伏状台杉
テレビで東北に雪が舞っているのを見て、やはり東北、寒そうで大変だなあ……と思っていた。が、昨日訪れた京都の花背の景色。
訪ねた家も、玄関が雪で埋まって入れなかった……。
東北より雪が多いんじゃないか。関西にも、こんな地域があるんだねえ。
おかげで山にも入れず。でも、家人(林業家)からはいろいろ話は聞けた。
さて、今回見たかったのは、伏状台杉。これは、一般に日本海側に分布するウラスギと呼ばれる品種で、伐ったり折れた部分から萌芽が出たり、たとえは雪の重みで枝が地面に着くと、そこから根が出て育つのである。これで育ったスギを伏状台杉という。
これを利用したのが、京都・北山の台杉仕立てで、一つの切り株からいくつもの幹が育っていて、庭木などに重宝される。もっとも、最近は売れなくなったそうだけど。
一般に針葉樹は萌芽更新しないものと思っているから、このスギはちょっと興味深い。
花背の奥山には、巨大な伏状台杉がある(幹回り18m)のだが、そこに行くのは4月以降ではないと無理そうだ。
諦めつつ帰りかけたが、途中で伏状台杉を発見。
おそらく、一つのスギを伐った跡から数本の萌芽が育ち、それが太くなったところで、また伐採されて、その後に現在の幹が育っていると思われる。
伐られた跡から芽が出た雰囲気がつかめるだろう。
昔は、これで育った木を出荷していたらしいが、やはり材質が悪いので廃れてしまった。
だから、このスギ林も、周囲は1本仕立て。おそらく苗は外部からウラスギでない品種を持ち込んだので、萌芽は出ない。
でも、スギはまっすぐ育つだけじゃない。雪に負けずにしぶとく伸びることもできるんだねえ。雪国ならでは、かもしれない。
このたくましいスギの姿は見る人の心を打つ。
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うちで管理している山に石徹白(いとしろ)杉の山があります。
写真のような台杉は見当たりませんが、伏上更新した3本4本の株立ちの木がたくさんあります。
豪雪地帯で、光が入るとすぐ笹が繁茂してくる場所です。
更新をどうしていくのか悩みどころ。
裏杉の苗を作っているところも少ない(岐阜にはないとという話)。
投稿: つうくん | 2011/03/23 07:44
おお、岐阜にも伏状するスギがありますか。
今の時代、この手の株スギの材は売り物にならないでしょうが、むしろ曲がりくねった育ち方に価値を与えられませんかね。
ウラスギは貴重な品種ですが、実際の林業では扱い辛いでしょうね。
投稿: 田中淳夫 | 2011/03/23 13:03