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森と林業と動物の本

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2011年9月

2011/09/30

洪水流木と間伐の関係、調査へ

台風12号による奈良県内の林地被害額は、少なくとも300億円に上ると調査結果が発表されている。崩落は184カ所で、とくに、大規模崩落が発生した23カ所の面積は、総計236ヘクタール。

さらに林道・作業道被害から、今後の施業への影響も考えると、どこまで膨れ上がるのかわからない。

そんな中、奈良県は、台風12号の復旧のための補正予算案72億8800万円を決定した。

もちろん過半は道路や河川、砂防・治山の復旧工事に向けた調査や測量・設計費。約50億円に達する。これは着工の前段階だから、本格的に始まったら、莫大な金額が必要だろう。

http://mytown.asahi.com/nara/news.php?k_id=30000001109290003

だが、見逃すことのできない項目がある。それは、洪水で出た大量の流木の発生原因調査として2050万円を計上していることだ。そして間伐方法の見当も加わっている。

これって、「山に残された伐り捨て間伐材が、土石流で流れ出て被害を大きくした」説の検証ということなのだろう。つまり、このブログで話題になった問題を調査することになったということだ。

今回の水害で大規模な土砂崩れが発生した原因が、人工林にあると言われた冤罪?とともに、間伐材が流木を生み出しているのか、あるいはこちらも冤罪なのかは、林業関係からすると、結構大きな問題だ。もし関係があるとしたら、伐り捨て間伐の見直し(これは、政策的には規制方向にあるが、完全になくすわけにはいかないし、伐り捨て方にも響く)が必要になる。

奈良県がいち早く手を付けることは喜ばしい。

もう一つ。十津川村の仮設住宅を木造で、十津川材でという村長の要望も通ったようだ。それも一戸建てらしい。こちらは、まだ詳しいことは知らないのだが、今回の予算案にも、仮設住宅前200戸にウッドデッキや花壇などの整備費を計上している。

被災者に対して、意外とこうした木づかい、いや気遣いは重要なんだろうな。ウッドデッキがあるだけで、ちょっとした庭となり、植物を育てることで、かなり気分が変わるものだ。とくに高齢者が多い地区では。

もちろん、まだ予算案ではあるが、おそらくそのまま通ると思う。荒井知事は、年内に復旧・復興計画の骨子をまとめるほか、復旧・復興対策室の設置も決めている。

ところで、今日から雨である。復旧工事に影響がないように望む。

2011/09/29

「オルタナ」で責任編集?

本日届いたのは、オルタナ26号

ええと、この雑誌を知らない方のための紹介としては、

環境とCSRと「志」のビジネス情報誌』(サブタイトル)

うん、わかりやすい(笑)。環境ビジネス誌ではなく、ビジネス(経済界)の環境&社会貢献雑誌だと言えばいいだろうか。ちなみに編集長(兼社長)は、森さん(~_~;)。

この雑誌の10月号……と言っても、今回から季刊誌になったのだが……の特集は、

21世紀は「木の世紀」

そこで私は、なんと責任編集になっている。

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読めるかな? 左端の私の名前の下を読んでほしい。


 

私が書いたのは、
・まず森林ビジネスの新しい潮流として、根羽村のトータル林業を主軸に、西粟倉・森の学校、そして岐阜県中津川市の加子母森林組合の紹介。
・東日本大震災絡みでは、岩手県住田町とモア・トゥリーズなどの進める木造仮設住宅、そして林野庁のガレキ発電計画など。また福島県の放射能汚染の計測値もコラムで触れた。

また「オルタナパーソン」というインタビュー記事も、私がオークヴィレッジの稲本正さんを取材した。

朝日のフォーラムでは、稲本さんと牧さん(西粟倉・森の学校社長)と同席しているが、これは全部偶然。たまたまオルタナとフォーラムの陣容が重なったのだ。

この特集企画のうち、直接タッチしていない記事も、私が企画なり取材先なりを決めて紹介したものがある。

全体としては、ビジネスとしての森林、つまり林業色が強い。

そうそう、通常連載のページ『「森を守れ」は森を殺す』も書いている。こちらのテーマは、「間伐が森林の少子高齢化を進める?」と題している。

 

ともあれ、1冊の雑誌でここまで関わったことは珍しい。 

それにしても「責任編集」って、何だろう(笑)。売れ行きの責任は負えないけどなあ。


2011/09/28

Mになる? 自分の文章との戦い(笑)

昨日も記した通り、来月の出版を控えている。

今回は、以前書いた記事を下敷きにして、それを読み込んで新たに書き下ろす作業が多かったのだが、すると自らの過去の作品を否定的に見ることになる。自分で自分の文章にツッコミを入れたり、前に書いてからの年月のうちに変化した現状との付き合わせが必要だ。

すると、Mになる(笑)。自分で自分を否定する作業だから、精神的には、「どうせオレなんか」気分だ。

「ええええ、昔の私はバカでしたよ。みんな私が悪いのよ」な気持ちになるのである。

それでも、自分なりに納得させるのだが、次の段階で、編集者の赤が入り、さらに校正者の意見が突きつけられる。もちろん、誤字脱字、文法的におかしいとか、この書き方はわかりにくいとか指摘するのはいい。しかし、いわれるままに直してばかりではない。

そうか、オレって文章ヘタだったんだと思わされたり、考え方が浅かったかと反省したり。もう、どうにでもして!女王様の言う通りに従いますわ……と内心すねる。

今日返って来た校正は、私が「森林に水源涵養機能はない」という部分にヤケに絡んでくる。こちらに書いたことと矛盾するとか、この言葉の意味(広辞苑)はこうだから、この使い方はおかしいとか。なんか、私の主張に文句があるみたいだ。

あのね、そんな国語的な校正されても困るのよ。ウィキペディアばかり引いても、根本的な考え方が違うのよ。Mにばかりなれん。たまには反旗を翻すのだ。

もう、戦いだ(~_~;)。私の文章を否定される傷みを感じながら、自らの書きたかった思いと、他者(読者?)の意見との合間で、どのように直すか直さないか、決断していかねばならない。

思えば、水源涵養機能や二酸化炭素吸収などの森林の公益的機能を否定的に書き、「天然林は貧弱だ」とか「沙漠に緑になんかできない」とか、その筋の人の心を逆撫でするようなことばかり書いている。

さらに新月伐採を否定し、ツキノワグマは増えていると訴え、ゴルフ場の自然は素晴らしいと擁護する……環境保全こそ、この世でもっとも大切! と思ってる人がこの本を読めば、カンカンになること請け合いだ(笑)。
こっちだって戦闘モードで書いていると、文章がとんがってくる。きつい言葉で指摘しなければ、相手の心に刺さらない。

書籍だけでなく、本ブログも含めて、私はどんどん敵をつくっているなあ、と感じる(~_~;)。

これまで仲良くつきあっていても、その人が取り組んできたテーマをバッサリ切り捨てることを書いたり,、相手の仕事や職場を、なってないと思えば否定的に揶揄することもある。少しは筆を抑えようかと思わぬでもないが、そうなったら、面白くないだろう。やっぱりズバッと書かねば。

でも、今後の人間関係どうなるかわからん。

それでも、書くのだよ。書かねばならないと思い込むこともあるのだよ。あえてきつい道を選ぶのよ。そして落ち込むのよ。ま、女王様に虐げられるのは、意外と快感だけどね(~_~;)

やっぱり、オレってM?

2011/09/27

新月伐採の実験方法に異議あり

実は、来月また本を出版する。

まあ、緊急出版というヤツだ。(ウソ)

この出版については、そのうち改めて紹介したいが、そこで「新月伐採」について書いた。

もちろん、ボロクソである(^o^)。なぜ、こうしたミョーな伐採方法が流行るのか理解しにくい。そして、伐採方法が木の性質を変えて「魔法の木」になるという戯言を多くの人が信じるのかわからん。

どうも、天然林に異常なシンパシーを感じる人がいるように、新月伐採に夢中になる人がいるようだ。

と、そこに新月伐採について実証実験を行い、その効果を確認した、という案内(プレスリリース)が来た。

その内容の一部を紹介しよう。

※少し考え直して、一部、訂正しました。論旨は変えていません。

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・伐採時期: 秋季(10月~11月)における月齢4期(下弦、新月直前、上弦、満月直前)

・対 象 木:スギ等、樹齢20年程度以上(胸 高直径10cm程度以上)を3本

・観測回数: 伐採 直後及び3ヶ月後、6ヶ月 後の3回

■*本試験結果要旨*

2010年10月30日(下弦)、11月5日(新月直前)、11月14日(上弦)、11月21日(満月直前)に、全国11ヶ 所で、スギのほか、ヒノキ、ウリハダカエデも伐採した。伐採直後に辺材部(白太)を採取し、固定液に漬けた。伐採された木は3ヶ月間、あるいは6ヶ月間、山中で葉枯らし乾燥をさせ、再び辺材部を採取して固定液に漬けた。これらの試片よりまさ目面切片を作製し、ヨウ素・ヨウ化カリウム水溶液を滴下してデンプンを検出した。

スギの結果は以下の とおりである。

伐採直後の試片で は、デンプンは、地域により、また個々の木により異なっていたが、ほとんどの試片でその存在が確認された。デンプン量は、満月>上弦>新月>下弦であったが、これは月齢による差というよりは、冬に向かって貯蔵デンプンを増やしていくことによるものと思われる。

3ヶ月間、あるいは6ヶ月間葉枯らし乾燥を行うと、明らかに期間の長さに応じてデンプン量は減少した。6ヶ 月後のデンプンは、下弦に伐採された木ではほとんどが消失し、新月直前に伐採された木ではかなりの減少を見た。一方、上弦、ならびに満月 時に伐採された木では、デンプンのほとんどが消失した個体がある一方で、まだ大量に保持している個体も存在した。これらの時期に伐採、葉枯らし乾燥された木は、デンプンの含量から見るとばらつきが大きいと言える。

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共同研究として京都大学が上がる。実は、その担当した研究者は、以前も新月伐採の実験をして、全然効果がないことを証明した人である。その人が、なんでまたもう一度同じことを繰り返しているの。。なんか、がっかりする。

結果がどうだったかより、この実験方法に疑問満載だ。

そもそも月齢を変えた伐採と、葉枯らし乾燥をなぜ一緒に行う必要があるのか。

実験というなら、

・新月伐採と、葉枯らし乾燥をした場合
・新月伐採と、人工乾燥した場合
・新月期以外の伐採と、葉枯らし乾燥をした場合
・新月期以外の伐採と、人工乾燥した場合

最低、この4パターンを試さないと、結果(デンプン量の変化)の原因が何か示せないのではないかなあ。

それに対象が、たった3本では、統計的な処理もできない。さらに場所が全国11カ所?ならば全部で33本か?

理解に苦しむ。同じ地域内でも斜面によっては材質が変わるといわれているのに、生育地を全国に広げたら比較しにくくなる。またスギとヒノキ、ウリハダカエデと樹種を変えたこともわからない。完全に比較できない。なぜ一種(できれはスギかヒノキのみ)に統一しなかったのか。
実験項目以外の条件をなるべく揃えるのは、実験のイロハだと思う。わざとバラバラにしたのは、比較を拒否したように思えてしまう。

たとえば同じ土地のスギを40本伐って、上記の4パターンを試して測定すれば、それなりの意味があったのではないか。

もう一つ、付け加えると、辺材部を検体としたようだが、建材としては芯材部の方がよく使われるのだから、正確には芯材を対象にしてほしかった。

これでは森林セラピー以上に科学ではない(笑)。

何を証明しようとしたのかさえ、はっきりしない。

私の想像としては、デンプン含量の変化は、ほとんど葉枯らし乾燥の結果ではないだろうか。月齢は関係ないように思う。

この結果を、来月7日に記者発表するらしい。誰か、取材する? ただし、科学実験の仕方を知っている人でないとダメだよ。

2011/09/26

焼畑! 「クニ子おばばと不思議の森」

NHKスペシャルで、「クニ子おばばと不思議の森」を見る。

宮崎県椎葉村の焼畑を守る87歳のおばあさん(椎葉クニ子)の物語である。

もう、見る前から「懐かしい~」であった(笑)。

私は、20年ほど前に、この椎葉の焼畑を見たくて訪ねている。椎葉秀行さんとクニ子さんとも会っていろいろ話を聞かせてもらった。秀行さんは4年前に亡くなったそうだが、クニ子さんは、なんと元気なことか。いや、風貌は20年前と変わらないよ(^o^)。

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これが、当時の写真。テレビに登場した今年の焼畑より、面積は狭く、でも、なだらかな地形だった。

ソバも食べたなあ。ただし、椎葉村の人はソバ打ちは下手で、ボロボロであった(笑)。
私もクニ子さんから焼き畑のソバ粉を買って家でソバ打ちをしたが、前年ながらつながらなかった(^^ゞ。焼き畑のソバ粉は10割でもつながると聞いたんだけどね。技術がないと無理。やっぱりソバガキにして食べるべきだ。

秀行さんは、「米がないからソバを……」と言っていたが、我々の食事が終わった後に、ソバガキを食べていた姿を見ている。やっぱりソバが好きなんだよ(^^;)。でも、秀行さんがもう止めようと言った焼畑を、最後までさせたのは、クニ子さんなんだよね。

この番組は、時間をかけて、素晴らしい映像を記録していたが、焼き畑の可能性を改めて見つめ直すべきではないか。

実は、焼き畑こそ、林業の源なのである。椎葉ではコナラ、クヌギの森に還すようだが、これをスギやヒノキにしても何ら問題ない。日本中の林業地の多くは、焼き畑から誕生したのである。

私は、一時期焼き畑に凝っていて、椎葉村だけに飽き足らず、ボルネオのイバン族の焼き畑まで見に行って、体験もした。
焼き畑は椎葉で4年、ボルネオでは1年で耕作を止めて放棄する。その理由は、「地力がなくなる」からではなく、「雑草が生えすぎる」のが理由だった。それを確認するのが目的だった。

焼き畑とは、今では民俗的な面から語られがちだが、私は農法として注目していた。アグロフォレストリーの可能性を秘めていて、環境に優しい農法だと考えていたからだ。しかも林業にとっても、地拵えや下刈りの軽減になる。またモノカルチャー的な農業・林業ではなく、多種生産の道を開く。

この番組も、自然に優しい世界として描いていたが、もう一歩踏み込んで、未来に向いた農法として゛焼き畑農法を継承することを伝えてほしい。

2011/09/24

パネル・ディスカッションの極意?

今日の朝日新聞に、先の朝日地球環境フォーラム2日目の様子が、3ページに渡って紹介されている。これで前編らしく、後編は明日かな。

で、私が出演した「暮らし方を変える」分科会も紹介されている。私のほか、オークヴィレッジの稲本さん、西粟倉・森の学校の牧さんの3人がパネリストで、それに朝日新聞社の高橋編集委員がコーディネーター(司会者)を務めた。

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内容に間違いはないが、これを読むと雰囲気は硬そうだな。いやあ、現場では……(笑)。

 

 

ちなみに、このフォーラムの直後に私は郡上市のフォーラムに出席したが、こちらでは私がコーディネーターだった。パネリストは、地元・郡上市の住民4人。

つまり、私はパネラーとコーディネーターの両方を短期間に経験したわけだ。

そもそもパネル・ディスカッションとは何だろうか。個人の講演、あるいは2、3人のトークショー(対談)とはどう違うのか。

基本的には、討論会だと思っていいだろう。最初に掲げたテーマについて、異なる意見を持った複数のメンバーが、公開で討議を行うのが正当な形だ。

ところが、日本では、異なる意見の持ち主が集められることは少なく、しかもコーディネーターが投げかける質問に順次答えていく形式が多くて、パネリスト同士の意見が交わりにくい。しかもパネリストは各業界?の代表で、自らの立場で意見を言うだけになってしまう。

私は、これが物足りないから、できるだけ、パネリスト同士の意見交換……を仕掛けられないかと思っていた。だから、私の発言には、できる限りほかのパネリストの意見を混ぜたり、呼びかけるようにしている。

朝日のフォーラムでは、稲本さん、牧さんとも既知の人だったから、どんな立場で考えをもっているのかだいたい知っている。しかも3番目だったので、前二人の意見を聞いてから発言が回ってきた。そこで、何かに付けて、二人の話を混ぜて(ときには反論、ときには応援・引用)させていただいた。
ついでにコーディネーターにも声をかけてやった(^o^)。思わす、反論?が出たので、それに応える形で、さらに意見を進める。最後には、前に言った自分の意見をひっくり返すことまでする\(^o^)/。多少は盛り上がるのに貢献できたのではないか。

郡上市のフォーラムでも、前の発言を別の人に振るなど、できる限り意見を交わらせるようにしたつもりだが、こちらはまだ試行中。難しいね。

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 郡上市のパネルディスカッション。

 

来月の福島の講演会でも、講演に引き続きコーディネーター役を任されたので、今度こそパネリストを翻弄してやろう(⌒ー⌒)。

もっとも、コーディネート役は、自分の意見はあまり言えないので、面白くない。やっぱり好き放題に発言して、収拾は他人に任せる方がいいな。

2011/09/23

オークヴィレッジは木の総合メーカー?

昨日に続いて、オークヴィレッジのネタを。

私もそうだったが、たいていの人は「オークヴィレッジ」と聞けば、家具、それもオーダーメイド家具をつくっているところというイメージを持っていないだろうか。そして、かなり高い(笑)。

ついでに言えば、総帥(^o^)の稲本さんは哲学者?思想家?のイメージか。

だが、実際に会って、また飛騨のオークヴィレッジを訪ねて感じたのは、稲本さんは敏腕経営者(ビジネスマンと言ってもよい)だし、オークヴィレッジが生産するのは、家具だけではなかった。

もちろん家具もつくるし、それが技術的な基本なのだろうが、もはや主軸とは言えないのではないだろうか。

実際、見せていただいたのは、携帯ストラップから始まり、積み木木琴(ただし、全部バーの長さが一緒で、木の種類を変えることで音階を表現する逸品)、さらに時計オーディオまで、実に多岐にわたる。
また、現在売り出し中のは、アロマだ。つまり香り商品である。これは100%日本の木でつくっているところが味噌。現在出回っているのは、人工合成香料か、ほとんど外国産である。

そして私が驚いたのは、建築もしていたことだ。主に住宅だが、手刻みの家を建てている。ただし、プレカット。つまり事前に工房で刻んで、現地に運んで組み立てるものだ。東京ほか、全国に建てているそうだ。

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複雑な仕口を刻む工作室がある。また設計も行っている。

 

 

さらに現在進めているのは、仮説住宅兼復興住宅である。仮設時代を終えると、その後基礎を打った上の復興住宅に合体させるといを発想である。「合掌の家」とあるとおり、三角屋根だ。これを被災地に建てていく計画だ。

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ここにあるのは、スケール2分の1の見本だそうだ。

こうなると、木製品の総合メーカーと言えなくもない。

で、稲本さんに言わせると、「今、一番売れないのは家具なんだよ」

……(笑)。

やはり、高いイメージがある(実際、高い)から、この不景気な時代には、なかなか受注できないのだ。だから、ショールームなどで展示販売する作品もある。

バブルのときは、断るほど注文があって、それで営業を怠ってしまった……と自省する稲本氏は、まぎれもなく経営者なのである。

また各地で植林も進めているし、森づくりから建設まで。そしてストラップから住宅まで。

これって、「大林業構想」のひな型かもしれない。

2011/09/22

広葉樹材の調達先~オークヴィレッジから

台風のニュースで、銀座のケヤキの街路樹が倒れたことが報道されていた。

直径50センチからある大木だ。見たところ二股に分かれているが、まっすぐな元玉部分でも3~4mある。これは使えるぜ。

……と考えたのは、実はオークヴィレッジの稲本さんの話を聞いたから。

オークヴィレッジの家具は、基本的に国産広葉樹材だ。一部、スギなども使っているが。しかし、今どき国産の広葉樹材にこだわると、なかなか手に入りにくいだろう。

そう思って尋ねると、そんなに調達に不自由していないそうだ。

それには、まず岐阜には広葉樹材の市場があって、全国から集まってくること。
次に、持ち込みが少なくないのだそうだ。

持ち込みとは、処分する樹木を「これ、使いませんか」という話がよく来るらしい。

その持ち込み元は、多くが街路樹なのだそうだ。街路樹には、ケヤキやクスなど、材としても結構な樹木が多い。しかも太くなっている。ところが、太くなりすぎると、信号が見えないとか、倒れた際の被害が心配だとかで伐採される。それらは基本的にゴミ扱いなのだが、業者もそのまま処分するのがもったいないと、オークヴィレッジのような広葉樹材を求めているところ(多くは家具工房などだろう)に話を持ってくるのだ。

それが高く売れれば、業者にとっても美味しいし、作り手からすると、なかなか市場に出回りにくい大径木が安く手に入る。もちろん資源としても有効活用だ。

私も街路樹を見て、ケヤキ材の生産地は、これから都会になる、と冗談で言っていたのだが、すでに本当に動いていたのだ。

そのほか、個人の屋敷にある大木も、家を圧迫しだしたら伐採対象になるが、それも持ち込まれる。伐採担当の業者のこともあるが、屋敷主自身も思い出の木で何かつくれないかと頼み込んでくるそうだ。

さらにオークヴィレッジには、明治神宮のナラとか、千鳥ヶ淵の桜並木も持ち込まれていた。大きくなりすぎた木は倒れるのである。あるいは倒れる前に伐り倒す。その材を利用できないかと考えたわけだ。もちろん、神社や千代田区の要請である。

皇居周辺のサクラでつくったサクラの花ストラップのほか、ぐい飲みに手鏡、USBメモリーまでつくっていた。それが売れたら、次世代の苗を植える経費に当てる。花見にサクラ材でつくったぐい飲みで酒を飲むなんて、いいかもね。

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明治神宮のナラ材乾燥中。これって90年前に植えられた人工植栽の木である。パワースポットになるかも。

材質は、全然問題ないそうだ。天然木となんら変わらない。ただ、よく乾燥させないと暴れるので、すぐに製品にはできない。これは広葉樹材ならみな一緒。

そこで思いついた。オークヴィレッジほどのネームバリューがあるから持ち込み・依頼もあるが、世の小さな木工所・家具職人のところには、なかなか街路樹材や屋敷林材は届かないだろう。

これを仲介するビジネスはありえないか。街路樹の大木を伐採する情報を仕入れては、それを斡旋するのだ。園芸業者などにコネクションを持ったり、役所の(街路樹伐採)情報をいち早く手に入れて、広葉樹材を欲しがっている人につなぐのである。
そのネットワークを築くのは大変だが、木を無駄なく使うビジネスとしてやりがいがありそうだ。

悪くないと思うがなあ。

2011/09/21

割り箸サミット~製箸事業参入者、求む!

9月19日の郡上八幡で開かれたフォーラム

郡上ふるさと考現学市民講座の一環で、「郡上産材利用からみる日本の森林」というタイトルがつく。そもそもは、郡上わりばしプロジェクトから今回のフォーラム開催へとつながるのだが、外向けのテーマは、森林と木材利用であった。

だが、真の価値は、その夜に開かれた宴席である。これが割り箸史上に残る記念すべき第1回割り箸サミットになるだろう……。

と書いてみたい(^o^)。

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第1回割り箸サミット?の宴



実は、この席に割り箸関係者がかなり集まったのだ。郡上わりばしプロジェクトのメンバーはもちろん、京都女子大の高桑キョージュに、アドバシを展開するライフ・ワークスの山本シャチョー。だが、最大の大物は、国産割り箸最大手の中本製箸の中本社長が金沢から駆けつけてくれたことだ。

中本製箸は、年間3億膳の箸を製造しているが、これは国産割り箸のおそらく2割以上を占めるだろう。郡上割り箸も、実は製造は中本製箸さんにお願いしている。

その中本さんから、重大な提案があった。

割り箸業界の現状分析として、今後中国産・ロシア産は、どんどん減る。ベトナムやアメリカなど新規に作り出した国も期待できない。このままでは、日本の外食産業は割り箸不足に陥って、いよいよ樹脂箸に傾斜しかねない。そこで国産割り箸の増産を行わねばならない……。

そこで、中本製箸の分社工場を全国につくりたい。それは子会社でなく、完全独立の企業でよい。そのために必要な人材は、全部中本製箸で鍛えて育成する。また製造した割り箸の販売も中本さんのところで受け持つ

もちろん、スギの産地でなければ困る。そのスギは建築材として優秀な木ではなく、割り箸に向いた木(ようするにB材以下。ただし太さや年輪が詰んでいて強度があること……など)我手に入る地域であること。
ただ中本さんのいうには、何より重要なのが人材だそうだ。まず木を見る目があること。それも割り箸用の目だ。そして割り箸製造に真面目に取り組めること。

そのために必要な資本はどの程度か。どうやら最初にそろえるべき13工程の機械は、全部合わせても1億円いかないそうだ。あとは工場用地と工場建設費、そして運転資金だが、余裕を持って1億円必要として合計2億円と割り出してみた。

複数の出資者が共同組合をつくれば、半額は補助金を期待できる。つまり1億円の出資金を集めればよい計算になる。10社~20社が500万円以上の出資である。不可能ではない。自治体が参加して第3セクターにする手も可能だが、行政が主導権を握るようでは困る。

少し規模を小さくスタートすれば、半額でも可能だろう。すると5000万円だ。

どうだろうか。かなりの好条件だ。中本製箸の傘下に入るのではなく、あくまで提携である。ただスタート時点で、技術指導も販売も面倒見てくれるなんて、滅多にない。

これを郡上市でぶち上げたのだから、当然、郡上市も手を挙げるべきだろう。すでに(宴席には)立候補者もいたし、市の農林課長もいた。

しかし、郡上一カ所にこだわらないのである。全国で手を挙げて、地域地域で割り箸づくりを展開するのが理想だ。47都道府県とまでは言わなくても、各ブロックに1、2カ所の工場ができれば……国産割り箸の逆襲が始まる。

中本製箸としては、ライバルができないことは進歩しないとまで言っている。つまり自社の拡張ではなく、割り箸の振興こそが目的なのだ。

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右端が中本社長

 

もちろん、この国産割り箸は、1膳2円50銭くらいはする。現在の輸入割り箸すべてを代替することは無理かもしれない。しかし、真に割り箸を置くべきところを考えれば50億~100億膳は生産してほしい。

どうだろう? 我が土地に、と思う人は声を上げてほしい。喜んで仲介する。

2011/09/20

晴れ男

昨日から郡上市へ。

こちらで開かれたフォーラムへ招かれたからである。

折しも台風が接近中だったが、意外や晴れていて暑いほど。やはり、私は晴れ男に生まれ変わったのだ。(昔は、仕事で出かけたら雨が降っていた。)

フォーラムは、養老孟司氏の講演と、私がコーディネーター役のパネルディスカッション。
実は、コーディネーターは初めて。勝手なことをしゃべるのではなく、他人の意見を引き出したりまとめるのは向いているのか。

まあ、この役割については、改めて考えたいが、とにかく無事終了して、夜の宴会が終わったら雨が降り出してきた。ああ、晴れ男の役割も終わったのであった。

そして今日は飛騨高山に車を走らせ、オークヴィレッジを訪ねたのだが、土砂降りであった……。これは仕事ではないという天の声であろうか……。

ともあれ、帰りも土砂降りの中を高速130キロで走らせて帰って来たよ。またも台風の接近で淡路島や徳島、名古屋などは大変なことになっていたらしい。

が、生駒に帰り着くと、雨は止んでいた。これから仕事しろってことか?

2011/09/19

遅すぎる、林野庁の森林放射線調査

先のアエラに書いた、福島県の森林放射能問題。

これは、福島県が6月7月に行った森林モニタリング調査結果に基づいて記した記事だ。その際に、林野庁も近く同じ森林放射線調査を行うと聞いていた。そちらでは土壌調査も含むらしいというから期待していたのだが。

なんと、忘れたころに「今から調査を始める」と林野庁は発表している。

http://www.asahi.com/politics/jiji/JJT201109170050.html

20日から、放射性セシウムの空間線量、土壌濃度に関する調査を約1カ月かけてするのだそうだ。その方法は、「福島県全域の森林を、福島第1原発から80キロ圏内は4キロ四方、80キロ圏外は10キロ四方の区画に分け、それぞれの区画で1カ所、計400地点で計測する。空間線量は地上1メートルで測り、土壌濃度は地表から深さ5センチまでの場所の土を採取して分析」というもの。 

そして結果から濃度分布地図を作成するそうだが、その公表が、なんと来年2月末! を予定。

なんで、こんなに時間がかかるの? あまりに動きが鈍いぞ。半年たってようやく行い、公表までさらに半年かけてとは。
そもそも測定後半年たって発表されても、その頃には数値が変わっているのではないの?

しかも、この調査、福島県が行ったものとほとんど一緒。調査地の選び方まで同じ。違いといえば、県のものは国有林や警戒区域内は行わなかったが、そこを追加していることと、土壌調査も含めている点だけである。

本当はやりたくないのだが……という気持ちが透けて見える。ゆっくり時間かけてやって、高い線量が検出しないようにしているのかと言われても仕方ないのではないか。
それとも、測定結果を現場に役立てる気持ちなどサラサラなくて、単に学術的なデータが欲しくて計測を行おうというのか? 


   

   

今月13日に、文部科学省が気象研究所や筑波大学らと組んで行った森林線量調査の結果が発表されている。
こちらは川俣町山木屋地区の森林をモデル地区として行ったもので、森林を針葉樹林と広葉樹林と分けて、立体的に樹冠も調べたというもの。基本的に落葉から多くのセシウムが検出されている。これは狭い地域に限定しているが、かなり綿密な調査で価値がある。

林野庁は、文科省に森林調査を明け渡したようなものだ。

  

また、私が個人的に頼んでおいたものだが、木を伐った際に線量の測定をしてもらうと、葉は160~250cpm。幹は140~160cpm。この地域の空間線量が120~160cpmだったというから、幹自体はほぼゼロ。葉も極めて低いと思われる。とくに放射性物質が付着しているとは言えないようだ。
cpmは、1分あたりの放射線計測回数を意味する放射線量の単位で、換算は難しいが、目安としては100cpm=1マイクロシーベルト/h見当らしい。

時間とともに、放射性物質がどんどん樹木そのものから落ちているのかもしれない。

2011/09/18

アエラもう一つの記事・紀伊半島大水害

もう先週号になってしまったかもしれないが、アエラ9月19日号には、「福島の森林」とは別に、『「深層崩壊」危険度マップ』という記事が載っている。

実は、こちらの方では、私が取材を受けている。

そもそも記事の主眼は、紀伊半島の水害を大きくした原因は、林業にあるのではないか、という仮説の元に取材に動いたのだそうだ。つまり、林業不振で間伐遅れが土砂崩れを引き起こした……という見立てである。

もちろん私は、水害地を見て歩いていないし、水文学の専門でもない。だから推測という前提で応えたのは、今回の水害の大きな特徴は、深層崩壊らしい。このような基盤岩層からの崩壊を引き起こす原因は、地表の森林が影響を与える可能性は限りなく小さい。おそらく関係ないだろう……というものだった。

実は、記者もほかの学者らの取材で同じことを言われたらしく、「この仮説は成り立ちませんね」と、企画そのものがボツになるかもしれないと匂わせた。

ところが、記事になっている(~_~;)。

内容的には、深層崩壊に森林は関係ないことを記しつつ、表層崩壊も取り上げ、こちらは林業不振による山の荒廃が関係してくることを示していた。もちろん、今回だって表層崩壊はあったのだから間違いではない。

でも、無理じいした記事だなあ~。危険度マップなんて、付け足しでしょ。どうせなら、「深層崩壊は森林とは無関係!」という記事を書けば、世間に一石を投じたのに。

また私は、伐り捨て間伐による林地残材が土砂崩れの被害を大きくしたかどうかを仮説として現地を調査したいと提案したが、残念ながら今回は取り上げられなかったようだ。

林業に降りかかる冤罪晴らしの一助にしたいものである。

2011/09/17

少しは朝日地球環境フォーラムの感想も……。

ホテルオークラの感想?ばかりではなく、フォーラムの感想も少しは。

現場に行って気づいたのだが、このフォーラムの規模は大きくて、3日間にどれほどの会議やシンポジウムが開かれたのか。全体に自然エネルギー系が多い。実は環境省からの発言で、原発偏重を反省するという(官僚としては)画期的な発言も出たのだが……。

海外からもたくさん人が来ていて、全部同時通訳付き。オークラの部屋に籠もっていてはいけなかったのである(^^;)。

ちなみに私が出た「暮らし方を変える」分科会にも、二人の同時通訳者がついた。会場を見渡した限り、外国人の姿はなかったのだが、記録も全部英語で行うそうだ。

で、私の自己紹介のプレゼン内容を事前に通訳者と打ち合わせたが、なかなか訳し方が難しい項目もあった。

たとえば「私は農学部出身とありますが、実は探検部出身なのです」と語呂合わせでシャレたつもりが、本当に探検部という学部があると思われていた(^o^)。これは課外活動のクラブ。
Exploration department ではなく、Exploration Clubですよ。

それに「限界集落」も直訳的に「Limited Village リミテッド・ヴィレッジ」と訳したら意味がわからんだろうから、「Endangered 絶滅危惧」集落と訳してもらうようにした。

田舎移住者は「Intruder(侵入者)と訳してください」と冗談で言ったら、真に受けられ、「それは地元の人からの視点ですね」と言われた(^^;)\(-_-メ;)。

さて、出演者で迷ったのは、ネクタイをするべきか否かである。私は、迷ってスーツは着たものの、ネクタイはせずに持参しておいた。
牧さんは、最初していたので「私もするわ」と由緒正しき日本人として付和雷同しかけたのだが、通訳者の一人が「もっともネクタイの似合わないコーナーなのに……」と呟いたので、すぐ二人してネクタイを外すことに。そうだな、やはり「暮らし方を変える」のは、ネクタイを外すところからだ。ああ、付和雷同もしちゃいかん。

ちなみに遅れて現れた稲本さんは、さすが最初から作務衣姿であった。

あああ、裏話ばかりで全然フォーラムのことを書いていない(~_~;)。ここは表ブログだ。

 

せっかくだから、私以外の分科会の話を。

私が覗いたのは、「森と生きもの、水との循環」という分科会である。そこには速水林業の速水亨さんと、中静透・東北大学教授がパネラーだ(もう一人、森をつくるカキ養殖で知られる畠山重篤氏)。こちらは濃い森林論林業論が展開されるかと、期待したのだ。

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全体に学術的?

だが、あくまで水との循環がテーマであり、被災者でもある畠山さんが参加していることで、話は、あまり林業には行かなかった。

なんとなく、速水さんも話しにくそうだった(^^;)。ちょっとコーディネーターがうまくなかったな。
ただ畠山さんは、当分養殖が回復するまでに林業をやるそうだ。そのため製材機も手に入れたとか。これは、東北全体のヒントになる。

では、いかに林業を軌道に乗せ成功させるかという点だが、それは「暮らし方を変える」分科会で話し合われたのである。極めて具体的な提言であった。
というわけで、もっとも林業のことを語ったのは、我々だった気がする。

 

2011/09/16

朝日地球環境フォーラム

昨夜からホテルオークラ東京で開かれている朝日地球環境フォーラムに出席していた。
さすがにオークラは寝心地もよく……という話はおいといて、フォーラムを無事済ませた。

私の出番は「暮らし方を変える」分科会だが、一緒に登壇したのがオークビレッジの稲本さんに西粟倉・森の学校の牧さんとくれば、話題は林業しかないでしょ(笑)。

ただ全体のテーマが「自然と人間再生する日本」だから、震災後をイメージしている。

果たしてメッセージが伝わったかどうか。それは会場に来た人の気持ちにゆだねるが、少なくともオークラの部屋は快適だったよ(^_^;)。

2011/09/15

アエラの福島記事~タイトルの怖さ

もう知っている人は知っている、読んだ人は読んだ、今週号のアエラに「福島の森林は大丈夫か」という記事を書いた。

この記事は、7月末に福島を訪ねた際に取材したことを元にした記事である。森林の放射線モニタリング調査の結果や、いわき市の林業家などの取材を元に書いている。もっとも、記事の根幹は、本ブログに先に買いちゃってるんだよ~(*^.^*)。

もともと、どこに発表するか考えて取材したわけてはない。ただ、偶然のように朝日新聞記者と接触があったから、アエラを紹介してもらったのだ。アエラには、数年前までかなりの頻度で執筆していたが、あることがきっかけで止めていた。

すると、「来週号にすぐ載せたい」というので、大急ぎで原稿を仕上げた。速報性が命だ。

各新聞各雑誌に放射能汚染問題は膨大な記事が出ている。ひたすら恐怖を煽るものから、安全だ、心配ないと力説するものまで。ただ、森林に関する放射線問題には、まだどこも触れていなかったはずだ。その点で、ニュースバリューはあるはず。

ところが……その後、ずるずると掲載が延びる。その度に、「京都・大文字の送り火の薪事件」があったから、ぞれを付け足してくれと言われ、次に「野生キノコからセシウムが出たから付け足してくれ」と言われ、最後には「シイタケ原木の放射線の話も」ときた。

私は、辛抱強く、書き直しましたよ。モニタリング調査の結果をすぐ世間に、という速報性はすでに消えてしまったが、とりあえず世に森林の放射線問題とその除染の可能性について触れたかったのだ。

とうとう、最初の執筆から1カ月以上がたってしまって、ようやく何が何でも来週に、ということになった。そこにシイタケ原木に野生キノコの問題も書き足した。記事を秋らしくするためだ。編集部の要望にしっかり応える私。フリーライターの鑑だ(^o^)。

ところが、最後の最後になって、メインタイトルを「国産シイタケ栽培に危機」にしたいと言ってきた。これにはキレて、即座に拒否した。もうボツにしましょう、と提案した。

私は、それまでの「福島の森林は大丈夫か」というタイトルも気に食わなかったのだ。記事に書きたかったのは、いかに森林と接するかという問題意識なのに、「大丈夫か」と疑問形にされたら、暗に危険かも……というニュアンスを含んでしまう。

それでも、森林のことを書いていることはわかる。そう思って黙認していたのに。いきなり主題がシイタケになってしまっては完全に逸脱ではないか。実際のシイタケの話は冒頭の10行ほどにすぎなくても、それは致命傷である。

中身を読めばわかる、というのは嘘だ。なぜなら読者は8割がたタイトルで記事を判断するからだ。

私が以前勤めていた夕刊新聞社では、駅売りがメインだから、目立つタイトルを付けることが至上課題だった。タイトルは整理部てはなく、記者自身が付ける。

社長は「タイトルを読んだら、記事の中身が100%わかるように付けろ」と言っていた。記事本体は、タイトルに合わせて書いて、タイトルに示したことを証明するものだ、というのだ。

これは、あまりに強烈なスタンスだが、言いたいことはわかる。刺激的でいて、伝えたいことを一読でわからせることが、駅売り新聞の売れ行きを左右するのだ。読者は、新情報を知りたがるのではなく、新情報を確認したがっているのである

そこで私は鍛えられつつ、しかし、刺激的なだけのタイトルには反発していた。刺激的で読者の気持ちを引っ張りつつも、いかに中身を伝えられるか、というのが、タイトルを付ける際の課題・アジェンダ(^o^)なのだ。

そうした気持ちで、現在は書籍のタイトルも付けている。もっとも、書籍名を著者に決めさせない出版社もあるのだが(T-T)。

その点で言えば、森林がシイタケに変わってはイカンのである。しかも、疑問形どころか、シイタケ原木は危険だと、あきらかに危機感をあおってしまう。

 

私の執筆のスタンスとしては、きっちり事実関係を押さえつつも、将来展望も記すというものだ。福島の森林が安全だとは言えないことは、しっかり記す。野放図に安全安全と垂れ流してはいけない。だから、木材にセシウムが浸透する可能性にも触れた。
そのうえで、森林除染が産業になる可能性にも触れた提案を行っているのだ。

ともあれ、一段落。実は、福島の森林放射線に関しては、「オルタナ」次号にも記している。

さて、このアエラには、もう一つ私が関係した記事が載っている。こちらも林業ネタだ。

それについては、また改めて。

明日からは、朝日地球環境フォーラムだよ。

十津川村に木造仮設住宅は建つか

大水害を受けた紀伊半島。どこも被害は森林地域だが、なかでも奈良県十津川村は、林業地である。

私は、奈良県でもっとも元気な林業地だと思っている。村独自の林業再生プロジェクトを展開中なのだ。

奈良県の林業地と言えば、誰もが吉野を思い浮かべるし、吉野以外は思い浮かばない状況だが、十津川村は吉野林業には含まれない。行政的には吉野郡だが……。

地形からして、吉野林業は吉野川流域だが、十津川は熊野川(十津川・新宮川)流域だ。紀州林業地に近く、同じ奈良県では、熊野川支流に当たる北山川流域の北山林業地域と同じ扱いであった。また林業技術的には、吉野林業のような精密ではなく粗放であった。

だが、十津川村こそ、今もっとも奈良県で林業に力を入れている地域なのである。吉野や和歌山県の竜神に材を流すのではなく、十津川材という銘柄をつくり、木材の乾燥や製材も自力で始めていた。奈良や大阪の工務店とも連携し、「十津川郷士の家ネットワーク」を立ち上げた。
住宅建設・販売にも乗り出したのである。すでに年間30~40棟の住宅を建てている。

さらにドイツを視察して、十津川材で木製窓サッシをつくったほか、11月には、これらの大林業実践の拠点「木材加工流通施設」を完成させる予定だった。

だが、今回の水害で道路が寸断された今、当面施設を完成・稼働させることはできないだろう。ようやく軌道に乗りだしたのに無念である。
ところで村内では、水害により11棟が全壊し、土砂ダムなどの影響で長期避難している集落もたくさんある。

そこで更谷慈禧村長は、十津川材で仮設住宅を建てるべく動き出している。 

奈良県では、プレハブの仮設住宅を考えていたようだが、それでは林業地・十津川が泣く。多少、経費がかかっても地元の木材で建てることが、地域産業にも貢献するのだから。県も理解を示すべきだ。
ただ、現状では十津川材を地元で加工することは叶わないし、伐採搬出して、外部に持ち出すことも難しい。ストックはあるのだろうか。

ちなみに更谷村長は旧知の間柄だ。以前、十津川村に泊まったときに、マツタケと酒を差し入れてくれた(^^;)。
テレビに映る村長の顔は、引き締まっているとともに疲れているように感じるが、今が踏ん張りどころ。近畿圏にも木造仮設住宅を根付かせるきっかけにできるかもしれない。

ぜひ、ピンチをチャンスに。

2011/09/13

竹のバイオマス燃料化計画

バイオマス発電つながり、というわけではないが、京都府北部の宮津市では、竹のバイオガス化とメタノール化プラントがつくられた。

宮津バイオマス・エネルギー製造事業所」である。竹によるエネルギー製造施設は世界初という。市や民間企業など8団体でつくる宮津バイオマス・エネルギー事業地域協議会協議会が計画し、総事業費2億3500万円で施設を整備した。

施設は、竹の粉砕⇒乾燥⇒竹ガス化……そしてメタノール精製という工程を行う。
1時間あたり1トンの竹から、最大で竹チップ850キロ、竹粉150キロ、メタノール7リットル、電力30キロワット毎時を作れる予定で、一般家庭10世帯分に相当。これは工場で消費する。
竹のバイオガスでは、発電ができ、メタノールは、今後バイオ燃料として使い道を模索する。 バイオディーゼルとして車にも使えるが、燃料電池の燃料として有望だ。メタノールを補給するだけで延々と使える電池ならば使いやすい。

竹チップや竹粉も商品化の道を探っていくという。

なかなか夢のある話だ。ところで、このプラントは長崎総合科学大などが開発した「農林バイオマス3号機」を導入したもの。

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実は、このプラントは私も視察している。このブログでも紹介したかなぁ。

これが、そのプラントだ。

私は、夢を感じた。
何といっても小型で簡単なのがいい。こちらでは竹だが、木質ならなんでもよく、機械に放り込むと数ミリ単位の粉末なって出てくる。それを密閉型の炉に入れれば、蒸し焼きになってガス化する。そのガスを触媒などでメタノール化するのである。

もっとも、プラントそのものは実験装置である。発電した電気も、工場内で使ってしまうわけだし。メタノールだって、研究用レベル。
しかも大量の原料を、いかに調達し、投入し続けるかが大変。1時間1トンなら、稼働率をどの程度見込むのかわからないが、1日1カ月1年で莫大な竹を必要とする。

それに、バイオガスは効率がよいのか悪いのかわからない。これで発電する必要があるのかどうか……。

でも、木質バイオマス発電にガス式も検討するのは、賛成だ。さまざまな方法を模索しないと、単に燃やすだけの火力発電方式に縛られると、あまり将来性を感じない。

震災地のガレキ発電や除染発電(勝手に決めている)も、ガス式も一考してほしい。

2011/09/12

ガレキ発電所を除染産業に

津波で出たガレキは、約2500万トンとされている。そのうち7割が木質系廃棄物(建築系、流木系など)とさているが、500万トンは燃料になるから、これで木質火力発電を行う……この計画は、春先に林野庁がぶち上げたものだ。

すでに政府の二次補正予算に調査費を盛り込んでいたが、今度作成する第3次補正予算案に100億円レベルの補助金を盛り込む予定だそうだ。これも再生エネルギー法の成立が大きく関わっている。発電所建設事業には、半額助成することになるのだろう。

ただ海水を被っていたら塩分があるので、そのまま焼却したらダイオキシンが発生しかねないとか、不燃物を分別できるのかなど、問題点もある。それらの調査には、すでに4社が決まっている。

青森県=みずほ情報総研
岩手県=三菱UFJリサーチ&コンサルティング
宮城県=日本総研
福島県=三菱総研

それぞれどんな計画を立ち上げたかは知らないが、行ける! とゴーサインを出したということだろう。まあ、予定通りではあるが。

ちなみに、放射能禍は、どうするのか決まったのだろうか。福島のみならず、岩手の陸前高田のマツからも放射能が検出された、五山の送り火騒動もある。あんな微量は気にするな、と言いたいところだが、そうも行くまい。
おそらく、特殊なフィルターに排気ガスを通すことで除去するのだと想像するが、この技術が完成しているか知りたい。

ただ、これは以前にも指摘したが,ガレキだけだと数年で底をつく。当初計画では5つの発電所だったが、予算案では10数箇所で着工を目指すというから、木質ガレキの奪い合いにもってもつまらない。

林野庁としては、その後は林地残材を投入するつもりだろうが、これは採算を合わすのは極めて難しい。いかに低コストで山から木材として使い道のないような残材を引き出すなのか。

しかし、私はこれを逆手に取ることを考えている。通常の方法では採算は合わない。かといって、残材集めの補助金を投入するのも限度がある。だが、これを「除染」と捉えたらどうだろうか。

林地残材を集めるのではなく、放射能汚染した木材を集めるという視点を持てば、政府も補助金をつけざるを得まい。除染は、東北被災地の最大課題だからだ。しかも、数年で底をつく量ではない。10数年は必要だ。

もちろん太い木は、木材として利用する。枝葉や樹皮、背板など被曝の可能性がある部位を投入すればよい。伐採跡地からは腐葉土も掻きだす。それも燃料とする。そして、痩せ地に生えるマツを植えて松林を復活させる。マツタケが採れるかどうかは別問題だが……。

これを利用して、木質発電を長く続ければ、いつか採算の合うバイオマス発電に脱皮する技術開発も進むだろう。林業と発電産業が合体できるはずだ。

2011/09/10

女子高生からのメール

昨夜、女子高生からメールが来た。

拙著『日本の森はなぜ危機なのか』を読んで、林業の活性化について質問があるという内容だった。東京の高校3年生である。もはや林業女子は、高校生にまで及んでいたのか。

それを読んで、不思議な既視感。そして感慨。

実は、約9年前、同じく『日本の森はなぜ危機なのか』を読んで、東京の女子高生からメールが来たことを思い出したからである。彼女は、拙著の中で焼畑の項目を読んで連絡をくれたのだった。

たしか、高校の卒論? で、焼畑を取り上げた……という内容だった(つまり、彼女も高3だった)。幾度かメール交換をして、その卒論も読ませていただいた。いや~、立派なものである。当時は「オレは女子高生のメル友がいる」と周りに自慢していた(笑)。

その後、女子高生は女子大生となり、パワフルに全国・世界を飛び回っていた。私が紹介したところに、1週間後には出かけていて、何日も泊り込んで……という報告を聞いて仰天したものである。

気がつくと、彼女は高校教師になり、いつしか結婚して子供もできている。で、私は彼女とは一度も会ったことがないのである。

今は、ときたま本ブログのコメント欄に登場するけど(^o^)。ああ、今日もそうだった(笑)。

ちなみに、私はこの手のメール・手紙には、手加減せずに返事を書く。相手が中学生でも高校生、大学生でも、真正面から書く。甘い点、失礼な点があれば、叩きのめす。携帯メールでアホな質問をしてきた中学生に、きつく返したこともある。女子大生の場合も、罵倒した。

その点で、今回も含めて二人の女子高生は合格であった。

なお、前回と違って今回の特別な感想は、娘と同い年なことである……。今日は、娘の高校で文化祭。青春している彼らもいいけど……私も年を取ったかもねえ。。。。

2011/09/09

災害時のリーダーはどこにいるべき?

本ブログの趣旨から少し離れるが。

今回の紀伊半島水害で、とくに奈良県は大きな被害を抱えているが、そのトップである荒井正吾知事が批判にさらされている。

実は5日夜に東京へ出て、6日に県主催の「日本と東アジアの未来を考える委員会」に出席してから帰り、会議を開いたことが県議会で取り上げられたのだ。

ようするに危急時に現場を離れた、と言うのだ。知事は、国会議員とも会っていた、職員と同行して、現地の情報を把握して指揮を取っていた、というのだが……。

6日は前田国交大臣が現地入りしており、地元リーダーが現地に行かずにどうする、攻撃されている。地元のニュースキャスターなど、「知事辞めなさい」とまで激昂して口走る有り様。

それを聞いて、みょーな既視感がある。

だって、半年前、大震災が起きてすぐさま現地視察に飛び立った菅直人当時首相は、「リーダーが前線に行ってはいかん」と批判の嵐だったからだ。リーダーは、中央にどっしり構えて情報を集めて判断すべし、とリーダー論をぶつ評論家が多かった。そ
それに、首相の仕事は震災対応だけではない、円高も目を配るべきだし、国防を忘れて自衛隊を10万人も投入するなんて、と御託を並べる右翼評論家もいたっけ。

それなら災害だけでなく、奈良の未来を考える会議の冒頭説明するのも必要かもしれん。

現場に行っては罵られ、中央(東京)に行っては攻撃を受ける。はあ~。

辛いねえ。

どちらがいいか、私がここで評論するつもりはない。

ただ、リーダーが現地を見るということについて

私は、必要だと思う。何事も決断の最後は、感性がものをいう。その感性を磨くためには、現地の皮膚感覚が必要だ。
たとえば私自身も、東日本の津波映像をいくら見ても、皮相的な感覚しか身につかなかった。だから1カ月後に現地入りしたのだ。本当はもっと早く行きたかったが、自分の役割は報道ではないと考え、時間を空けることにした。そして現地を見たら、皮膚感覚でいろいろつかめたことがある。また遠くから見た目との比較もできた。

逆に、今回の水害では、自分が知っている土地ばかりだから、まだ現地を訪れていないにもかかわらず、すでに水害の規模やそこで起きたことを感じている。現地を知っていると、理解力が鋭敏になるのだろう。

実は、十津川出身の知人が、昨日現地入りした。迂回路が開通したのは昨日だけで、今日はまた不通になったというから奇跡的に実家に辿りついたのだが、そこで送ってきた写真を無断借用したうえに加工して掲載する。

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十津川北部の辻堂である。道は完全に埋まっている。こんな風景が、過去の知っている風景と重なることでリアリティを持って感じられるのだ。

ただ、ここで闇雲に現地を見ることの大切さを強調したいのではない。リーダーなら現地を見ても突き放す勇気と、多角的な視点も必要だろうと思う。(だから東日本大震災の被災者は、一度西日本に来たらいいとは思う。感じ方が全然違うから。)日本全体、あるいは奈良全体の現在・将来まで考えて行動しなくてはいけない。

実は、これはジャーナリズムの世界、取材者の世界でも感じることだ。現地入りして取材することは絶対に必要なんだが、現地に溺れてはいけない。逆に遠くからインターネットと電話取材だけで見てきたような事を書いて満足しているようでは最低だ。
単に首相や知事を(目先の情報だけで)あげつらい批判しておけば格好がつくわけではない。

現地を見て、その上で突き放すことができるか?

その意味では、あえて災害時に東京人の水害を見る目を感じてくるのもいいと思うよ(⌒ー⌒)。

2011/09/08

「水源地の森を」詐欺で儲けたのは誰?

もうニュースにもなったが、「北海道・大雪山の水源地の権利」を販売して現金をだまし取った団体「大雪山」(一応、飲料水販売業を名乗っていたらしい)の関係者が逮捕された。

この団体(会社なのか?)は、「中国の企業が日本の水を買い占めようとしている」という理由で、原野山林の権利を売りつけていたそうだ。

ようするに、昨年から私が叩いていた「外資が日本の森を……」というネタを利用した詐欺事件である。

まあ、この手の詐欺が出るのはわかっていたし、これが目的ではないか、と思うほど「外資」宣伝は悪質だったのだが、今回の事件でちょっと意外だったことがある。

まずだまし取ったのは一件数十万円(1口30万円)らしいこと。それも「土地」ではなく、「水源地の権利」という名目であること。案外、少額じゃないか。少ない額だと、泣き寝入りする人もいるのかもしれない。
ただ、全国に国民生活センターに寄せられた相談は1000件以上あるらしいが、同じような団体はいくつもあるだろう。大がかりな詐欺というよりは、寸借詐欺みたいだ。

次に、詐欺の元になる水源地だが、その山林は1・8ヘクタールしかない。しかも、この土地は、元所有者が500万円で「大雪山」に売ったというのだ。

とすると、この事件で誰が一番儲けたか。

私は、元所有者だと思う(笑)。

北海道の山林価格の相場はしらないが、1ヘクタールが100万円を超すことなどそんなにないのではないか。(リゾート地か、温泉がわくならともかく。)
それを1・8ヘクタールが500万円で売れたのなら、ほくほくだろう

それを元手に詐欺を行おうとした「大雪山」は、パンフレットを作ったり証書をでっち上げたり、営業に歩いたりして、いくら稼げたか。関係者は十数人いるらしいが、分配すると利益率は低い。3億円分を騙したとしても、一人当たりの収益は数百万円程度。何カ月も汗かいて……挙げ句の果てには逮捕だ。

結局,、詐欺グループも山林価格の相場を知らなかったのではないかなあ。

ともあれ、「外資が日本の森を」と煽った連中は、この事件についても素知らぬ振りなのだろう。

2011/09/07

3日で2400ミリ降った村

そろそろ別の話題に、と思いつつも、せっかく盛り上がっているので水害の話を続ける。

奈良県の上北山村。大台ヶ原を抱えて日本で一番雨の多い土地とさえ言われるのだが、ここの積算雨量は72時間で2400ミリを越えているそうだ。発表は1800ミリだけど。

今後、詳しいデータが出たら、改めて観測史上最大となるかもしれない。

ただ、結果的にこの村に被害はなかった。村全体で死者はもちろんけが人も出ていない。床上・床下浸水もなかった。自主避難は13世帯23人、避難勧告は7世帯11人。ある意味、住民は大雨対応に慣れていたようだ。

この村がなぜ被害を出さなかったのかを調べることも、今後の水害対策に役立つだろう。
住民の対応や、集落の配置なども興味があるが、地質・地形はどうか。もしかしたら、長い年月のうちに、崩れやすいところは崩れて、岩盤がしっかりしているのかもしれない。

今は、被害の大きいところばかり報道されるが、雨量や地質が似通っているのに崩落しなかったところに注目するのもよいはずだ。もしかしたら、伐り捨て間伐材が流れ出ているかどうかを調べるのに適地かもしれない。(崩落地がないという点で。)

行きたい……が、今は時間がない・・・仕事、投げ出したくなる。

 

 

なお、被害がないと言っても、交通途絶の問題はある。
上北山村と下北山村の境で、幅30mに及ぶ崩落があって通行止めになってしまったのだ。、先に紹介した川上村の大規模崩落のため、電話線もインターネットも断線したうえ、外部に出るルートも極めて細くなってしまった。ここも、十津川村ほどではないが、村ごと孤立してしまったのだ。下北山村は、三重県経由のルートがあるが……。

2011/09/06

水害と人工林批判を結びつけたがる愚

台風12号の被害は拡大するばかり。

マスコミも、相変わらず和歌山県田辺市、那智勝浦町、三重県紀宝町、そして十津川村にどっと押し寄せてレポートしている。とくに十津川村は、国道・県道全線普通になっている。自衛隊もヘリで物資を運んでいる状態なのに、どうしてレポーターは入れたのだろう。歩いて入ったか、ヘリコプターしかない。

が、テレビを見ていて看過できない発言があった。どこぞの記者が、「この辺の山はスギやヒノキばかりなのです。そうじゃないと商売にならないので植えたのですが、スギやヒノキは根が浅くて水害に弱いのです。だから土砂災害を引き起こして……」と連呼していた。

どうも話し方からすると、自分の意見というより聞きかじりらしく、地元の人か言ったというニュアンスだが、あまりに不用意な発言である。

まずスギやヒノキには保水力がないというのは、誤解である。林齢や間伐などの手入れ状況抜きに針葉樹を貶める発言はムカつく。

次に、今回の水害の原因は今後の調査を待たないといけないが、少なくても映像を見ただけでもこれは「深層崩壊」であることは歴然としている。またテレビ・新聞の解説でも、識者がそう説明している。森林土壌部分が崩れ流れる「表層崩壊」と違って、深層、つまり基盤岩層から崩れるケースに表面の森林が関係する可能性は極めて低い。

こうした極端な大雨が降った場合、いかなる森林であっても崩れるものだ。屋久島だって、白神山脈だって、崩れるときは崩れる。災害があると、その理由を人工林と結びつけたがる愚はええかげんにしてほしい。

よく70歳80歳の地元の人が登場して、「この地に生まれ育って、こんな水害は初めてだ」と発言させているが、自然のサイクルはそんなに短くない。80年を越えるスパンで起きる気象現象は少なくないだろう。100年200年周期で起きたとしても、頻繁と言える。ただ人間の記憶の幅を越えているから「未曾有の災害」と感じるだけだ。

そして「人が森林に手を付けたから、これまでにない災害が起こった」「人は大自然に適わない」という結論に結びつけたがる。

これは推測だが、今回の場合、原生林の方が崩壊度は大きいのではないかと想像している。原生林には下草が生えていなかったり、逆に密生していて十分に根を張っていない可能性があるからだ。

人が手を加えた自然は崩れやすい。そんな先入観から災害を論じてほしくない。
なお,気になるのは、都会人がそう思い込んでいるのは毎度だが、山村の人までそんな理解をしていては困る。自らが営々と築いた人工林に対して誇りを持ってものだ。

ただ、一点気になるのは、洪水現場に山積みになった流木である。流木が橋などにひっかかり、それが水をあふれさせた原因になったところは多いようだ。
この流木は、森林が地面ごと崩れてなぎ倒されたものなのか、それとも伐り捨て間伐で林内に残された間伐材が流れ出たのかはっきりしない。もし間伐材が主因なら、林業にも災害の一因を作った可能性がある。

その点だけは留意したい。

2011/09/05

台風12号の災害から

台風12号がもたらした超弩級の大雨が、各地で被害を広げている。

報道では、奈良県十津川村や和歌山県田辺市、那智勝浦町、それに三重県紀宝町ばかり取り上げられているが、実は山崩れは各地で起きている。

なかでも奈良県川上村では、高さ300メートル幅100メートルに渡って崩れて国道169号線が押し流れされ、交通が途絶したようだ。橋が流され、電線も切れたらしい。電話や携帯もつながらなくなった。このルートは、東紀州への幹線だけに、早く復旧しないとやっかいだ。上北山村、下北山村、そして北山村へのルートが塞がれる。

なお山崩れ近くの迫集落やそこにある役場、ホテルの人々は、少し奥にある源流館や山吹ホールに避難したという。役場機能も移転したらしい。

それでも注目されない(地元ローカルニュースでさえ、報じない)のは、死者や家屋倒壊などが出ていないからかもしれないが、そもそも報道機関が被害情報を持っていない可能性だってある。

私はネットで知った(川上村は、吉野林業の中心地で私との関わりも深い)が、一般的なルートでは流れないか自治体の広報で小さくしか伝わらず、その規模や影響に気づかないのかもしれない。マスコミの得る情報は偏っているから、先に記した十津川や田辺、紀宝町などが絵になる被害があると聞いて、全テレビ局が集中してしまい、それ以外のところに目を向けなくなる。

今回の台風で積算1800ミリという驚異的な雨量を記録したのは、この川上村の隣の上北山村である。そこにも取材陣は入っていない。死者が出たことはかりに注目するマスコミが見落としているのだ。

東日本大震災でも、私が岩手から宮城へ海岸線を南下したところ、小さな入り江や沢の奥の集落が津波で壊滅していたのを幾度も通り掛かった。繰り返し繰り返し壊滅シーンが目に入り、目眩がするほどだった。
しかし、それらの地域までテレビカメラが入っている可能性は低い。その光景だけでは、被害が小さくて絵になりにくいからである。広域災害では、そんな忘れられた被害地域がたくさんある。

もっとも川上村には、おそらく数日したら、マスコミが押しかけるのではないか。幹線道路を押し流し、役場に移転を迫る点では、ほかの被害地よりも影響は大きい。ホテルも当分閉鎖だろうし、秋の行楽シーズンと木材搬出への影響も考えると経済的損失も大きい。

なお役場が移転した山吹ホール。山村には似合わないほど立派(~_~;)なのだが、実は今年11月に、ここで全国育樹祭のシンポジウムが開かれる。そして私も招かれていて、基調講演を行う予定なのだ。

そこが避難所になるとは……。しかし、道路が壊滅した今、果たしてここで開催できるか微妙になってきた。一応、県道の抜け道はあるようだが、各地から人を集めるのは難しいかもしれない。あの規模の崩落となると、11月まで国道が開通するかどうかわからない。

ところで、先に国土交通大臣に就任した前田武志議員は十津川村出身と記したが、明治の大水害では十津川も壊滅した。そのため村民の多くが北海道に移住した。そして現在の新十津川町を築いたことは、以前記したように思う。

その新十津川町の出身の議員がいる。経済産業大臣(原子力経済被害担当)鉢呂吉雄議員である。妙なつながりがあるね。

なんだか今年は災害が全国的に「身近」になった年だ。東北地方の被災に心を痛めていた人も、自分が被災すると思わなかったという人は多いだろう。

なお生駒は、今日もまったく無事。雨もわずかだし、風もなし。晴れ間さえあった。娘が警報出たと午前中に学校から帰って来たが、どこに危険があるのか、と思う。
やっぱり霊山・生駒山のおかげ(^∧^)。

と冗談のつもりだったが、なんだか本気になってきた。我が家の周りでは、いくら近くで地震があったり豪雨だったり強風でも、何も起きないのだ。不思議。

2011/09/04

熱帯の焼畑と伐採写真

ちょっと古い写真を発掘した。

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これは、ボルネオの焼畑風景。マレーシアのサラワク州のルマ・サンパイというイバン族の村を訪ねて、案内してもらったもの。撮影は、だいたい1991年くらいではないかと思う。

次は、もっと古い写真。

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1984年くらいかなあ。パプア・ニューギニアのニューブリテン島ビアラの伐採現場を訪ねた時のもの。無造作にジャングルの中を歩いて、見つけた大木を、これまた安全機具も付けないままチェンソーで無造作に伐り始めた。

その後、ブルドーザーで林道まで引っ張り出す。熱帯地方の林業事情を初めて見た。

もちろん、これらの写真は、フィルムカメラで撮影し、プリントしたものである。それをスキャンして、デジタルデータとして披露している。色の修正まではできなかった。

いずれも青春(笑)の記録である。

2011/09/03

飛騨に割り箸会社設立

岐阜県の高山市に国産材割り箸を製造する「飛騨製箸」が設立された。

設立したのは6月で、高山市の事業家らで、木製家具製造会社や木質ペレット製造会社など6人だそうだ。資本金は500万円、従業員は約30人。飛騨地域のスギの間伐材を使った割り箸を製造する。

11月にも工場を稼働させて日産25万膳を生産する計画だ。単純計算では、年産6000万膳というところ。年間売上は約1億2000万円を見込む。

ちなみに最大手の金沢の中本製箸は、年産約1億膳と聞いた。(もっとも生産設備は3億膳くらいあるとか。)株式会社はるかも、年産3000万膳くらいはあるはずだ。いずれしても、飛騨製箸が、計画通りに生産できたら、国内有数の割り箸工場になる。

いやいや、それどころか今後は、日産100万膳を目指すとか。

なかなか豪気な計画だが、販売は大手外食チェーンなどを狙っているそうだ。その販売を請け負うのは、あの「ワリバシカンパニー」である。岡山県の西粟倉村でも生産している。

しかし、問題は価格だ。輸入割り箸は単価1~2円だが、飛騨製箸では単価2~3円を考えているそうだ。狙うのは樹脂箸からの転換らしいが、洗浄費などのコストを説明して、割り箸の有利さを伝えるのは、なかなか大変だろう。
価格を抑える仕組みとしては、端材やおがくず゛、それに使用済みの箸を回収して木質ペレットの素材として買い取ってもらうというが、どうかなあ。

とりあえず、よいスタートを切ることに期待したい。

 
 

 

ちなみに、現在の割り箸事情は、刻一刻変化している。

今や中国からの輸入は減るばかり。中国による生産自体も激減したそうだ。製造地は、ロシアからモンゴルへと広がっている。さらにロシア材も入りにくくなっているから、外材による国産割り箸も厳しくなっているようだ。そのため供給不安が起きているという。もはや輸入割り箸も期待できないのだ。

だから国産への期待が高まっているのはわかるが、これがまた大変(^o^)。

実は、大手企業の中にも参入希望は結構あるらしい。そして製造機器を導入したら簡単に作れると思いがちなのだ。だが私の聞いた現場の声によると、そう甘くはないらしい。

素材の1本1本の性質を読み取る必要がある。とくに間伐材でつくろうとすると、節もあるし、年輪幅が広くて強度がないなど、歩留まりは悪い。
いや、それだけなら精密な機械を開発すればクリア可能なのかもしれないが、検品だけは人の目に頼らねばならないのである。それは人件費に跳ね返る。検品は、ビジネスとしての商品にする場合に絶対に欠かせないし、レベルも落とせない。それは、輸入割り箸だって同じだ。

なんだか、輸入割り箸、国産割り箸と区別したり敵対するのではなく、割り箸vs樹脂箸くらいの気持ちで共同戦線を張るくらいの気持ちではないといけないのかもしれない。国際メーカーと海外メーカー間で、機械の融通や人材の交流も必要かもしれない。

 

2011/09/02

新内閣の林業度

台風が、近畿に接近している。おそらく未明には、四国辺りに上陸し、その後近畿~中国方面を縦断するだろう。

奈良県も、全域に大雨警報なんぞが出て警戒体制なのだが……不思議とわが町は静かである。
雨は、パラパラと降るものの、まだ風も穏やか。先日の大阪大豪雨の際も、まったく被害はなかった。いや、生駒市内だって降ったところは降ったらしいが、我が家の周りは平穏無事なのである\(^o^)/。

どうやら霊山・生駒山に守られているらしい。この調子なら、地震も放射能も怖くない……と戯れ言を言っているうちに、野田新首相の新内閣の顔ぶれが決まったようだ。

じっと眺め、また各大臣の経歴などを探るが、林業に通じる人はなかなか見つからぬ。
菅内閣は、少なくても菅直人首相が、林業にかなり入れ込んでいた。ま、半可通の部分はあったし、思いつき政策もあったが(~_~;)、それなりに森林再生を唱えていた。果たして今度の内閣は、そうした人物がいるだろうか。

留任した鹿野農水大臣も、農業は詳しそうだが林業はイマイチの様子。林業改革を進めていた国家戦略室も、大臣が横滑りに近いが、国家戦略室そのものがどうなることやら。

野田新首相は、手堅く、これまでの混乱を納めるかもしれないが、新規に何かするとか、改革に着手するというイメージは薄い。昔ながらの政治を進めるのが上手そう。

ただ、国土交通大臣に、前田武志参議院議員が就任した。彼は、建設省出身ながら、林業通だ。故郷が十津川村であることも影響しているのだろうか、林業や山村に対する思い入れがある。裏事情にも通じていた。彼に期待するか。それに最高齢ということで、若手の多い中でお目付役かもしれない。

今後、副大臣、政務官などが選ばれていくだろうが、さて、どんな顔ぶれになるか。森林政策や林業分野に詳しい人が少しでも入ってくれることに望む。

2011/09/01

今どきの「チプコ」運動

今日は、会議の事前打ち合わせ。

そもそもは、某公園の整備問題なのだけど、いまや自然公園もコナラなどが大木化してしまって、不健全になりつつある。このままではナラ枯れに感染しかかねない。そこで、大胆な間伐などの手入れをする計画があるのだが……。

私は、会議の内容をざっと聞いて、出席メンバーには森林の専門家もいれば素人もいるものの、間伐の必要性は説明すれば伝わると読んだ。
しかし、問題は実行である。もし間伐を行うとなると、それは公園内の作業となる。ハイカーなども多く通るだろう。そこで伐採作業を行えば、それも(素人目には立派な)大木を伐るとなると、何が起こるか。

おそらく「自然破壊!」と叫ぶ輩が現れて、ゴタゴタするに違いない。それをクリアするには、事前に立て札に作業の目的や内容を記しておくとか、説明員の配置がいるかもしれない。いっそのこと、「大木伐採ショー」に仕立てるとか、伐採そのものをワークショップにする、伐採した木の薪割りコンテストを催す……などした方がよいのではないか、と口走った。

すると、出席している一人が発言。「きっと、木に抱きついて『伐採しないで!』と叫ぶ人が出ますよ」

彼は、森林組合からの出向者なのだが、実際に過去そんなことがあったのだそうだ。枯れた木を伐採して除去する作業を行うところ、ハイカーのオバハンが、自然破壊だと騒ぎ出し、とうとう木に抱きついたのだそうだ。それで作業は2日間ストップしたという。

木に抱きついて伐採反対を主張する……なんか、懐かしい響きだ(~_~;)。

そんな運動が、かつて流行った。もともとはインドでダム建設のために地元が信仰するヒマラヤスギの森を伐採しようとしたとき、地元女性がが木に抱きついて伐採させないでおこうとした運動のことである。それで、この手の反対運動をチプコ運動という。チプコとは、ヒンディ語で「抱きつく」という意味である。まあ、ハグですな。ちなみに、インドでは、これが全国的に広がり、とうとう伐採は中止されている。

日本でこの運動が知られるようになったのは、知床伐採反対運動でも行われたことだろう。

林野庁の伐採チームを前に、若い男女10数人が木に抱きついて反対して見せた。それがテレビなどで放映されたから有名になったのである。

もっとも、この知床の事件は、ほとんどやらせである。テレビカメラが回っている間だけ抱きつき、撮影が終わると「もういいかな?」という声とともに離れた(笑)。……という噂。警察と裏取引して、やるだけやって、すぐに止めて、逮捕はしないという約束があったらしい。

実際、木に抱きついていたのは5分ほどで、逮捕者は出ていない。伐採も予定通り行われている。まあ、行為としては反対運動を有名にして、お金も集めた。

ただし、知床の事件なんて、今から20年以上前のこと。知っている人も少なくなったのではないか。それが、つい最近でもチプコ運動?あるとはね。

私としては、別の意味で木にハグするのは好きだ、いや、木以外でもいいけど……。

これからは、森林療法で「チプコ運動」を行ったらいいね。癒しのチプコ。イメージ変わるかもしれん。

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