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森と林業の本

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2011/06/15

森林組合の闇

和歌山県の本宮町森林組合が、18人の作業員中10人(内9人が緑の雇用)を解雇した件、波紋が広がっている。

私は、もう少し事態の推移を見守ってから……と思っていたが、どうも膠着状態のようだ。

情報としては、あくまでニュースで流れた以上は知らないのだが、ようするに森林組合の経営が苦しいと言って首切りが行われたわけだ。大半は「緑の雇用事業」で地域外からきた、いわゆるIターン者というところがミソ。家族で移り住んで、いきなり仕事を奪われたのである。

直接のきっかけは、補助金制度が変わって、伐り捨て間伐が難しくなり、仕事がなくなっかたらだというが、そんなこと昨年のうちからわかっていたこと。何の対策も取ってこなかったのだろう。いかに森林組合の経営が、先を読んでいないか示している。しかし、本当にそれが理由だろうか……。震災で仕事が減る、なんてトンチンカンな理由も上げているらしいが…。

退職させられたメンバーは、記者会見を開くとともに謝罪と再雇用を求めている。

が、「解雇ではなく、希望退職」と組合側は言うのだから(だったら、なぜ記者会見までして抗議するんだよ)、まったく平行線である。

ただ、正直私には「そら、始まった」と思ってしまった。

「緑の雇用」制度が、制度としてオカシイ点はいくつか指摘できる。が、本当の問題点は、制度ではなく運用者、つまり受け入れ側だろう。

緑の雇用とは、「主に町の人を林業に引き込み、それによって林業の人手不足を補い、移住してもらうことで過疎の解決にも結びつける政策」である。しかし山村側(主に森林組合)は、そのことを理解していないケースが多い。

だから緑の雇用名目で雇うのも地元の人だったりする。一度首を切って、「緑の雇用」として雇い直すのだ。その方が待遇もよかったりする。

受け入れ側が求めているのは、人ではなく金なのだ。補助金の期間が過ぎたら、雇い止めするのはよく聞くし、給与の減額だって起きている。なかには、「雇ったことにする」話だってある。幽霊緑の雇用だ。ほとんど犯罪行為である。

今回のケースも、その延長だろう。問題は、雇い止めの対象が、ほとんどよそ者であることだ。高齢の地元の人を残して、よそからきた若い人を首切りする。
地元民なら家もあり、田畑も少しあったり仕事を紹介してくれる人脈もあったりと、なんとか食べて行けるが、Iターン者は仕事がなくなったら死活問題だ。住居も失う可能性も高い。

実は、ここに本質があるような気がする。

彼らは、本気で林業技術者を増やしたいと思っていないし、地域に若い人口を増やす気もない。実はよそ者が嫌い……。これが本音ではないか。

森林・林業という長いタームで存在する世界に従事するのに、近視眼的な経営。むしろ、先のことは考えたくないのかもしれないなあ。


   

そういえば、お隣の新宮市森林組合。熊野古道という世界遺産指定区域の森林を無断伐採して大騒ぎになっているが、実は動機が定かではない。それどころか、誰が命令したのかさえ明らかにしていない。

命令者や実行者が誰かわからないはずはないのに、あえて口をつぐんでいるのか。伐って得する人がいるとも思えない。きっと裏がある。

なんか、闇の世界だ。

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林業・林産業」カテゴリの記事

コメント

大変なことになってますね。

即戦力の人ばかり集まれば良いのでしょうが
そうも言ってられないはずなので、
受け入れ側も人材を育成するんだという気概を
もっと持って欲しいですね。

勤続7~8年と言えばもう立派な戦力でしょうに、
そういう方たちを解雇とはねぇ。

なんとかならないもんでしょうかねぇ。

直接の理由はともかく、何か裏事情があると睨んでいます。

それにしても、真正面から向き合わない田舎の体質が出ている。経営危機なら、徹底的に議論して解決策を探すのが先なのに、安易に作業員の首切りに走る。

果たして組合長以下、職員の首切りはしているのかな。給料どれだけもらっているのか。

こんな話を聞くと、ますます林業関係に従事する気がなくなります(´・_・`)

これは森林組合の問題というより、林業界の雇用形態の問題、あるいは田舎社会の意識問題ではないかと言う気がします。

世間一般がどのように見るか、切られた人がどんな反応をするかという想像力があったら、こんな無茶はしづらいと思うんですがねえ。

今回のように分かりやすい解雇なら作業員も抵抗できますが。

給与のダウンや、職場環境の変化や悪化によりワザと自主退職するように仕向ける・・・なんていうのはどうすれば?

これを機に雇用環境が良くなればいいのですが、そういう悪い方向に向かわない事を祈ります。

職員は役職を増やし待遇を厚くし、それを末端の作業員は後に人づてで知ることになる。
あくまで作業員は蚊帳の外。

職員がいて、社員がいて、作業員がいて・・・って。
人から「組合の社員なの?」って聞かれたり、

「あなたの職業は?」って聞かれて
「森林組合の作業員です。」って言うと
「組合の社員か〜。」って返ってくる。「いやいや、社員じゃなくて〜作業員です。」って言うと「でも保険とかあるし、バイトじゃないんだし、社員なんでしょ?」
も〜!どう答えて良いのか・・・正直自分でも上手く正確に説明できないんです。

一般の常識とはかけ離れた複雑怪奇な組織です。
呼び方が違うだけで社員、下請け、パートみたいなことなんでしょうか???

そう、じわりと待遇悪化が進んでいるように聞きます。

作業員の位置づけは、事実上一人事業主と見なして、請負として仕事をさせているような感覚じゃないですか。でも、命令系統はあるわけだから、いわば「擬装請負」。
これは厳密には、違反ではないのかな。保険に入れていないところもあるらしいし。

職員・作業員の区別をなくす改革が必要です。

ある組合の例です。

事務職(月給)
事務職兼技術職(月給)
月給作業員
日給月給作業員
臨時雇用(保険あり)
で作業員系は4パターンとなっているそうです。
この中で、日給月給は自分の都合(家業=農業や自分の山の作業)の関係で、働き手側から完全日勤よりも日給月給を求める事情もあるようです。農繁期とかは家業を優先しなければならない、優先したい事情があるということです。

臨時雇用は、組合のほうから依頼をするけれども、請負ではなくあくまで臨時雇用(スポット的)の形態なのだそうです。

参考になれば幸いです。

 いつもコメントしませんが、ほとんど欠かさず読ませてもらっています。

 本宮町森林組合では、組合長(常勤)は月給15万円だったのを10万5千円まで下げたとのことです(地元紙)。

 個人のブログにはどう書いても自由なのかもしれません。でも本宮町での事実関係はよくわかりませんし、また実際にあったことを書いているのかもしれませんが、一括りで組合(職員)と作業員がすべて対立している(搾取する側とされる側)かのように決め込み、バッサリと切るようなコメントにはそこに身を置くものとして賛同できません。不愉快です。
 いまどうやって雇用を維持するか苦悩している森林組合も多くあります。

 A社の首切りが報道された場合「A社の闇」というお題で書かれますかそれとも世の中の会社をひっくるめて「株式会社の闇」というお題で書かれますか?

 林業界また森林組合全般を見渡して、たださなければいけない事は多いのだと思います。でも、森林組合の事業がいま補助金なしで成り立たないのも事実です。森林・林業再生プランは理想的なことを謳っていますが、政治主導だといって、現場のことなどよく考慮せず、肝の部分「フォレスター」はおらず「森林経営計画」の内容も決まらないまま、あまりにも急いで制度だけを変えています。
 ここに、この悲劇の直接の原因があると思います。

久々に危ない話題を取上げましたね。

これからの取材がやりにくくならないかよ少々心配になりました。

正直なところ政治と同じで、林業組合もこの機会に年齢層的にも入れ替えなければ自然消滅の組織ですね。

旧態で良いと信じている人たちの目を覚まさせて、利害関係のない世間の人たちからの批判を浴びて、生活ができる本当の林業の産業再生化する最後のチャンスです。

ゴルフ場という分野が広がったから、ジャーナリストとして衰退産業の維持勢力と闘うのもひとつの選択かも知れません。

「不愉快」だと指摘されれば、ごめんなさい、残念です、というしかありません。
ただ、私が記したのは、これまで見聞してきた森林組合の内情話ばかりです。そして主題は、制度よりも運営者の責任と心構えです。

経営が厳しいのは一般企業も一緒。経営責任・雇用責任があります。リストラするなら、本当に理と情を尽くして話し合っているのか。とくにIターンの場合は、単に職を失う以上に生活に甚大な影響が出ます。にもかかわらず、なぜ彼らの多くが切られたのか。(記事によると、地元の人で切られたのは一人?) それほど能力の差はあったのか。
私は、一般企業やNPOでも、雇い止めには、かなり厳しい目を向けていますよ。


『森林異変』を書いた時点で、既成の林業関係からの仕事を失うかも、という覚悟はしていますよ。ゴルフ場関係の仕事なんて、ほとんどないけどね(^^;)。


 謝らせてしまうなんてすみません。
 田中さんのおっしゃる通り、大勢の人間を抱えて経営責任・雇用責任というのがあるので、いま苦しんでいます。
 このブログを見ている林業関係者も多いと思いますので、「どこもかも酷いところばかりじゃなくて、何とかしようともがいている森林組合がいくつもあることも言っておかないと」と思いつい熱くなって、失礼ながらコメントさせてもらいました。
 これからも、私たちと違う目線で見た林業界についてのお話、毎日楽しみに読ませていただきます。

森林組合でなくとも、次年度の補助事業が取れなさそうだからと、年末に天下り以外の職員の首を切る、天下り系財団はありますよ
わたしら、その口ですわ。

全国どこでも、ある話なんでしょうね。企業でないところは。

経営幹部、職員、作業員。それぞれ立場の差はあるでしょう。

A森林組合さんが、どの立場でおられるのか存じあげませんが、私はもっとも弱い立場から見ていきたいと思います。
経営体の最大の資源は人材なのですから、それを失うことがもっとも危険です。
とくに山村では、新たな勤め先を見つけるのは至難の業だから、雇用維持が最重要です。私も神経質になります。

ただっちさんは、うまく新たな勤め先を見つけましたね(^o^)ホッ。

いっそ、森林組合も作業班に森林簿情報や現場の権限を委譲する形で分離独立させる手もありえるかもしれません。そうなると、作業員も自己責任で経営しなければなりません。
そもそも森林・林業再製プランも、それを狙っているわけです。

こちらの森林組合は、捨て伐り補助金と電力会社の請負仕事にどっぷり漬かっていたおかげ(笑)で、地元の兼業農家を季節労働者として雇用するのみで人材育成に取り組んでいませんでした。それら作業員の高齢化が進み、50代は若い衆と呼ばれています。
和歌山のように雇止めしなければならない人材がいないので、ある意味でリスクヘッジされていたのか?と思うほどです。
しかし、というかなるほどというか、市内3組合中二つの森林組合が森林経営計画を作成せず、集約化に取り組まない(取り組めない?)という姿勢を明らかにし始めました。
勇気ある決断に敬意を表します。(笑)
これからは我々の時代になりそうですよ。
冗談で、協力してくれる地権者を数名集めて新しく森林組合を設立しようか、などと言っているところです。

そして(それでも)、木は静かに生長を続ける。

ここのブログで繰り広げられる諸説・ご意見を拝聴しますに私は各々に、『ごもっとも』と頷けます。

刈ることを前提にして植林した訳ですから時期が来たらば『収穫』せねばならないのでしょう?!
植林は、山のてっぺんや急斜面にも見られます。・・・植林した人は斯様な場所でも『収穫できる』と思ったのでしょう。機械や高性能林業マシンを使わなくとも林業を実演する様子を三浦しをんさんの小説で見ました。政府の唱える林業再生プランもさることながら何か別な方法で林業を推進できる道があるような気がしますが、『別な方法論』が論議されない状況は、『変』です。

「集約化に取り組まない」宣言をしたとしたら、勇気ある決断ですね(笑)。
もちろん、それでいいのです。ただし、それに代わる経営方法はあるのか、ということです。当然補助金はなくなるわけだし。

有志の森林所有者で新たな「森林組合」を結成するという選択肢も、当然出てくるでしょう。
その意味では、今回の政策は、自立を促す呼び水になるかも。

既存の森林組合が、若返りも促さず・人的機械的投資も行わず・集約化にも目をつむる・・・としたら、残される道は組織の自然消滅か吸収合併か、ですかね?
問題は、組合なんか無くなったとしても、地域の人工林は残り続けること。
かつて『収穫できる』と信じた先人たちの思惑は残念ながら崩れ去り、次なる目標の設定を迫られている時期だと言えるでしょう。
経済林としての認識を改め、手塩にかけた森林を『のこすこと』にシフトしつつある地主さんも見受けられます。本音では違うでしょうが、山からの利益で潤うことを諦めていますし、そもそも森林への愛情のない身内に相続させること自体気が進まないようですよ。
僕らの仕事の一つに、地主の臨終のその瞬間『あとは頼む』と言ってもらえるような心のケア、「森林愛」のバトンタッチがあるような気がしています。

時代の流れに棹さすこと自体は、「勇気ある決断」なのですが、次の一手を考えているのかどうか……本当に狙うのは合併かもしれませんね。もっとも、できる相手がいるのか?


森林愛に応えるためにも、何か、誰かが動かないと。少なくてもそれは国などの行政じゃないと思う。

森林組合の仕組み、経営の仕方など調べてほしい
組合長の給料は57万もあるのに、作業班の日給が1万にもならないのはおかしいと思う

私も、作業員の日当を切り下げているのに、組合長は年収1000万円をキープしているケースを聞いていますよ。
でも、このコメント欄にあるように、組合長の給料を10万円まで下げて四苦八苦しているところもある。千差万別です。

ともあれ、「これまで通りの経営」は通用しなくなったのは間違いありません。

ここのブログは森林組合について討論する場でしょうか?
森林組合で働く人の待遇が肩書きで差別されているってことですか?
僕は変だなぁ・・・って思っています。
このブログに書き込みできるならば森林組合に限らず、多くの組織、会社等々の情報がその気になれば欲しいだけ手に入るはずです。
早い話がどこの組織でも肩書きで責任の度合いも違い、報酬が違うのは当たり前のことではないでしょうか。
森林組合だけですか?僕が聞きたいです。

自分は兎を追った山も無い小鮒を釣った川も無い自治体で建具屋を営んでいるんで、森林組合の事は人からの見聞きや文献(田中さんの著書も数冊ありますよ)からの知識しかありません。
けどが、直前の田中さんの返信でも書かれてる様に、きっと組合ごと千差万別なんでしょうね。ただ、全ての森林組合は恐らく無限責任の組合ではないでしょうか?
自分は友人に債務をどうにもならなくなった建具組合員が居ます。組合を解散する最期は悲惨でした・・・

国有林の切捨て間伐が主な収入源の森林組合も自分の知識の中では存在しています。
補助金が切捨て間伐から利用間伐になった場合、債務が膨らむ組織もゼロではないでしょう、その時の責任は無限に取らなければならないということ。その組合の構成員の皆さんがそこまでご存知かどうかはお聞きしていません。

田中さま、そもそものおっしゃりたい事とかなりベクトルがずれたコメントをしてしまいました、すみません。
けどが、どうやら、このスレッドは今後、かなり長丁場になってしまうんではないのでしょうか・・・

何時かは参考人として国会議事堂の本会議に持って行って下さい・・・!?

この場は私が思うところを記すブログであり、討論の場とは思っていません。ただコメント欄の応酬は、とくに制限はしていません。

森林組合に勤めているという貴君は、まず立場が職員か作業員かをはっきりさせるべきです。この二つは「肩書」でもなければ役職でもありません。雇用形態の差です。
もし作業員でありつつ、日当払いでも有休がなくてもいい、雇止めも仕方ないと思っているのなら、それはそれで結構です。

この項目で指摘したかったのは、3つあります。
まず森林組合の経営。補助金の内容が変わったからと言って雇止めすることの経営責任。
次に幹部、職員、作業員の待遇の差。
そして、雇止めに「緑の雇用」者が異常に多いこと。
これらの問題を解決せずに、日本の林業の近代化はないと考えています。

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