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2011/08/23

朝令暮改の林業を推進する

またまた、昔の自分の著作を読み返すシリーズ(笑)。

10数年前の自作の中に、人工林に関して論じていた記事があるのだが、そこでは「人工林は伐らねばならさない」と力説している。

それは、人工林は人間が利用するためにつくった森で、収穫する必要があること。そして、森林としても、適度な間伐をしなければ健全に維持できないことを熱く訴えている(笑)。

だが、最新作の『森林異変』では、「禿山が増えている!」と訴えているのだ。「伐りすぎでしょ」というわけだ。10年前、自分は何を書いたかなんて覚えていないよ(^^;)。

古い文章を、少しいじってなんとか今風にならないかと悪戦苦闘した。

半日頑張って、あきらめた。もう、この記事は使えない。全面的に書き換えるしかないだろう。

なんと、林業の変化の早いことか。私自身も、取材して、記事に書いて、出版するまでのタイムラグで事態が変化していることを感じたほどだ。ほんの数カ月で変化しているのである。

かつて林業は、樹木の時間で進む、と言われた。それは目先の経済情勢に惑わされて、あわてて政策を変えたり施業方法を変えることを諫めた言葉だ。人の一生と変わらない速度でしか生長しない樹木を毎年いじったらダメなのだ。

明治以降、肉本の林政はコロコロ変わった。森林収益説か土地収益説か、天然更新か人工更新か、皆伐か傘伐か……なんて、言葉だけでもいっぱいつくられた。

一つの実験的施策の結果を見る前に、新たな政策を取り入れることもままあった。逆に実験結果を現場に反映させる暇さえなかった。

たとえば森林林業再生プラン。いつまで続くか(@_@)。

だが、この10年を振り返ると、あまりに経済環境の変化が大きい。あっと言う間に世界中の木材資源が枯渇したり、世界同時不況が起きたり、木材需要そのものが変化する。昔通り(いつの昔か、が重要なんだけど)の林業が生き残ることができるかどうか疑わしいだろう。

もはや林業も、カメの歩みでは生きていけない。ウサギにならなくてはなるまい。キョロキョロ周りを見回して、進む方向を探す目端の利いたウサギに。

といっても、樹木の生長速度を変えることはできない。むしろ樹木の生長は変わらないことを前提に、その周辺の政策・目的・作業方法……などを変化させねばならない。

これまでの政策変更は、いわば外部に合わせて林業を変えようとしてきた。だが必要なのは自律的に変化を進めることだろう。さもないと、引きずりまわされ感がある。

朝令暮改の林業。この方法を考えてみよう。

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コメント

そんなに変化が激しいと
田中さまは、いっぱい本を書かなきゃならなく
なります。(ならないか)

何事もタイムリーに。が、
ますます大切になるのですね。

遅筆の私としては、間に合いません(;_;)。

私の意見も朝令暮改します。明日には、森林なんかいらない、と言い出すかもしれない。

うう、「明日には森林なんか・・・・かもしれない。」と(泣)。

今夜が「ヤマ」でしょうか。

おお、「山」だ。

多分、夕方には「日本森林党を結成して、立候補する」と言い出します。ま、明日の朝までだろうけど。

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