらいい。
沖縄に木造建築を大々的に復活されることができたら、それは本土にも影響を与えると思いますよ。
投稿: 田中淳夫 | 2011/01/24 21:03
戦前の沖縄だったら、九州産より台湾産の木材の方が安かったのでは?
投稿: 自由飲酒党総裁 | 2011/01/24 22:29
台湾の方が近いから輸送も楽ですね。しかもいい木があったはず。
いずれにしても、沖縄から木造建築が消えたのは、戦後なのだから、中国や韓国に輸出するより簡単だと思えるのですが。
投稿: 田中淳夫 | 2011/01/24 23:18