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2011/06/23

吉野の間伐技術~あるいは職人と研究者の仕事

ちょびっと、長いタイトル(^-^)。

ツイッター上のつぶやきから、貴重な資料が手に入った。

『造林時報』というマニアックなニュースレター?(年4回発行だから、全然時報じゃないけど)である。ここに「吉野林業地におけるスギ人工林の密度管理」という連載が続いている。筆者は、島根大学生物資源科学部の高橋絵理奈・助教

この記事(論文ではないらしい)は、美しい人工林をつくる技術(主に間伐)を解明する、間伐木の選定基準を明らかにするという目的で研究を始めたという。そして、東吉野村の林業家・垤忠一(ありづかただかず)氏の技術を記録している。

それが興味深い。その技術は、代々山仕事に携わってきた人が、長い経験の中で身につけた選定基準である。いわば職人が身体で覚えた技術である。職人は、技術を理屈で身につけるのではなく、試行錯誤も含めて、経験によって心身で読み取る。だから、一般人にはわかりにくい。とくに職人は口で表現するのになれていない。

だが、この記事では、筆者が職人からその技術を聞き取って、一般に通じる「基準」として示している(示そうとしている、かな?)。これこそ、研究者の仕事だろう。目に見えない職人芸に見ほれているだけでは、研究とは言えない。

つまりこれは、「美しい人工林」づくりの秘密を白日の元にさらす研究である! ちょっと大袈裟か(笑)。 

と、煽ったところで、どんな結果が出たか、思い切り簡単にまとめてしまおう。

まず、樹勢のある永代木(伐らない木)を選ぶ。

その木の生長を止めないようにする。

美しい森林(人工林)とは、木の太さ、長さ(高さ)、が揃っていて、木の間隔も揃っていること。人が手入れをしていることがわかること。

つまり、間伐の選定は、これに沿って行うのだ。具体的に伐るのは、

①いい木の害になる木(山側にある木、谷側に曲がっている木)
②間隔を空ける(三本立ちの真ん中など)
③生長の悪い木(樹冠の形が悪い、暴れ木、傷のある木)

もちろん、これは一人の林業家が経験で身につけた基準だろうが、おそらくほかの林業家の技術と比べても、大きく外れていないだろうと思う。

本当は、もっと細かく森林の樹幹密度の景観とか、細かな技術を記録し、さらに多くの名人の聞き取りをして、共通項を拾い出すなり、言葉にならない基準を読み取ることで、普遍的な法則にしてもらいたい。
それが突き止められれば、「美しい人工林」をつくる技術を次の世代に受け継がせる際の有力な武器になるだろう。たとえば40年山仕事をしなければ身につかないとされた選木技術を、10年以下で身につけられるかもしれない。

同時に「美しい」という感覚的な言葉を、客観的な数値と理論に置き換えることができるかもしれない。しかも、この美しい人工林の森林生態系とか、生物多様性を調査すれば、美しい森=自然豊かな森であることを証明できるだろう。
ついでに収穫された吉野材の価格が高いことも示せたら(今は厳しいけど……)、美しさ・環境・経済性の三拍子揃った人工林の可能性が導き出せるのではないか。

これこそ、職人と研究者のコラボレーションである。

う~ん、ちょっと大風呂敷広げたかな。

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コメント

実践的に確立された技術を理論で説明する。そうか、今は逆だから現場で使えない理論が多すぎるんだな(笑)

研究者もそういう役割なら、もっと出資してもらえると思いますよ。御用学者という意味ではなく。

なるほど、今は研究者の立てた理論に、現場が合わせようと四苦八苦している状態と見ればわかりやすい。

本来は、現場(事実)をていねいに収集して分析するところから始まるべきだけどな。

技術保存の面からも、記録はしておかねば。焚きつけておこう。

田中様
とたんに暑くなりました。蒸し風呂のような、暑さです。
美しいや美味しいなどの曖昧な基準は、難しいかもしれませんが、出来ることによって、格段に進歩すると思います。
ある料理研究家は、名人とよばれる料理人の料理に使用する材料を徹底的に数量化したそうです。例えば、指でつまんで、鍋に入れる塩さえも、いったん、秤にかけたそうです。次は、時間と・・・。こうすることで誰もが手軽に名人の味を楽しめるようになったそうです。
条件がきちんと揃えられるなら、この方法でも構わないのですが、一つ一つ、条件が違うものなのに付けの刃で統一マニュアルを作ってしまうと返って、弊害になるものです。
美しい人工林を子どもたちに見せたいものです。

美しさの基準を決める、数値化する、などというと、感性は個々人のものとか、それこそお役所仕事で定義づけた途端に形骸化すると指摘されるんですが、それは考えすぎ(^o^)。
そんな画一的なマニュアルをつくろうとするのではなく、いわば職人芸を身につける手順を探るようなものです。

だから基準の中に変化がある。幹の太さを均一にすると言っても、何センチ幅か? なんて思わない方がいい。それこそ感覚的に得るものだと思いますよ。

なんとなくですけど、実態は全く知らないわけですけど、ジャ○―ズやA○B48のプロジュースとか管理手法とかを髣髴してしまいました。一人一人の個性を重視しながら編成や間引きをして世代交代まで・・・・・。

そうすると販売はプロモーションになるわけですが。

 でも、山の場合はずっとそこにあるわけですし、人間以外への影響などもあるし、終わっちゃうわけにもいかないので、違いますよねえ。

 人間の都合だけで、管理側の都合だけでやるわけにもいかないですし。

 それにしても、ずっと人の手が入っている山は美しいし、そこにいるとせいせいするし、お茶を飲んでも格別な木がします。
 しかも、ずっと同じ人が手入れをしてきているわkではなさそうな林齢。
 昨日は、仕事中にもかかわらず、しばらく山の中にいてしまいました。木工屋さんとの打ち合わせだったのですが、建物の中で話をするより、ずっと気持ちよくブレストできたような木がしました(数か所蚊に刺されましたけど)。

将棋でも定石があります。それでも千変万化の手がある。
自然をマニュアル化すること自体不可能なことで、大枠を決めるのが精一杯。その中で、いかに個性を伸ばすかが美しく感じてもらい、人気を保てるかの決め手じゃないでしょうかね。

細かいところに突っ込むと将棋は「定跡」で,「定石」は囲碁です.どちらにしても,長い歴史の中で一流の達人たちが経験上創り上げてきた最も駒(石)の効率のよい美しい戦いとその結果としての形です.

ただ,定石や定跡に従っているかぎり形勢が大きく傾くことはないのですが,有限の盤面を使っている限りかならず駒や石がぶつかり始め定跡・定石が通用しなく成る局面がでてきます.そこからは本当の創意工夫.

基本的な定石・定跡は貴重な文化遺産(?)として長年伝授されてきています(もっとも,それとて研究の進歩により年々少しずつ変わっています.ちなみに変えるのは主に若者).それと同時に定跡・定石が通用しない創意工夫の場面で何をいかに考え実行するかという態度・メソッドも先輩から後輩に受け継がなければなりません.

森林産業における定石・定跡の確実な伝播,そして現場において最良の結果をだすための,これら定跡・定石から外れた部分での創意工夫の方法,このどちらも貴重な知識遺産として森林の世界で残してほしいものです.

定石・定跡……さすが、あがたしならではの細かなツッコミ(笑)。

定石外しを考える、新たな定跡づくりをするにしても、過去のそれらを学ばねばなりません。さもないと、膨大な遠回りを求められる。独りよがりの勉強になり、もしかしたら「残念な人」になりかねない……。

残念ながら、森林世界では、そうした職人が身につけた技術を記録するような研究者は、あまりいないようです。

いただいたDMに返信しておらず,失礼しました.

ご感想,ご意見を伺いたく思っておりましたが,ここにこうして読むことができました.ありがとうございました.高橋にも伝えておきます.

森林科学(林学)の分野でも,彼女のような研究をしている人は少なくなってしまった感があります.
まだ若い研究者ですので,これからの研究にも期待していただけると思います.

今後ともご指導,ご鞭撻のほど,よろしくお願いします.

ここは「思いつき」で書いているので(^^;)、失礼があるかもしれませんが、高橋さんに御礼と感想はお伝えしています。

職人の目に見えない技を、科学的にしっかり記録し分析することは非常に重要だと思います。そこから新たな発見も生まれるでしょう。
とくに感覚による分野はなかなか手を出しにくいのですが、これから期待される分野ではないでしょうか。
ただし、森林セラピー的にはならないように…(笑)。

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