UターンIターン手当て
すでに昨日のコメント欄で高桑先生が紹介したとおり、農林水産省は、「Uターン・Iターン手当」制度を創設する方針を固めたと、報道されている。
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20110105-OYT1T00664.htm
制度は、故郷で農業を継いだり、都市出身者が農業に就いたりする場合など、就農から5年間、年間100万円程度を交付する構想らしい。これを林業、漁業も対象にする方向で考えているそうだ。
菅内閣は、農林漁業に関心が強いらしい。今日も、菅首相は、「農業制度の開放で新規参入を呼び込む」旨の発言をしたという記事もある。票にはならない分野で熱心なのは有り難い(^o^)。
しかし、年間100万円というのは、手当てというより収入保証に近いかもしれない。農業の場合の初期投資と考えると少額すぎるから。また地元に土地も、農機具もそれなりに揃っていることが多いUターンと、徒手空拳のIターンを同じに考えては危険かもしれないし、支払い方に工夫がないと、既成機関に中抜きされる心配もある。
さらに5年間で自立できない場合の処理方法も考えておかねばならないだろう。
……と、あら探ししてしまいそうだが、詳細はこれから詰めるわけだし、なにより第1次産業に人を呼び込もうという姿勢には賛成する。ぜひ、煮詰めて斬新な政策として機能させてほしい。
でも、本当に始まったら、既成の業界・就業者からは、きっと激しいバッシングがありそうだなあ。そして新規参入を邪魔するのではないか。本音は、よそ者に参入されたくないのだろうから。自分たちの職場を新参者にかき回されるのがいやなのだろう。もし、新規組が成功したら悔しいからね。
そして元から頑張っている者にも払え、というのが一番の本音かも。でも、それこそバラマキだと思うよ。そんな圧力に屈したら、せっかくの制度もズタズタになってしまう。
「早ければ2012年度にもモデル事業を開始する」とあるから、まだまだ先だね。それまで菅内閣続いてね(~_~;)。
« コナラの伐採 | トップページ | 全自動備長炭製造機 »
「政策・行政関係」カテゴリの記事
- 花粉対策予算の真の目論見は(2023.09.26)
- 味わい深い全国森林計画案(2023.09.08)
- 補助金から脱却した国(2023.09.05)
- モクレポ・木材輸出、中国は大丈夫?(2023.08.20)
- 「サザエさん」4コマ漫画の 吹き出しコンテスト受賞作(2023.08.09)
田中様
早速コメントありがとうございます。
色々と揚げ足取りをする輩はどこにでもいますが,まずはいままで政府が全く一顧だにしなかった政策を実施する訳ですから、隔世の感がありますね。
いろいろと農業や林業あるいは漁業の不振の分析とかl解説は山ほどありますが,有効な対策や政策を打ち出せなかったのは事実でしょう。
そのいみで、一歩前進ですからおおいに賛成したいものです。世界的にも食糧戦略が大きな役割を持つ時代です。
単なる食糧戦略ではなくて,国家戦略としても認識してほしいものですね。
なにはともあれ、管政権が続くことを願ってます。
間違っても自民党などに逆戻りしないようにね。
投稿: 高桑進 | 2011/01/07 08:39
まだ政策として発表されていない時点で批判するのは差し控え、中山間地に人を呼び込むという理念を、よりよく活かせるにはどんな制度がいいのか考えるべきでしょうね。
でも、政権が長持ちしないとなあ……。
投稿: 田中淳夫 | 2011/01/07 09:34
さんざん難儀して山奥で農絡まりの仕事を維持してきた身から言わせてもらうと、自分の食い扶持も助成金頼みで始めて、自立後続けてやっていけるのかしら。緑の雇用なんかもそうだけど、結局失業保険代わりに使われてしまわないか心配。でも、こういう心配ってご指摘通りひがみの要素もあるのかも(笑)。同じ農山村支援のお金をもっと有効に使う方法がないのか、実施されるまでに熟考して欲しいとは思いますが。せっかくなので。
投稿: unchan10 | 2011/01/07 09:41
お気持ち、察します(~_~;)。でも、何の援助もなく田舎に移住して、起業できた人は、ある意味、強靱な意志と実力をお持ちなんですよ。だから少数派。
少しハードルを下げないと、参入者は増えないと思うんですね。
ただ、失業対策になりかねないのは事実ですね。5年後には、さっさと去るとか。地元の人が形式的にUターンを装って金を受け取ろうとする可能性もなくはない(いや、かなりあるか)。
予算は約500億円というけど、林業版直接支払制度では、来年度324億円を計上していますよ(要望額は570億円だったけど)。つまり、すでに地元向きに、金はばらまかれている。
投稿: 田中淳夫 | 2011/01/07 10:09
ご存じのように、うちの場合は強靱と言うより運が良かっただけなんですけど(笑)。ただ、自分が移住した当時、こういう支援制度があったとしても使ったかどうかは分からないです。
ハードルのこともよく分かります。だから尚更、スタートから寄り掛かる姿勢が当たり前になってしまうのは・・、と。そこをどう料理して実施されるのか、楽しみです。
それにしても、多額のお金が使われながらこの疲弊感は如何にしたものか。ってか、元気なところはバンバンやっているのも事実。
いよいよ選択と集約にはいるタイミングなのかも。
投稿: unchan10 | 2011/01/07 10:43
運がよかった、なんて謙遜を(^o^)。
いきなり電気もガス、水道もなく、車も入れないところに移住して頑張れる人はそうそういませんよ。
就農、就森などは、スタートのハードルを低くしつつ、自己責任を負わせるような制度であるべきですね。下手な使い方した人は、返金を求めるとか、刑事罰を与えるとか(~_~;)。
投稿: 田中淳夫 | 2011/01/07 12:11
わはは。
『就農、就森などは、スタートのハードルを低くしつつ、自己責任を負わせるような制度であるべきですね。』はい。僭越ながら同意です。
投稿: unchan10 | 2011/01/07 13:37
私は良い制度だと思います。現在愛林館にいる就森者が自立するのに、かなり助けになると思うし、Uターンの呼び水としても充分ではないでしょうか。
どういう制度を作ってもタダ乗りするヤツは出てきますから、そういうのを排除するのにエネルギーを使いたくはないです。失業保険の代わりになっても結構。5年間でも村に風が吹けば何かいいこともあるでしょう。500億くらい、ダムをいくつかやめればすぐ出てきますね。川辺川ダムの予算は3300億です。
投稿: 沢畑@上流社会 | 2011/01/09 00:12
最初から破綻するのがわかっている政策を作るほと悪意のある官僚や議員は(ほとんど)いないと思いますが、それでも悪用するケースはあるでしょうね。
この政策に乗って手当てを受け取るのを選抜するには、人を見るより地域を見る(受け入れる覚悟がある)かどうかも重要かもしれない。
投稿: 田中淳夫 | 2011/01/09 00:37