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2011/07/12

馬による木材搬出が可能なのは

日本人が、イギリスで開かれた地駄曳き競技会で優勝したというニュースが流れている。地駄曳きとは、馬で山から木材を搬出すること。

http://mytown.asahi.com/iwate/news.php?k_id=03000001107070003

この大会は、山で切った6メートルの丸太を、馬で運んで下ろす競技だそうだが、途中のコースでスラロームしたり、トラックに積み込んだりする正確さを競うものらしい、そこに岩手県遠野市松崎町の岩間敬さん(33)が参加して、なんと優勝したという。(参加者は15人)

岩間さんは、何も飛び入り参加ではない。日本でも地駄曳きを約10年前からやっているそうだ。日本全国で地駄曳きをしている人は7人いるが、ほかの6人は70歳以上……と記事には記されている。
7人しかいない、という書き方だが、私は7人もいたの! と驚いてしまう(笑)。

地方に行くと、地駄曳きのほか、修羅(丸太の滑り台)を使った集材などをまだやっているところがあると聞いていたが、例外的な人だろう、と思っていたから、7人ならかなり多い。

岩間さんが地駄曳きを行う理由は、重機を使った作業は山を傷めるし二酸化炭素を排出するから、という。そして、イギリスに大会があると聞いて乗り込んだわけだ。幸い、馬は現地で借りられたらしい。

このニュースそものもは面白いのだが、ちょっと誤解?うんにゃ意図的に記事で伏せられた(曲げられた)部分がある(笑)。

というのは、岩間さんは正確には林業家ではないからだ。山仕事もするらしいが、木材搬出が専門ではないし、それで食っているわけでもない。主体は、農業である。馬にこだわり、馬で耕した水田で収穫する馬米(うまい)という米の生産販売もしているらしい。つまり、地駄曳きが職業ではない。


 
  

 
 
もっとも、そんなイチャモンを付けるのが目的ではない。
そもそも馬による木材搬出には、どんな意味があるだろうか。

意外なことに欧米では、まだまだ馬による搬出は少なくない。何より低コストだからだろう。また冬は雪があり、地面が凍るから、地駄曳きもしやすい。

だが、もっとも重要なのは、そうした小規模に搬出された木材も、ちゃんと市場に乗せ、ソコソコの利益を還元できる仕組みがあることだろう。不定期に1本2本と搬出された木を買い取り、ちゃんお金に変えてくれるのだ。日本だと、そんな出し方だと相手にされないのではないか。とくに昨今の安定供給・安定品質が要求されるなかでは……。

しかも北欧などは大型機械化した林業がお家芸な地域なのに、ちゃんと地駄曳きと共存させている。大規模と小規模の並立が重要なのである。

しかしヨーロッパの木材市場では、役物と呼ばれる高値取引も期待できない(日本でも、役物は壊滅しかけているが、まだチョー高値になる銘木がたまにある)。それでも、低効率な搬出をペイできる理由がわからない。

それなのに、利益が出る仕組みはどうなっているのか。これを解明することができたら、何も馬による搬出に当てはめなくても、さまざまな応用は効くはずだ。

小規模大林業の仕組みを考えるには、勉強すべきことがまだまだ多いねえ。

追加。

1


手持ちの写真に馬による搬出があった。と言っても、戦前の北海道の林業を実物大で再現したジオラマ。地駄曳きで、こんな大木を出せるのか……。

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コメント

自分(敬〜たかし)が馬に乗ることでみんなが「驚」くような農の仕事、山仕事(田中さんが言われるように、彼は「林業」ではない)を続けていきたい、と言ってる彼ですが、そうですか海の向こうで・・・。
地駄曳きが海外でも行われているとは知りませんでした。

しばらく前に、彼の地駄曳きを体験的に手伝い(というか足手纒いになっただけですが)、伐り出したコナラをそのまま丸材に馬のパドックを作る仕事をさせてもらいました。これなどは生活素材の自給、自家野菜を食べる楽しみみたいなものですね。
小さくて多面的な価値をたくさん寄せ集める仕事モデルの作り方は重心がありませんね。それが良いのだ、という人もますが。
よりは、核となって採算がとれる「業」があって、それを補強する小さな仕事(これももちろん損は絶対出ない出さないさない)がたくさんくっついている。といったような仕事モデルを、つくっていければと思うのですが。
いや農でも。
「低効率な搬出でもペイする理由〜利益が出る仕組みを解明することができたら」……期待してます。

まだ若い方でおられるのですね。山主に営業に行くと、馬で出して欲しいと要求されることがあります。搬出する際に立木を痛めつけないこと、道を大きく作らなくて良いことがメリットのようです。
 先日オーストリア大使館の林業・エネルギー等のイベントに参加しました。その際にスライドの途中に馬で搬出している画が出ていました。タワーヤーダや見たことも無いような搬出機械と一緒に。
 日本のように廃れる理由もある訳ですが、廃れないで現役で行っている理由も知りたいです。
 田中様のブログの情報を楽しみにしております。
 

おお、実際に岩間さんとお会いした人や馬出しを求められる人……からコメントがつくと緊張します(笑)。

まあ、前半はあざとい記事を書いた朝日の記者をからかっただけですが、後半の「低効率でもペイさせるシステム」のヒントにすることが重要です。

せっかくだから、馬出し(地駄曳きとはちょっと違うような気がする……)の写真を追加。これは北海道の資料館の実物大展示。今は、こんな大木を出せねえよなあ(笑)。

へええ。
1本、2本を買ってくれるところがあるんですか。
何かよさげな仕組みがありそうですね。

でも、農家も大規模と小規模が並立可能な国があるわけだから、
腐らない木材はもっと可能かもしれないですね。

 ちなみに、当町の林家も1本、2本とか、1m3、2m3で販売している方がいます。
 ケンタの36センチ上を2本探しておいてくれとか・・・・。

 結構、こまめな対応をするとお客様が・・・・・(これ以上は企業秘密!って、別に秘密ではなく面倒でも、多少コスト的に名ナスになっても小規模大林業ならではの営業行為)。

 極めつけは、40㎝以上のタンコロ1個欲しいっていう注文。ある樹種の形のいい苗木がほしいとか(樹種の名は秘す)。おいおいって思いながらも探してしまったりして。
 地元の森林組合も気にして見つけてくれたりたりします。

 ただし、合法木材証明が必要な流通ルートとかではないようです・・・・。納品書と請求、領収書があればいいって感じの取引。
 小規模大林業はタンコロ1個から!まるで「わらしべ長者」のように!

小規模な林業で利益を上げるというと、どうしても単価の高い木材を売るように思われるんですが、実際は単価ではなく、こまめにユーザーの要望に応えることなんでしょうね。

もちろん、手間がかかるから結果的に高くなることはあっても、材質の善し悪しではなく、ユーザーの求めにどこまで応じられるかが大切なんでは。

うん、小規模大林業の一角が覗けた気がするぞ(^^;)。

10/25-26に遠野馬搬振興会が主催する遠野馬搬研修会で、岩間敬さんが馬搬をされているところを見せてもらいました。1トン級の馬で丸太を出すから、1トンぐらいの丸太を出せるので、1本、2本しか出せない訳ではないようです。

 研修会では、岩手大学農学部の立川史郎先生のお話もあったのですが、その先生のお話では、搬出距離300m以内であれば、馬と機械(トラクタ)では1日に出す量に差がない、ということです。

 馬で出すには新たに道を作設する必要はないので、作業道を作り始めるところをスタートとしたら、トラクタと比べて馬で出す方が経済的で早いのでは、ということでした。

馬搬には未来があると思ったので、コメントさせてもらいました。


 

ご報告ありがとうございます。「遠野馬搬振興会」というのがあり、研修会を主催しているのですね。観てみたかった。

たしかに小回りの効くウマは、作業道を入れずに搬出する場合に有利ですね。どこでも取り入れるというわけにはいかないにしても、十分に可能性はあるのではないでしょうか。
「馬出し木材」に付加価値が付けば、なおよい(笑)。

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