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2011/02/05

眉村卓のインサイダー文学論

映画の「僕と妻の1778の物語」を見た。

テレビCMも多数流れているからご存じだろうが、草彅剛と竹内結子が主演する感動のドラマ(笑)。小説家の妻が進行癌で余命1年と宣告され、夫は妻を楽しませようと毎日1話ずつ小説を書き続けたのである。そしてそれは5年近く、1778話に達した……。

私がこの映画を見に行ったのは、草彅剛と竹内結子のファンで、とくに草彅の「僕シリーズ」の大ファンで……ということもないではないが、実は、原作(というより実話)を書いた眉村卓のファンなのである。彼の作品は、中高生の頃から多く読み続けた。もちろん、映画の原作(もっとも、これは小説というよりエッセイ?)も読んでいる。

眉村卓は、1970年代から「謎の転校生」「狙われた学園」などのジュブナイルSFで人気を博した。が、私は「EXPO87」などの本格派が好きだった。そして最大の魅力は「司政官」シリーズだった。植民惑星を、ロボット官僚を駆使して統治する司政官が主人公である。

作品論を述べるつもりはないが、眉村卓は、一貫して「インサイダー文学論」を唱えていた。

小説では、アウトサイダーのヒーローが主人公になることが多いが、彼は組織と個人の葛藤を描く、まさにインサイダーを主人公にすることが多かったのだ。今でこそ、前回も触れた「組織の中の現場」を舞台にしたドラマが増えているが、おそらくそれらの原型は、このインサイダー文学の中にある。

そして私も、大きな影響を受けた。世の中を動かしているのはヒーローではなく、その背景を埋める複雑に絡み合った諸事情なのである。いや、ヒーローさえも、角度を変えれば別の主人公の背景になる。すべてが絡み合って世界はできているのだ。
それは、地球の生態系にも近いのではないか、と感じている。一種の動物や植物だけでは世界は成り立たない。動物、植物、菌類に微生物……そうした生命体に加えて気象や地質まで環境全体のシステムとして生態系がある。さらに、自然生態系に人間社会も加えたメガ生態系も設定すべきではないか……。

一方で、ひな型としての森林生態系の成り立ちとか、里山システムの概念も築いた。

まあ、映画作品は、そんなインサイダー論とは何の関係もないのだが(^^;)、改めて若い頃に考察したことを思い出した。

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コメント

お、田中さん偶然ですね
私も眉村さん、たくさん読みました。私の高校の先輩に当たる方です。司政官シリーズがお好きとは、なかなか・・・サラリーマンとしては大いに考えさせられる作品群でした。

司政官シリーズは、高校生、大学生にして、組織の論理をたっぷり勉強させていただきました。

とりさんも、ぜひ森林総研での組織の葛藤を語っていただきたく(*^^*)

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