竹のバイオマス燃料化計画
バイオマス発電つながり、というわけではないが、京都府北部の宮津市では、竹のバイオガス化とメタノール化プラントがつくられた。
「宮津バイオマス・エネルギー製造事業所」である。竹によるエネルギー製造施設は世界初という。市や民間企業など8団体でつくる宮津バイオマス・エネルギー事業地域協議会協議会が計画し、総事業費2億3500万円で施設を整備した。
施設は、竹の粉砕⇒乾燥⇒竹ガス化……そしてメタノール精製という工程を行う。
1時間あたり1トンの竹から、最大で竹チップ850キロ、竹粉150キロ、メタノール7リットル、電力30キロワット毎時を作れる予定で、一般家庭10世帯分に相当。これは工場で消費する。
竹のバイオガスでは、発電ができ、メタノールは、今後バイオ燃料として使い道を模索する。 バイオディーゼルとして車にも使えるが、燃料電池の燃料として有望だ。メタノールを補給するだけで延々と使える電池ならば使いやすい。
竹チップや竹粉も商品化の道を探っていくという。
なかなか夢のある話だ。ところで、このプラントは長崎総合科学大などが開発した「農林バイオマス3号機」を導入したもの。
実は、このプラントは私も視察している。このブログでも紹介したかなぁ。
これが、そのプラントだ。
私は、夢を感じた。
何といっても小型で簡単なのがいい。こちらでは竹だが、木質ならなんでもよく、機械に放り込むと数ミリ単位の粉末なって出てくる。それを密閉型の炉に入れれば、蒸し焼きになってガス化する。そのガスを触媒などでメタノール化するのである。
もっとも、プラントそのものは実験装置である。発電した電気も、工場内で使ってしまうわけだし。メタノールだって、研究用レベル。
しかも大量の原料を、いかに調達し、投入し続けるかが大変。1時間1トンなら、稼働率をどの程度見込むのかわからないが、1日1カ月1年で莫大な竹を必要とする。
それに、バイオガスは効率がよいのか悪いのかわからない。これで発電する必要があるのかどうか……。
でも、木質バイオマス発電にガス式も検討するのは、賛成だ。さまざまな方法を模索しないと、単に燃やすだけの火力発電方式に縛られると、あまり将来性を感じない。
震災地のガレキ発電や除染発電(勝手に決めている)も、ガス式も一考してほしい。
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九州では、竹から紙を作ろうという試みがありましたが、原料調達の問題で操業中止になっています。コストの試算を修論でしましたが、竹のバイオマス利用厳しい…
でも、がんばってほしいです!
投稿: むかい | 2011/09/13 22:47
研究者は、みんな原料調達の問題を軽視しているんですよねえ……。
私も、このプラントがなぜ竹なのか、よくわかりません。フツーの木材にすれば、多少とも可能性が高まるのに。
投稿: 田中淳夫 | 2011/09/13 23:48
鹿児島県の薩摩川内市にある中越パルプ工場では、昨年から既に県内産竹100%のパルプを生産し、市販されております。
これにより、原料の竹の調達が活発になり、高齢者が所有している竹林をターゲットにした、ブローカーが県内で暗躍(超安値で買収:一山5千円程度)しているという話も聞きます。
投稿: こまつ | 2011/09/14 10:19
ほお。プラント稼働が先か、原料調達が先か、という課題に会して、一つの答ですね。
しかし、一山5000円とは……それでも契約しちゃうというのは、よほど持て余しているのか。それで竹林整備が進んだのなら、環境貢献ということになるんだろうな。
投稿: 田中淳夫 | 2011/09/14 11:40
竹の持続的利用のための施行・管理を目的とした演習林or試験地があっても良いと思います
降水量や気温、日照時間など(で決まる年間光合成量や発筍期間の長さ等)の地域差を考慮しつつ、また固さ/長さ等(伐出時の手間や工場での加工しやすさの要因)も加味した(個人的には発筍伸長しきって開葉直前が好都合と予想しますが)、施行計画があれば良いと思います
そのうえで、一定面積の「バイオマス用竹林」としての整備がないと、山師が買い集めるだけでは安定した持続的なエネルギー供給に応えられないのではないでしょうか
投稿: か | 2011/09/14 13:44
そうですね。竹林といえど、2回3回と連続して皆伐すれば根絶やしになるでしょう。本気で持続性を考えるなら、伐採頻度や時期など計画が必要ですね。
でも、竹林対策としてのバイオマス発電なのか、バイオマスの原料としての竹なのか、わからなくなってきた……。
投稿: 田中淳夫 | 2011/09/14 18:04
竹林対策とバイオマス原料、どちらなのかによって必要な知見は大きく違いますよね
前者なら、(大雨時を含め)斜面崩壊しない程度の強度で伐って、代替樹種を植えて、次第に竹の割合を下げて、最終的に竹をゼロにするための知見
後者なら、伐出コストや輸送コスト、加工しやすさなども加味した総合的な生産システムのための知見
どちらなのかはっきりしないと(補助ではなく)商売としての設備投資判断が出来ないですし
混ぜちゃいけないと思います
投稿: か | 2011/09/14 19:03
ごく小さくて簡単な規模でのソフトエネルギーの地域自給をずっと考えて(夢想して)いるのですが、そういう視点で見ると、竹林対策とバイオマス原料調達、どっちもあり、でいいのではないか、と。
プラント作ると設備投資もいるし、ランニングにエネルギーも使うわけですが、竹の発電利用にしてももっと単純な方法があるんですよ。まだどこでもやってないと思うな。
普通に田舎でちょっと農機具いじったり、堆肥の枠くらい作れる人たちで手作りできる程度のプラント。
ローテクって、お金かからないし手作りで楽しいし、修理簡単だし、廃棄するときも環境負荷少ないし。
まずは集落のエネ自給から。みたいな。 ふふふ。
投稿: unchan10 | 2011/09/22 21:58
単に竹をバイオマス利用するなら、チッパーがあれば、それでいいと思うんですけどね。ガス化までとなると……。
やっぱりローテクですよ(^o^)。
投稿: 田中淳夫 | 2011/09/22 22:16