「一歩先の林業」~宮崎の現実
週末は宮崎に行っていたわけだが、その目的は、ひむか維森の会のセミナーに講師として招かれたのだった。ひむか維森の会とは、宮崎県の若手?素材生産業者の集まりである。
もっとも、吉田愛美さんも会員(^o^)。
で、現地に入って見たチラシ。
すでに終わったセミナーのチラシをここで公開することに何の意味もないのだが……。
見よ。「森林異変~日本の林業に未来はあるか」だ。
拙著のタイトルがそのままセミナータイトルになっている(^o^)。
実に有り難い。もちろん同名の拙著『森林異変』の販売もさせていただいた。
考えてみれば、先週の大阪で開かれたセミナーは、NPO法人サウンドウッズの主催。今回はNPO法人ひむか維森の会。この共通点は、どちらもNPOである……ことは一目瞭然だが、実は、どちらも『森林異変』に登場いただいていることだ。
今回のセミナーは、ひむか維森の会が連続してい開いている「未来の林業セミナー」の5回目である。そこで私は、「林業のこれまで」と「これからの林業」について語った(だって現在は参加者が一番詳しいだろうから)、テーマを「一歩先をいく林業」とした。
つまり、あまり先の未来を描いても理想論に陥るだろうし、今よりほんの一歩先に進むために何をめざすか、というお話。
そこで幾つかの提案をしたわけだが、その中でも訴えたのは、素材生産業は、今後伐採だけではマズいだろう、伐採後の植林・育林も請け負うようにすべきではないか、ということだった。その方が仕事も長期的視点を持てるし、地拵えのコストも落とせる、何より森づくりに参画することで自然破壊の汚名を消し、環境産業に脱皮できる。
ところが、終わった後に聞いた話で仰天した。
なんと、会員企業の中には、すでに植林も下刈りなど育林も手がけているところがあったのだ。
そして「地拵えは、もう死語になりつつある」というのだ。なぜなら、全木集材をやっているので、伐採跡地に枝葉などを残さず、そのままできれいな状態になっているからだという。地拵えをする必要がなくなっているのだ。
そして全木集材という方法も、私が紹介した話であった……。
つまり、私が一歩先として紹介したことの一部は、すでに宮崎では始まっていたのであった。
おそるべし、宮崎の林業。
いや、それ以上に驚いたのは、会場には九州森林管理局の人々や県森連、県造林素材生産共同組合連合会……などの人々も参加していたことである。これ、業界事情に通じている人にとっては驚きなのだ。
だって、通常はみんな仲が悪いから(笑)。そもそもひむか維森の会だって、ライバル企業同士の集まりだよ。こうした連携を行えていることは、大きな強みだろう。
次は、「2歩先をいく林業」を話します( ̄ー ̄)。
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初めまして。宮崎県美郷町南郷区上渡川在住、耳川広域森林組合南郷支所の作業班で林業(山師)をしています今西猛と申します。現在親の跡を継ぐ形でUターンし山師を始めて6年目になります。田中さんの「森林異変」を呼んで以来このブログはたびたびチェックさせていただいております。(かなり勉強になっております)
そして今日久しぶりにアクセスしてびっくり!宮崎で講演会されていたとは…しかもひむか維新の会主催で!行きたかった…(実際はこの日は地元の子どもたちに自然体験を通して生きる力を身につけてもらう「渡川自然塾」を主催していたので行けませんでしが…)
というわけで、また宮崎で講演会される際は早めの告知をお願いします(笑)必ず行きますので。そして腰の重い森林組合の連中も連れていきますので。
実は昨年、県の財団が主催する農商工連携の補助金が出るのを知ったきっかけに、天野礼子さんをお呼びして地元で講演会を開こう!と森林組合に働きかけている最中です。ようやくトップも動き今年こそは開催と考えているのですが…なんとも。とにかく森林再生プランもいよいよ動き出した今こそ、林業に従事する私達がもっと林業について知って、改めて考えて、これから求められる山づくりを自ら選択していかなくてはならないと思っています。宮崎は先進的だという考えをお持ちかもしれないですが、それは極一部です。一部の個人素材生産者、森林組合でそういう情報を知っているのは一部のトップだけ。現場で木を切って木を育てる山師は全く持って旧態全の補助金ありきの仕事をするばかりです。他の価値観は持っていない、というより知りません。このままでは「なぜ森林再生プランをするの?」というのが抜け落ちそうです。いや多分全国の地方森林組合でこうなると思います。
私はいつか田中さんをお呼びして山師はもちろん山の麓に住む地域の人々にも話しを聞いて欲しいと思っております。
『自立』とは自分の道を自分で選択できるようになる事だと思います。お金があっても考える力がなければ一人で歩く事はできません。今後林業や山村地域が自分が望むように歩いて行く為にはまず「知る事」が必要だと思います。そして「考える事」。
山村地域は情報量が極端に少なく、これが当たり前、これでしょうがないというのが常です。
私はとにかくみんなに知って欲しい。こんな方法がある、こんな考え方がある、こんな事やっている人・地域・国があるというのを。
ですのでなんとか田中さんに来ていただけるチャンスを作られるよう私も頑張っていきたいなと思っているところです。(いや、私もあれこれ話すのですが、なかなか何も成してない若造の言う事は真実味に欠けるみたいで…)
その際は是非宜しくお願いします。南郷区上渡川は樫葉原生林が残っており、豊かな自然に恵まれた地域ですよ~最高です。是非一度。遊びで来られるのもお待ちしておりますので(笑)いつでも連絡下さいw
では突然のコメント失礼しましたm(__)m
投稿: 今西 猛 | 2011/08/06 09:06
今西様 一度外の世界を知った上でUターンした山の世界は、また違うものか見えてくるでしょうね。
私は宮崎の林業が全部進んでいて素晴らしいとは思っていません。問題を抱えているのも承知しています。ただ、一歩先に足を下ろすところを探している人々もいることに違いを感じます。
森林組合と素材生産業者とは立場が違うし、北部と南部でも条件が違いますね。その中で、進む道を見つけてほしい。
天野礼子氏に関しての評価は差し控えますが(^^;)、さて宮崎の林業を知った上で森林林業再生プランをどのように話すか……。
また訪れる機会があれば幸いです。
投稿: 田中淳夫 | 2011/08/06 12:36