無料ブログはココログ

本の紹介

« 『森林異変』書評・朝日新聞 | トップページ | もう一つの「仮設住宅」構想 »

2011/04/29

住田町・仮設住宅の「秘密」

さきに「ニッポンの底力ってある?」で記したが、岩手県の住田町は、隣接した被災地のために、独自に仮設住宅の建設を進めている。今回の東北行脚でも、もっとも見たい地域の一つだった。

まず訪れた建設現場。

023
元小学校の跡地で建設が進んでいた。3つの地点で110棟の仮設住宅を建設している。隣接する陸前高田市や大船渡市、釜石市の被災民を受け入れる予定だそうだ。車で20分くらいの距離だから、受け入れやすいだろう。

002
基礎はなく、太い杭の上に乗せる形。杭とはボルトで止めているが、それほど強いものではない。仮に地震があったら、揺れで外れることで、家屋部分だけが動いて振動を吸収して破壊を免れるかもしれない。
2年間の限定だから、できるのだろう。


019

全部一戸建てで、見た通りの木造住宅。壁も全部木。キッチン、トイレ、風呂にパーテーションで分ける部屋がある。

少し狭いが、とりあえず家族が安心して住めそうだ。

これを見て、同行者の一人は「私も住みた~い」といったが、その発言はマズいぞ(^^;)。

もともと住田町は「森林・林業日本一」の町を標榜して、FSCの認証を取った森林から木材生産まで一貫して行っていた。そして住宅建設に乗り出していたのだ。町内に原木の調達から製材、プレカット工場まで揃っていたわけである。

私も、仙台のハウスビルダーが、住田町と組んで住宅販売をしていることを聞いていて、その点でも注目していた。工務店と山の連携は、今後の林業界のモデルになる。
また、バイオマスエネルギーでも知られていて、私が以前関わったガシファイヤーという薪ボイラーの研究でも、住田に視察が行われている。

ところで、住田町が素早く独自の仮設住宅を建設できた秘密を聞いた。

驚いたのは、この仮設住宅は、今回の震災のために用意されたものではなかった!

昨年から「災害地に建てる仮設住宅」という事業プランを用意しており、それを政府に提案していたのだ。そのため設計図から生産計画まで、全部プランニングできていたという。

仮設住宅供給プランの認可が下りる予定が、3月22日だったという。これが下りたから、プレカットまでした仮設住宅部材を備蓄しておこうという計画だったのではないか。
だから、天の配剤というか、びっくりするタイミングだ。

結局、認可が下りる直前に震災が起きたわけだが、すでに準備はできていたのだから、素早く動けたのだろう。

このように仮設住宅建設の好条件が揃っていたのはたしかだが、それでも最大のポイントは、やはり町独自の予算で仮設住宅を町内に建設する決断だろう。震災発生後3日目には、ゴーサインを出している。国や県の補助が出るのを待って動いたのではないのだ。

当面は約2億5000万円を注ぎ込む計画のようだ。1棟250万円~見当らしい。が、その後の展開は前回も記したとおり。

まずNPOのmore treesが支援を申し出た。まだ寄付金を集めている段階なので、どの程度の支援規模になるかわからないが、坂本龍一のネームバリューもあって、住田町の決断は、世間に大きく知られることになる。本日で1053万222円集まっている。これで4棟建つ。最終目標は、3億円を集めて97棟分を支援したいそうだ。(ちなみに、私もそれなりの金額を寄付させていただいた。)

そして、国と県も、援助を決めたようだ。17棟分を出すらしい。当初は被災地ではないので仮設住宅と認めないと言っていたそうだが、もはや「お役所仕事」は通じない。英断をくだしたところ、先に動いたところには、周りがほっておかない好例である。

この調子なら、自腹を切るつもりだった建築費の大半は、回収できるのではないか。それどころか地域の評判、いや全国的に林業地としての評判を上げたことによって、計り知れない価値を得ただろう。

同じことは、阪神大震災でも私は見てきた。国や行政の方針決定や助けを待っている地域や個人の復旧は遅れていく。まず自分たちで動いたところが、復旧から復興へと駒を進めることができるのだ。

ちなみにモアツリーズは、「完全に便乗です」と言っていたが、それで十分。ただ、あまり坂本龍一の名が表に出すぎると、モアツリーズ主導のように誤解する人も出て、不協和音がおきかねない。気をつけてね。

※住田町の取材では、地元(石巻・岩手)のライター(自称・半農半筆)の渡辺征治氏にお世話になった。彼の協力がなければ、短時間にこれほど見て回れなかっただろう。

« 『森林異変』書評・朝日新聞 | トップページ | もう一つの「仮設住宅」構想 »

政策・行政関係」カテゴリの記事

コメント

田中組長!

素晴らしいですね!
このような地域があったことは、大変素晴らしいですね。
国産のFSC認証の木造住宅が110棟も出来るとは、すごい快挙です! ぜひ紹介したいのですが、上の写真を私のブログでも使わせて頂きたいのですが、よろしいでしょうか。
photo by Tanaka とクレジィットはつけます。よろしくお願いいたします。

写真はかまいませんが、より正確に知るためには、

http://life311.more-trees.org/

http://www.more-trees.org/blog/

を、お読みください。なお、寄付金の窓口もあります。

モアツリーズの支援活動賛の趣旨は賛同致します。
木造仮設住宅を110棟も4月中に建設終了したというのは、すごい力ですね。
建設資金を国に頼らず、民間の支援金で少しでも賄えることが出来れば最高です。

学生達にも、この件を紹介したいと思います。
実は、私たちも子どもたちの喜ぶささやかな支援活動(学生一人当たり、ワンコイン500円で実現する支援)を進行中です。5月には、完成して紹介出来ると思いますので、お楽しみに。

全住宅の完成は、5月20日を予定しているそうですが、ほかの地域より断然早いでしょう。

皆さんが少しずつ頑張ることで支援したいですね。高桑さんの仕掛けも何か,楽しみにしておきます。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/36391/51527405

この記事へのトラックバック一覧です: 住田町・仮設住宅の「秘密」:

» 住田町・仮設住宅の「秘密」: 森林ジャーナリストの「思いつき」ブログ [oryzaの環境備忘録]
住田町・仮設住宅の「秘密」: 森林ジャーナリストの「思いつき」ブログ [続きを読む]

« 『森林異変』書評・朝日新聞 | トップページ | もう一つの「仮設住宅」構想 »

2017年6月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

森と林業と田舎