「コクリコ坂から」に登場する緑
ジブリ・アニメ「コクリコ坂から」を見た。
ここで映画評はしないつもりだが、ひと言。これ、大人向きアニメだ。おそらく40歳以下の人には描かれている物語の背景が半分も伝わらないのではないか。40歳以上だって、ある邸と知識が必要だ。
ジブリのアニメということで、子供連れが多かったが、案の定、途中で騒ぎだした。子供禁止のアニメ指定してほしい。
さて、肝心の? アニメに描かれた緑だが(笑)。元造園家の宮崎吾朗監督は、どのように昭和30年代の横浜を描いただろうか。
これまでのジブリの背景とは、ちょっとタッチが違う。あえていうならば、これまでが水彩画なら、こちらは油絵のよう。舞台が都会なので、森らしい森は出てこなかったが、緑豊かな住宅地は頻繁に出てきた。高校も丘の上の緑に囲まれている。
私が一目見て思ったのは、「マツが多いな」であった(~_~;)。庭木などにマツが多く描かれているのだ。さすが、マツクイムシがまだ蔓延していない時代である\(^o^)/。
これは、宮崎吾朗が、深慮したうえで描いた植生なのだろうか。それとも、当時の写真などを参考にしたら自然とこうなったのか。
それにしても、緑が多い街だ。今の横浜にこれほと緑はあるだろうか。そして小さな港町風である。当時だって大都会だったはずだから、何か願望が入っているような気がする。
そして、洋館がやたら出てくる。(主人公の住む家と、学校のカルチェラタンなる部室小屋?は、ともに明治の擬洋風建築である。内部の階段の手すりは、まるでウィリアム・ヴォーリズ設計の建築物のようであった。
だが、部屋の中には畳があって、ふすまがあって、いかにも日本家屋。家具も木製で、(私には)懐かしい勉強机があった。
それにしても、カルチェラタンの3階建ての洋館は、高校にはもったいない(笑)。
なかなかの佳作の小品であった。
« いつ完成? 山国林業の解説書 | トップページ | 間伐・間伐材利用コンクールに、割り箸が入賞! »
「書評・番組評・反響」カテゴリの記事
- 日本ジャーナリスト会議『盗伐』書評(2024.09.02)
- 『山が学校だった』に学ぶ(2024.08.16)
- 女性誌の林業記事も捨てたもんじゃない(2024.08.08)
- 西日本新聞の記事から北海道の盗伐を思う(2024.07.05)
- 『都市に侵入する獣たち』を論じるジャーナリスト宣言(2024.07.04)
夫婦そろって洋館マニアの私が来ましたよ.
横浜・山手は洋館多いですね.数十軒あります.ただし個人邸宅が多いので,一般が入れるのは有料無料含めて10くらいですね.神戸ほどは知られていないと思います.
元町公園からエリスマン邸あたりを見ればわかりますが,山手本通りに登る坂はポテンシャルとしては濃密な緑に覆われるでしょう.ただこの映画の時代の緑がどうだったのかはそれこそ過去の映像をみて斜面地開発の状況を調べないとちょっと分からないですね.
今日根岸線車中で,かなりマニアックな洋館ガイドマップを見ていた中年夫婦が石川町駅を降りてゆきました.もしかしたらこの映画の影響でしょうか.
投稿: あがたし | 2011/08/27 13:13
私は洋館マニアではありませんが、擬洋風建築には興味があります。伝統的な日本の大工が、いかに工夫して洋風建築を真似たか。そして和風と融合させたか。
(ちなみに生駒の宝山寺にも、そんな洋風のお堂がある)
「コクリコ坂から」の風景は、あきらかにマツが多かった。これは意図的でないと描かないと思うんですね。
果たして宮崎吾朗さんの意図かどうかはわからないけど。
投稿: 田中淳夫 | 2011/08/27 22:12
松は駿監督が赤松を入れろとアドバイスがあったらしいです。
投稿: アリクイ | 2011/08/29 06:17
おお、重大証言。
でも宮崎駿氏? それとも宮崎吾朗監督?
いずれにしても、マツが多いのは、意図的であることは間違いなさそうですね。
投稿: 田中淳夫 | 2011/08/29 09:22