林業界はNPO?
連休なんだから、ブログも休もうかと思う。
だいたい、ここ毎日、裏ブログも含めて2本も書いているんだから。
とはいえ、今日は徒然なるままに。
NHKのアニメ「もしドラ」を見ていて非営利組織(NPO)を説明を聞いているうちに、思ったのだ。林業って、NPOじゃない? と。
つまり、現在の林業は実質的に利益を上げていない。補助金がなければ成り立たない業界だ。つまり非営利組織なのだ。それを無理して産業だ、ビジネスだ、株式会社だ、という体裁を保っているから齟齬が起きているのだ。
そんな似非・営利組織である林業団体が、それでも存続するためはNPO的発想を持ち込まないといけない。
ドラッガーは、NPOの運営に欠かせないのは、使命感と情報公開だと言っている。
儲からないのに仕事をやり続ける原動力には、使命感が必要なのだ。働く人にとって、十分な報酬はなくとも、世のために役立つという気持ちがあれば持続できる。(もちろん、そこそこ維持する収益・報酬は必要だが)
ただ、使命感を維持して、一人一人のモチベーションを高めるには、ピラミッド型組織ではいけない。ボスが待遇面で十分に報いてくれないのだから、上司の言う通りに動かないのだ。
そこで情報を全員で共有して、同じ使命感を持たねばならない。さもないと、上に従い、仕事に従事する動機を維持できず、雲散霧消する。
実は、日本のNPOの多くは、そこに気づかず、一部の人間が情報を占有するだけでなく、理念も運営方針も全参加者の納得を得ないまま決定して運営している。だから、あっと言う間に分裂するのだ。(たいていのNPOは3~4年目に分裂・脱退者を出す。)
林業界も、すでに似た状態になっていて、従事者の生産効率は低いままだ。機械化を進めてもモチベーションが上がらないから、全然生産性は上がらない。
それどころか理念もないがしろにして、林業作業が森林環境の破壊につながり、やる気を失せさせる。そして経営者の独断専行も目立つ。だから、従事者の勤務年数は短い。勤めて3年続くのは半数以下と言われるゆえんだ。
まさに日本の林業は、悪しきNPOなのだ。
一方で、林業界の没落の原因は、顧客に顔を向けていないことにある。エンドユーザーが何を求めているか知らないまま、木材生産をしているから、供給と需要のミスマッチが起こり、価格は上がらないし、ロスばかり出して経営を悪化させてきた。
もし林業を、しっかりした産業、ビジネスにしたければ、NPO的経営から離れて、顧客満足を追求しなければならない。そして従事者の待遇を改善して、効率を高める。
あるいは、NPOに徹して、従事者の使命感を高めることで維持するか。こちらは労働満足度を上げる必要がある。地球環境を守り、地域経済を支える高邁な使命感を持ちつつ、具体的な目標設定によりモチベーションを高めるのだ。
今の日本林業には、顧客満足も労働満足もない。最悪の組織ではないだろうか。
根本から、林業組織のマネジメント論を考えねばならないなあ。
もし、私がそれを確立し、「林業マネジメント」という本を執筆した時には、私を「林業界のドラッガー」と呼んでくれ(^o^)。
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この春、東京からUターンしましたが、昔、縁のあった林業関係に就業するかどうか迷ってます。
おっしゃるように、正に「顧客満足も労働満足も低い」業界。
森林組合職員or作業員を考えていましたが、5〜10年先の未来に全く光が見えない。
さて、どうしたものか•••
投稿: 島崎三歩 | 2011/05/05 14:36
↑二重投稿、大変失礼いたしました。
投稿: 島崎三歩 | 2011/05/05 14:41
”顧客満足”とは少し違うかもしれませんが、
近所のそば屋では「ゴミを増やさないために・・・」
という文句で”割りばしは止めました”、
と張り紙があります。
つまり、顧客の関心は、”間伐材”うんぬんより、
”ゴミ問題”の方が高い?
その辺も踏まえての林業の復興だと思います。
(新書、大変興味深いく読ませてもらいました)
投稿: くらとむ | 2011/05/05 17:43
顧客満足と労働満足とは別次元に、「経営者満足」というのがあるんですね。唯我独尊で、今の経営に満足している。
割り箸を止めて、ゴミを減らすのは、経営者満足でしょう。
あっ,二重分、削除しておきました。
投稿: 田中淳夫 | 2011/05/05 18:39
ありがとうございます。
しばらく林業から遠ざかっていたのですが、最近、林業関係の本を読み直しています。
以前から拝読しておりました
『「森を守れ」が森を殺す!』(洋泉社版 サイン入り!)
『刈って燃やせば「森は守れる」』(こちらもサインいただきました。ありがとうございます!
『だれが日本の「森」を殺すのか』
に加え、新たに9冊、田中さんの御本を大人買いしました。
(田舎の書店ではそろえるのが大変なのでアマゾンで)
特に、「森林異変」は、最新の林業事情が取り上げられており差興味深かったです。
この10数年でずいぶん変化があったんですね。
100haの皆伐って、、、伐採届どーなっとんじゃ?
田中さんの御本は、自分にとっては林業を考える上での羅針盤となっております。
今後も良いお仕事をなさってください。
投稿: 島崎三歩 | 2011/05/05 21:57
9冊、大人買い!
もう表彰したくなるほどの快挙(笑)。
私も悩み悩みしつつの執筆です。ぜひ現場で「林業の現実」を確認してください。そして、私にチクッてください(^^;)。
投稿: 田中淳夫 | 2011/05/05 22:24
うーむむむ・・・全くしっくりきました。
実のところ、使命感のみで体を動かしているような・・・(だって、利益が伴わないのに仕事は山積み!)
ところで、ひとり従業員を募集したいんですが、『使命感』が大盛りで林業に毒されていない若い人ってどこに行けば見つかりますかねー?
「林業マネジメント」予約しますので宜しくお願いします。
投稿: doppo | 2011/05/06 07:07
doppoさんの使命感は、おそらく個人で培ったものですよね?
本来の(ドラッガーのいうところの)使命感とは、全課員が情報を共有し、同じ理念や目標を持つところから生まれるものだと思います。いわば全員が経営感覚を持つ。
使命感大盛りの若者を探すより、別の「餌」で引き寄せた人に理念を植えつけ、使命感を持たせる方がよいと思いますよ。
「餌」って? 給与などの待遇が無理なら、重機で遊べるよ、自然がいっぱいだよ、おもろい仲間がいるよ、可愛い娘を紹介するよ……なんて。
投稿: 田中淳夫 | 2011/05/06 08:54
僕の場合、ストレートに言えばまず給与ですね。
家庭も持てないような給与の職場には、人はそうそう入りません。
投稿: 島崎三歩 | 2011/05/07 00:16
家庭を持てる程度の給与は、絶対に必要ですよ。
高邁な使命感に基づき、そこそこ儲けて、よい森をつくる。
そこそこ儲けないといけない。が、そこそこしか儲けてはいけない。
ごくまれに「たっぷり儲かる」林業事業体があるけれど、その施業は山を荒らしてしまいます。持続的になりにくい。
そして「そこそこにも儲からない」事業体の場合、従業員の士気が低くなり、よりよい山にはなりにくい。
投稿: 田中淳夫 | 2011/05/07 01:21
おっしゃるとおりだと思います。
何事も「調和•節度•バランス」ですね。
、、、なんて、年取ったのかなあ、自分
投稿: 島崎三歩 | 2011/05/07 10:57