福島森林除染計画1~森の恵みを活かした復興
さる7月12日から13日にかけて秋田市で開催された全国知事会議において、「東北6県知事共同アピール」がまとめられた。
そこには、「森林のめぐみを活かした復興」を推進するという文言がある。林業・木材産業の拡充による被災地の復興を訴えているのだ。
考えてみれば、津波によって太平洋岸の漁港・漁船は壊滅状態になり、しかも放射性物質に汚染された水が大量に放出されている。漁業の復旧はそう簡単に進まないだろう。
農業も悲観的だ。米どころの仙台平野も津波で洗われてガレキに埋もれただけでなく海水に浸かってしまった。地盤沈下したところもある。そして、やはり放射性物質がばらまかれたことによって、農作物の栽培・販売は厳しい。畜産も、すでにセシウム汚染した稲藁が出回ったことによる被害が全国に飛び火した。今後、豚や鶏にも広がる恐れがなしとも言えない。
では、自然の恵みで残されたのは、森しかないではないか。幸い林業の被害は小さい。林道などが崩れたところはあるが、すでに復旧が進んでいる。合板工場の復旧も、猛スピードで行われている。森は、被災地の最後の期待をかけられる自然資源である。そう考えると、やはり被災県の復興は、森から行われるべきではないか。
だが、ここでまたもや福島県には艱難が降りかかる。そう、放射能汚染は、森林にも起きているはずだからである。
では、はたして福島県の森林の放射能汚染はどの程度なのか。ホットスポットはあるのか。林業に携わる人は安全なのか。森林から持ち出した木材は汚染されていないのか。そして、森が汚染されているのなら、どのように除染できるのだろうか。
これが、今回の福島取材の目的だった。
折しも福島県では、「環境放射線モニタリング調査」を行っていた。
その結果は、すでに発表されているが、少し紹介すると、
県内を基本的に4キロ四方メッシュにして、空間線量を計測したものだ。ここに示したのは、林内地表から10センチのもの。
青色は線量が低く、緑、黄、橙……となるにつれて高くなる。計測できなかった原発周辺は、真っ赤ではないだろうか。この中では、浪江町の路上一カ所が20μシーベルト毎時を越えていた。
ただ概して言えるのは、ほとんどの森は、0,5μシーベルト毎時以下である。意外なことに、地表50センチ、1メートルでもあまり変わらない。また林内でなく、林道などの路上でも変わらない。森林内が特別低い、高いということはなさそうだ。
つまり、問題となるのは、いわゆる避難地域なのである。そのほかの森は、林内を歩く程度なら心配ないのだろう。ただ、これは空間線量であって、土壌や森の林冠部分はどうなっているのかわからない。残念ながら、伐採した木の樹冠部の線量を計測したデータを持っているところはなかった。
それでも、森林に一筋の光明を見ることができる。林業こそが福島を支える産業になれる希望がある。同時に、汚染地域の除染は欠かせない。とくに伊達市や飯館村など林業が盛んだった地域では、除染抜きに再び人が住むことは難しいだろう。
幸い、伊達市や飯館村だけでなく、福島市も除染計画を策定中だ。その中には、森林も上がっている。もちろん最初は居住地や農地になるだろうが、山林部を捨ておくわけにはいなかいのである。
そこで私は、林業による除染システムを作れないかと考えてみた。
以下、続く。
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続きが早く読みたいです~
屋敷林の除染も、しなくちゃいけないってことですが、これはまた大変そうですよね。
屋敷林の木って、高いですもんね。
投稿: ただっち | 2011/07/23 16:24
屋敷林は、伐採するにしても大変……。
でも、孤立した木が多いから、雨で流される可能性も高いかな。
投稿: 田中淳夫 | 2011/07/24 00:38