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2011/02/04

現場と大局

近頃、気になる声。

「現場を見ろ!」

GM(現場を見ない)なんて言葉まで生まれる始末だ。

私の場合、取材というのは、現場を見て、一次資料に当たらなくては何も始まらない。
最近は、インターネットだけで記事を書いてしまうライターも多いし、私のところにも現場を知らないまま依頼や質問が来る。「外資が日本の森を買収~」なんてのも、その典型。孫引きだらけで理屈こねている評論家ばかりだ。

さらに森林・林業再生プランの論評がらみも多いのだが(^^;)、たしかにこの手の施策で議論になるのは、「現場の声」である。これは、社会的にも大きなテーマのようで、「事件は会議室で起きるんじゃない、現場で起きるんだ」なんて映画の名文句に代表されるように、組織論を絡めて取り上げられる。

たしかに、現場を見ずに論評したり、計画を立てるケースが多く、それが多くの失策につながっている。

ただ私は、現場だけに依拠することにも危険を感じている。

いくら現場を回って取材しても、何の本質も掴めていない記事は少なくない。いくら事前の予想を覆す重要な証言や事実を掴んでも、自分の常識に縛られて答をねじ曲げることもある。最初から結論を決めて都合のよいコメントを集める取材がいかに多いことか。
同じように自分の現場の経験だけに依拠するのは危険だ。

現場というのは、一つの事実を掘り起こす場所だ。だが、その一つの事実は、莫大な背景を抱えている。そのつながりを見ないと、事実は表面上に事象にすぎなくなり、決して全体像は見えてこない。

そして背景を探るには、大局的な目が求められる。そして大局とは、数多くの現場の情報があって、初めて導かれる。しかし、自分一人で数多くの現場を知ることは不可能だ。結局、各現場の声を集め、そしてそれらをつなぐ想像力が求められる。そうした作業をこなすには、同じ現場にとどまり続けることはできないだろう。

逆に、机にかじりついて、たくさんの資料を集めている人も、実は一つの現場しか見ていないのではないか、と思う。どのケーススタディも、表面をなぞるだけの机上という現場を。

最近の警察ドラマでは、本庁と所轄の対立がよく描かれる。そしてキャリアとノンキャリが取り上げられるのだが、所轄のノンキャリ刑事は、いわば現場たたき上げ。あまり転勤もない。一方でキャリアは、若くして各所轄を転々としてから本庁にもどり、大局を見て指揮をとる、という役割だ。

その限りではよくできた制度なのだが、テレビドラマに描かれるごとく、制度疲労を起こしているのも事実だ。結局、短期間で転々と所轄を回るだけでは、現場の声は身につかないということだろう。
そして、肝心の「各種事例を紡ぎ全体像を描く想像力」は、人間力に伴うものであって、簡単に身につかない。とくに森林現場は、空間的な現場の広がりと、長期間の生長期間という時間の広がりを持つ。よほどの想像力がないと、大局を掴めないだろう。

やはり自分の拠点となる現場を持ちつつ、全国各地の事例を見て回る体制と覚悟が必要だと思う。いくらたくさんの現場事例を目にしても、寄って立つ軸がないと、机上の論理と同じになる。一方で、自力では十分な視察先を確保できない。広く各地の事例を知り、視察をコーディネートする役割も必要に感じる。

果たして、『Think global, Act local』(広い視野でモノを考え、身近で行動せよ)という言葉どおりになる制度やシステムは築けるのだろうか。

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森林学・モノローグ」カテゴリの記事

コメント

きちんとした骨組があって、いろいろなことがちゃんと機能する健やかな状態になるといいです。
そのためにはいろいろな症例を集め見聞きし、それぞれの状況を検討していく労力が必要なんですね。

現場を知るということと、大局を読むということを両立するのは難しいです。よほど、うまい教育システムを組まねば。

ただ、どちらも多くの事例を知ることが基本ですね。単に現場にいるだけでは身につかないし、大局を考えるふりをしても、実は少数の自分に都合のよい(心地よい)事例だけに依拠する例も少なくない。

教育システムの確立など、大きな課題があるのですね。
でも、「☆想像力☆」があれば・・なんですね。

私は信州人ですが、河川のほうでかなり「・・・!!」な事があり、森林も心配になってしまいました。

それで、私の家も山林があるのですが、父は「放っておけばいいよ^^」って。私は「え、ほんと!?」なのですが。

そんな訳で、頭の中が「???」な日々でしたが、田中様のお蔭でなんとなく今の状況とかが分かり良かったです。

明日はスキーに行くのですが、峰々を眺めながら楽しく滑れそうです、ありがとうございました。

今後は御著書も拝読し、更にいろいろ教わりたいです、宜しくお願い致します^^

「放っておけばいいよ」と言われたのですか(ーー;)。
もちろん、放置しても大丈夫な森林もありますが、どうかなあ。ぜひ、一度現地調査を。

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