商店街と林業の相似
地方都市の商店街。そして、衰退の一路である小規模林地の林業。ふと、両者には共通点があるような気がした。
都市の人口は、郊外に広がっている。なぜなら郊外にニュータウンが建設されたためである。そして買い物には、ほとんど車で出る。スーパーマーケットなどの店舗は、駅前からどんどん離れる方向に移転するから仕方がない。まさに郊外化だ。それに反比例するように、駅前などの既成の商店街はさびれて行った。
郊外に大型店舗が移った理由は、店を中心部に出したくても、駅前など中心部には十分な敷地がないこと。とくに駐車場の設置が至難であること。
そしてモータリゼーション。多くの世帯が車を持つのが当たり前になった……などが上げられる。が、その陰には、商店街側の怠慢・失敗もあったと思う。
消費者の要望に十分応えられなかったのだ。空き店舗があっても容易に他人には貸さず、駐車場の整備もできず、大型店の進出には反対するが、大型店にあるような品揃えやオシャレな雰囲気の演出はない。また決済やサービス上の便利な新システムを求める消費者のニーズにも応えなかった。
そして駅前商店街では、どんどん店が閉じ、シャッター通りとなる。
では、林業界はどうか。
大型のショッピングセンターに相当するのは、外材・国産材を含めた大型製材所であり、合板工場だ。スピーディでニーズに合った商品を揃えてくれる。ただ、こうした施設は山間部ではなく、平野部や海岸部に建設されることが多い。いわば郊外化が進んだ。
そして駅前商店街は、小規模な林業地と、地場の小さな製材所。昔の成功体験に胡座をかいて、木材の量も質も、消費者の求めるものは出せなかった。
かくして地場の木材産業は、大手にシェアを奪われていく。。そして駅前など既成の商店街地域は、疲弊する。
大型化進む製材業界によって林業地が疲弊するのと似ていないか。いわば林業界は、商店街がたどった道を数十年遅れて歩んでいるようなものだ。
ところで、商店街の再生例も、ところどころに起き始めた。
それは当事者の努力の賜物だが、基本は特徴ある品揃えとサービスの展開だった。大型スーパーのような全国一律の品とは違った商品を提供できた店は、根強い顧客をつかむことに成功している。
そしてもう一つ。住民の高齢化もあるのではないか。高齢化によって、自動車の運転ができない層は、郊外のスーパーマーケットにいけなくなる。そこで歩いて行ける商店街にもどりつつある。
さらに郊外のニュータウンから駅前のマンションに引っ越すケースさえ出てきた。坂が多くて公共交通機関のない街に高齢者は住みにくいのだ。
このケース、林業界にも当てはめられないか。つまり地場の小規模林業地、小規模製材所の再生のヒントにできないだろうか。
大手にはない部材やサービスを揃えること。オーダーメイドできること。小ロットの注文にと応えるサービス。いろいろ考えられる。
そのうえで高齢化にともなうニーズも考えてみたい。一般に高齢者はお金持ちで、その代わり他者の持ち物とは違ったものを求めたがる。
たとえば、リフォームや日曜大工を含むDIY用の部材や道具、そしてノウハウを提供するような教室の開催はどうか。時間を持て余した老後に使える木工である。
同じく、定年後に始める森林ボランティア向けの森林と作業用具・ノウハウ販売。そして講習会を主催するとか。
勘違いしてはいけないのは、大型店と敵対するのではないこと。あくまで併存であり、住み分けである。
商店街の衰退と再生を、林業の先行モデルとして当てはめると、将来展望しやすいかもしれない。
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物凄く納得の「林業」と「商店街」の比較ですね!!(^^)
山時代、地元の製材所に頼んで、「痛い目」にあったので、
本気で思います・・・(^^;)
森林組合で教室など、解ります(^^)というか、実際に似たこと
をやっていました(^^;)ログベンチ製作の教室なんか。
でも、結局、そういった「今までとは違う事」に理解が無い組合
だったので、そのまま・・・(^^;)古いけど製材機械もあり、
商品にならない板とか背板なんか、腐るほどあるのに、精々
薪作りや測量杭に丸太がたまに・・・でした。
森林組合は「敷地」も広いし、機械もあるのだから、いろんな
事が出来るのですがね・・・
一度、「森林組合」で「地元不動産会社」「ログベンチ講習」に
「チェーンソーアート講習」「木工教室」なんかのイベントを一緒に
やったらみんな得しますよ?と提案したこともあるんですがね~
(^^;)
投稿: 元関西の山の中に居た者 | 2011/04/15 00:38
はじめまして、あいちの都築ともうします。
「材木屋は市場(原木・製品)に出す(持ってゆく)だけなんでユーザーのニーズを知らないんだよ・・・」
こんな会話を「あいちの木で・・・」の寄合いの後にしました。なんとなく暗中模索してた20年くらい前の農業に似てるなぁと思いました。
大型ショッピングセンターも地元商店も「消費者」とは呼ばず「お客様」または「お客さん」ですが、一時産業の多くの方々は「消費者」と呼んでます、ここは違いますよネ。市場に頼らずご自分で販路を開拓されて忙しがってる製材屋さんは「お客さん」かな?
投稿: 都築ともうします | 2011/04/15 07:17
田中様
まちづくりも、林業も、木材業も、最近は、建設業も根っこは、同じ問題を抱えているんだなあと感じています。
やることは、わかっているのに手を付けない。不思議さを感じているのですが、どうやら、過去の栄光(何もしないでもお客が来て買っていく時代)が再びやってくると思っているようです。
それでもどんな業種でも今からは、闇雲に動いていたらうまくいくようなギャンブルはなくなって、マーケッティング力とオリジナリティで勝負しなければならなくなっています。
全国販売をして、感じたことですが、震災以降、鳥居の注文が激減しました。自粛の影響でしょう。でも、弥良来杉の問い合わせが静岡県からは、急増しているんです。地震に強い県という自負があるのでしょうか?ニーズを分析するのも大切なことだと思います。
投稿: 海杉 | 2011/04/15 07:41
大手には難しい品揃えと、高齢化など客層の変化。この二つのキーワードは、商店街や林業以外にも使える気がします。
その根幹には、ニーズを把握するマーケティングが欠かせないのと、同時に「お客様」に寄り添える(客の立場になる)かどうかが重要と思えますが……。
それにしても震災で鳥居の注文減りますか。むしろ増えるかと思ったのに(^^;)。静岡、自慢してよいいぞ!
投稿: 田中淳夫 | 2011/04/15 10:54
普通のビジネスの世界では今や「ユーザーのニーズ」というものは
存在しない、「ニーズ」は”探し出すもの”ではなく
”自らが生み出すもの”と言われています。
海杉さんの言われるように闇雲に動いて簡単に成功する時代
ではないですね。
社会にあふれる商品の中から「自分の商品」をユーザーに
選んで頂くには最低限「自分の商品」立ち位置を知る必要、
いわゆるマーケティングの必要があります。
木製品、特に建築材、内装材は他との区別、
差別化が難しいものの一つだと思います。
例えばA社のフローリングとB社のフローリング、
樹種、サイズ、加工の仕様など全く同じであれば、
梱包をほどいて混ぜてしまえば
どれがA社の商品かB社の商品か
解らなくなってしまうのではないでしょうか。
自分の商品を選んで頂くのは簡単ではないですよね。
ユーザーを甘く見てはいけないですね。
投稿: スポット | 2011/04/15 10:55