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2011/01/14

予想外? のバイオマス科学会議

昨日は、第6回バイオマス科学会議に出席していた。
なんて書くと、なんか、自分も科学者気分(^^;)だが、なに、シンポジウムのパネリストである。

とはいえ、「科学会議」である。どこにもシンポジウムとかフォーラム、セミナーといったありがちなタイトルは付いていない。しかも私は、これまで木質バイオマスに関しては、かなり辛辣なことを書いてきた。そこにいかなる反論が出るか。ちょっと緊張気味に臨んだのであった。

が、壇上に並び、5人のパネリストがそれぞれの立場から意見をいうと、なかなか想定外のことが起きた。

まず私が、現在の林業事情について語る。そこでは、「もはや国産材が売れない時代は終わった。引っ張りだこだが、価格が安いために量で勝負しようと皆伐が進行し、禿山が増えている」実態を語り、バイオマスはカスケード利用の最後にして木材の値段を上げる必要がある、まずは用材利用の林業振興が欠かせない……という論旨である。

ところが、私の後に徳島県の全国的に知られた某町の町長が、「国産材は売れない。皆伐はどこもやっていない。木はバイオマスエネルギーしか使い道はない」と言い出したのである。

私が反論すると、檄昂?した町長の話が止まらない(笑)。制止も振り切り、会場からの質問も振り切り、暴走した(~_~;)。

そして、地元の木の質の悪さを強調するのである。そして「燃やすしか使い道はない」という。しかし、その質の悪さというのは、節が多いことなのである。節なんぞ、今の木材需要には何の関係もないのに。それに地元の木の悪口を首長自らいうのは、聞いていて気持ちのよいものではない。

さらに別論の日本のエネルギー政策や風力、太陽熱……などの件でも、パネリスト同士が異論反論をぶつけ合う。意外と、木質バイオマスは評価されていないことがわかった。

会場からの質問も、科学者っぽい理論的もものばかりではなく、案外素朴な感情論も飛び出すなど、いやはや、「科学会議」という言葉にびびっていた私が馬鹿だった(笑)。

201101121628000

写真は、勇気を持って壇上でパネリストたちを撮った。
少しぼけているけど、この角度からの撮影は画期的だろう\(^o^)/。

しかし、改めて考えると、山間ビジネスやゴミ政策、農林業などに先進的な試みをしていると注目されている町の町長が、これほど認識不足とは思わなかった。木材が売れているかいないかなんて、統計や木材自給率を見たらすぐわかる。私が見てきた皆伐地のことを言っても信じない。グーグルアースで見たって、九州だけでなく徳島県も相当な皆伐地だ。それを知らないのだ。10年前の知識?で林業を語っている。

そんな状況で、「先進的」な政策を進めているのか。バイオマス利用だって、それではペイしないことは科学者でなくてもわかっているのに進めているらしい。

その結果、高いものを買わされるツケは誰が払うか。地元か、補助金の形なら税金取られる国民か。

なんとなく、あの町の行き詰まりが見えてきた気がした。

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コメント

ああ。
よい子が真似しちゃいけない
「壇上からの写真」シリーズだ!

お疲れさまでしたっ。
こういうのって、発言したことが
どこかで活字になったりするんじゃ・・・。
・・み、見たいなあ。

 某町の町長って、開催案内を見たらわかりました。インターネットという便利なツールがあるのに、川上と川下間の距離が近くならないのは残念。

すいません。源氏名で。
ショックです。
そういうものなんだなあと改めて思いました。
やはり、下で働くものたちが情報を伝えていかないと。
伝えるべき情報と伝えるべきでない情報があると思います。
その辺がわれわれの技量かもしれませんね。

「山間ビジネスやゴミ政策、農林業などに先進的な試みをしていると注目されている町の町長が、これほど認識不足とは思わなかった。木材が売れているかいないかなんて、統計や木材自給率を見たらすぐわかる。私が見てきた皆伐地のことを言っても信じない。グーグルアースで見たって、九州だけでなく徳島県も相当な皆伐地だ。それを知らないのだ。10年前の知識?で林業を語っている。」

とありましたので,インターネットで調べるとわかりましたが,○○町の◎●●◎町長は葉っぱビジネスで有名ですが、木材に関して素人であることを、はからずも科学者会議で明らかにした訳ですから、田中さんの功績はたいしたものです(笑)。

葉っぱビジネスで成功した方が、何でも発言するとハロー効果ですが、間違っていることは間違ってますと指摘するのが正しいですから、正に?科学者会議でしたね!

大阪大学で開催された会議にしては、素晴らしい内容だったようですね。
やはり、木質バイオマスに関する一般市民の関心や理解は、生物多様性と同じようにわかっていない方が80〜90%だと思われます。

今時の大学生でも、我が国の森林や林業に関してはほとんど知りません、というか教えられていませんので,ご心配なく?

田中組長!
ぜひ公開の秘密結社を作り,正しい知識を広めましょう!

森林環境教育を学生にしている教員より

よ~し林業秘密結社「田中組」旗揚げだぁ~!!ですね。

田中組長!!

はじめまして・・☆

森について思うこと多々あり、たどりつきました。

正しい知識をもちたいな、と思います。

またきます・・☆

ああ皆さん、某町長の実名に興味があるようで……。
でも、高桑先生、武士の情けで名前を明かすのはやめましょうよ。ちょっとコメントを修整させていただきました。

それより、勇気を出して、傍若無人?に、壇上から撮影した写真に注目していださい(笑)。

記事を読んだだけで、T県のK町だとはわかりましたが、
あそこの町長さんはあくまで「町長」さんで、全国的に有名な
「葉っぱビジネス」の「彩り」の社長さんはY石さんという方
ですね~(^^)一度、会社を離れようとしたら、おばちゃんたち
から引き止められたのはこのY石さんですね(^^)
 今回の会議には「K松町長さん」が出席されたようですね。
・・・自治体のHPでも、探さないと誰が町長か判らないし、
珍しく「町長のお言葉」ページも無い自治体ページでした(^^;)
(珍しいというより、私は初めてです、首長の写真もお言葉
ページも無い自治体HPは)

あ、訂正が入っていた&伏字に・・・(^^;)
一応、私も上勝町に行った事もあり、少し気になったので、
イニシャルで「町長」さんと「彩り」の社長さんは別人と
コメントさせていただきました(^^;)
イニシャルでも、まずいのであれば、訂正かまいませんので、
して頂けたら幸いです。

ホント、皆さん実名が気になるようで……。

私もこの町は取材に行っているので、ビジネスの立役者はよく知っています。
ただ、やはりトップが全体の司令塔であるのは間違いないので、刻一刻と変わる情報を仕入れて判断しなければ危険です。そのためには部下の情報収集力もさることながら、常に本人がアンテナはらないと。

ちょうど某ブログ読者より、この町の皆伐現場写真が届きました。私は、この町では皆伐はないのだろうけど、徳島県にはいっぱいあるよ……と思っていましたが、何の、この町内でも大面積皆伐やってるんだ。

 林家や森林所有者は家計によって伐り出しする場合があります。親戚からの依頼の場合もあるでしょう。出来れば、大面積を短期間に皆伐更新するのはやめていただきたいところですが・・・。
 私は、皆伐なり、択伐で更新をしていくことは必要だし、重要だと考えています。あまり科学的な根拠は持ち合わせていないのですが、大径木の生産方法と生産コストそれに見合う機械の所有と技術も絡むと思っています。
 林地の形状や方角、地質も絡んでくると思いますし、現在の前の植生や成長の程度も分かれば考慮する材料になると思うわけです。

 ちなみに私の町では、支障木伐採を除く皆伐更新林地は21年度は10ヘクタールぐらいでした。22年度はもう少し増えます。農業の主要産品が不振でしたので。凍霜害もありましたし。

 町民全員がいろどりで所得が上がっているわけではないでしょうし、大規模伐採地は町外の方かもしれませんし、もしかしたら○有林かも?(そりゃないか)。

 しかしながら、トップの発言は思いということを下の者(主として取り巻きと職員)は心に止めておく必要があると思います。

町内全体で皆伐が10haくらいなら、そんなに多くない方でしょう。
私も皆伐が悪いとは思いません。ただ、現場の地質や地形、そして規模が問題ですね。また機械の扱いなどのガイドラインもほしい。たとえば1ha程度の皆伐なら問題ない……というように科学者が指針を出してほしいのです。

感覚的には2、3haぐらいが限界ではないかと思います。それくらいがモザイク状にあっても、むしろ生態系を豊かにする可能性もあります。

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