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2011/09/05

台風12号の災害から

台風12号がもたらした超弩級の大雨が、各地で被害を広げている。

報道では、奈良県十津川村や和歌山県田辺市、那智勝浦町、それに三重県紀宝町ばかり取り上げられているが、実は山崩れは各地で起きている。

なかでも奈良県川上村では、高さ300メートル幅100メートルに渡って崩れて国道169号線が押し流れされ、交通が途絶したようだ。橋が流され、電線も切れたらしい。電話や携帯もつながらなくなった。このルートは、東紀州への幹線だけに、早く復旧しないとやっかいだ。上北山村、下北山村、そして北山村へのルートが塞がれる。

なお山崩れ近くの迫集落やそこにある役場、ホテルの人々は、少し奥にある源流館や山吹ホールに避難したという。役場機能も移転したらしい。

それでも注目されない(地元ローカルニュースでさえ、報じない)のは、死者や家屋倒壊などが出ていないからかもしれないが、そもそも報道機関が被害情報を持っていない可能性だってある。

私はネットで知った(川上村は、吉野林業の中心地で私との関わりも深い)が、一般的なルートでは流れないか自治体の広報で小さくしか伝わらず、その規模や影響に気づかないのかもしれない。マスコミの得る情報は偏っているから、先に記した十津川や田辺、紀宝町などが絵になる被害があると聞いて、全テレビ局が集中してしまい、それ以外のところに目を向けなくなる。

今回の台風で積算1800ミリという驚異的な雨量を記録したのは、この川上村の隣の上北山村である。そこにも取材陣は入っていない。死者が出たことはかりに注目するマスコミが見落としているのだ。

東日本大震災でも、私が岩手から宮城へ海岸線を南下したところ、小さな入り江や沢の奥の集落が津波で壊滅していたのを幾度も通り掛かった。繰り返し繰り返し壊滅シーンが目に入り、目眩がするほどだった。
しかし、それらの地域までテレビカメラが入っている可能性は低い。その光景だけでは、被害が小さくて絵になりにくいからである。広域災害では、そんな忘れられた被害地域がたくさんある。

もっとも川上村には、おそらく数日したら、マスコミが押しかけるのではないか。幹線道路を押し流し、役場に移転を迫る点では、ほかの被害地よりも影響は大きい。ホテルも当分閉鎖だろうし、秋の行楽シーズンと木材搬出への影響も考えると経済的損失も大きい。

なお役場が移転した山吹ホール。山村には似合わないほど立派(~_~;)なのだが、実は今年11月に、ここで全国育樹祭のシンポジウムが開かれる。そして私も招かれていて、基調講演を行う予定なのだ。

そこが避難所になるとは……。しかし、道路が壊滅した今、果たしてここで開催できるか微妙になってきた。一応、県道の抜け道はあるようだが、各地から人を集めるのは難しいかもしれない。あの規模の崩落となると、11月まで国道が開通するかどうかわからない。

ところで、先に国土交通大臣に就任した前田武志議員は十津川村出身と記したが、明治の大水害では十津川も壊滅した。そのため村民の多くが北海道に移住した。そして現在の新十津川町を築いたことは、以前記したように思う。

その新十津川町の出身の議員がいる。経済産業大臣(原子力経済被害担当)鉢呂吉雄議員である。妙なつながりがあるね。

なんだか今年は災害が全国的に「身近」になった年だ。東北地方の被災に心を痛めていた人も、自分が被災すると思わなかったという人は多いだろう。

なお生駒は、今日もまったく無事。雨もわずかだし、風もなし。晴れ間さえあった。娘が警報出たと午前中に学校から帰って来たが、どこに危険があるのか、と思う。
やっぱり霊山・生駒山のおかげ(^∧^)。

と冗談のつもりだったが、なんだか本気になってきた。我が家の周りでは、いくら近くで地震があったり豪雨だったり強風でも、何も起きないのだ。不思議。

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コメント

被害にあわれた方々にお見舞い申し上げます.

ニュースのネタになりやすい時間降水量や24時間降水量といった短期間豪雨の記録更新はなされなかったのですが(これまでの日本記録は,時間→1982年長崎豪雨の187mm/時,日→2004年台風10号徳島県海川の1317mm/日),防災上より重要になる(そしてあまり報道されない)48時間降雨・72時間降雨が紀伊半島で軒並みAMeDAS記録更新でしたね.

このあたりはTwitterの@disaster_i アカウントのつぶやきを追うとよく分かると思います.

それにしても生駒山おそるべし.もっとも,寺田寅彦じゃないけれど安心しているときに限って襲ってくるのが自然災害だからなあ・・・

十津川村、村から外界に通じる道が全部閉鎖された状態ですから、明治の大水害に匹敵する規模でしょう。
それらを引き起こした雨量や地質とはいかなるものか、今後検証が進むと思います。

ところで生駒山は大丈夫です。神奈備の山ですから。。寺田寅彦がなんぼのもんじゃい。(-人-)

実は、今から30年くらい前の生駒はよく洪水や土砂崩れがありました。床下浸水なんて日常茶飯。当時私の住んでいた住宅地も出入りする道が崩れて孤立を経験しています。だから決してなめてはいけません。でも今は大丈夫(^o^)

今のところAMeDAS,役場,国交省の雨量データしか入ってきていないのですが,今後(必ずしもリアルタイムで得られるわけではない)山間部の雨量計データが集まるかもしれませんね.その時とんでもない数値が発掘されるかもしれません.

そういう意味では,AMeDASの大台ケ原日出ヶ岳観測点が2009年に閉じてしまったのはもったいないなあ(ついでに書くと,山上ヶ岳AMeDASも去年から停止しています).今回測っていたら凄い値になったと思うのだけど.観測点はどこが引き継いだんですかね?

ええっ、大台ヶ原の観測点が廃止になっているんですか!
なんたること。日本でもっとも雨が多いと自慢?している土地なのに。

伊勢湾台風時の記録が世界的で、それを元に川上村の大滝ダムが計画されたという因縁もあります。このダム、今も完成していない欠陥ダムですが、今回の雨ではどうなったのだろう。

田中組長!

こんなニュースありました!
木製のブロック護岸のほうがコンクリート製の橋よりも強かった、ようです。切り捨て間伐した木材を、このような形で利用するのも取組んでみたいですね。

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大津波に耐えた木製ブロック護岸 岩手、試験導入

2011年9月7日19時54分 朝日新聞より

奥の堤防を乗り越えてきた大津波に耐えた木製護岸。コンクリート橋で水流が変化した付近だけは壊れた=岩手県宮古市赤前の津軽石川支流、伊藤写す

木製ブロックの模型。突き出した「控え」がミソ
 岩手県内の小水路に試験導入された木製ブロックの河川護岸が、大津波を受けてもほとんど無傷だったことがわかった。もともとは間伐材の活用や生態系への配慮が目的で導入されたが、コンクリート製の護岸にも負けない機能に注目が集まっている。
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