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2011/06/02

草木塔を、今

東北には草木塔がたくさんあるのに、奈良には少ない

そう指摘するのは、御年91歳の老研究者である。若き頃は海洋微生物学の教授を勤め、退職してからは郷土史の研究に勤しんだ。郷土とは、奈良県吉野郡天川村洞川である。修験道のメッカにして、石灰岩層が広がり多様な自然をほこる山里だ。

以前より、古い文献をいただいたり、こちらから提供したりと交流を続けさせていただいているが、「身辺整理をしているが、土倉庄三郎に関する記述がある資料があった」と連絡を受けた。吉野の古老の日記である。もはや自分で解読する時間がないので処分するが、欲しければやる、というので受け取りに訪れた。

そこで出たのが、上記の言葉。

草木塔とは、「草木供養塔」、「草木供養経」、「山川草木悉皆成仏」などと自然石に刻んだ碑のことで、ようするに草木の命を供養する碑(塔)である。

全国に160ほど発見されているが、その9割が山形県にあるという。

日本は、仏教思想の影響で肉を食べず、動物の命も弔う風習があるが、それが植物にも広がったものなのだろう。樹木から木材を取り、草を食べたり薬にしたりと利用することに対する感謝の現れである。

奈良は、仏教伝来の地であり、大寺院が建ち並び、幾多の僧がいた。そして昔から木材や薬草の産地だった。にもかかわらず、草木塔を建立する発想は生まれなかったらしい。

現在のところ、奈良には4つあるが、そのうちの一つは、この老人が建てたもので、あとの3つも戦後建てられた。

山形には、江戸時代に建てたとわかるものだけでも30幾つかある。

「奈良には、万葉集の歌や俳句の碑ばかりあるが、むしろ植物が豊富ゆえに草木に感謝する発想がなかったのではないか」という。東北は、飢饉も多く、雪の冬さから春の芽生えを感じて草木への思いが強かった……と想像する。

ちなみに山頭火には、「草木塔」という句集もあるそうだ。

しかし、草木塔の心には、採取した草木の鎮魂や山の恩恵への感謝、そして山仕事の安全を祈願する面もある。林業地には、あってしかるべきものではないか。
また、環境環境とかまびすしい昨今だからこそ、草木に思いを馳せるきっかけに碑を建てるのも悪くないだろう。

 

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コメント

山形でも置賜地方に集中していますね。(米沢とか。)

草木塔ツアーというのもあるらしいですよ。
(ちょっとそそられるなあ。)

おおお、草木塔ツアー!

これからは、SOUMOKUTOを世界に広める時代が来るかもしれない。自然環境を大切にする精神のシンボルとして。
MOTTAINAI、SATOYAMAに続け。

郡上は白山信仰があります。長良川を美濃から上がってくるのに、谷越え山越えで危ないところもあったらしく、いまでも旧道には草木ではないですが、谷に落ちた馬も多かったのか馬頭観音が結構残っているそうです。

たしかに岐阜県だったと思うけど、馬頭観音を見た記憶があります。生きとし生けるものへの感謝という思いは、全国にあるようです。

しかし植物にまで目を向けたのは、日本くらいかもしれない。

この記事とは関係ないのですが、土佐の森救援隊のブログに田中先生のブログが紹介されていました。
http://mori100s.exblog.jp/

ありがとうございます。

でも、これはブログ記事をそのまま引用なんだな。いつ、どんなタイトルで書いたかによって意味が違ってくるんだけど。
ちなみに2008年7月に書いた「林業の逆襲」でした。

ついでに、私の名前、間違っているし。

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