森林除染と松林
福島の森林における除染が、ようやく注目を集めだした。夏前に私が提起したときは、どこも冷たかったのに……という愚痴はさておき、肝心の除染方法でまた論議が起きている。
というのは、放射性物質は主に落葉・腐葉土に付着していることが確かめられたことから、地表から5㎝程度の土を掻きだせば効果的という意見に対して、危惧する(反対する)?声が出ているからだ。
というのは、森林土壌を5㎝も剥げば、森林の肥沃さが奪われるというのだ。森林土壌1㎝つくられるのに何十年かかると思っているのか、と。そこは多くの節足動物や菌類も棲んでいる……。
しかし、なんだか馬鹿げた発想だ。そもそも、放射性物質を含んだ土壌を肥沃土とすることに違和感があるし、肥沃な森林土壌がよいとは限らないからである。
というのは、戦前、いや戦後すぐまで、里山の森林土壌は常にはぎ取られていた。落葉や腐葉土は、恰好の肥料だったからである。田畑に漉き込むために山の土壌は書き取られたのだ。
だから里山は痩せており、松林が多くなったのだ。おかげでマツタケがよく採れた。現在の森林土壌は、化学肥料などが普及し、薪炭も使われなくなった後に生み出されたものだろう。
また地下の節足動物や菌類の菌糸は、いろいろな階層に延びており、地下深い種類も少なくない。5㎝剥いだくらいで全滅するわけではない。
もちろん奥山には、長く腐葉土をため込んだままの場所もあるが、今回の除染対象となるのは人家の周辺森林だろうから、まさに里山の雑木林や人工林ではないか。つまり、戦前と同じことをするのが、除染になるわけだ。
私は、土壌をはぎ取るだけでなく、木々も伐採したらよいと思っている。そして枝葉を取り除くことが除染になる。幹は、木材になるところは利用し、それ以外はバイオマスエネルギーとしてボイラーで燃焼させる。そのボイラーには、ちゃんと放射性物質を取り除くフィルターを付けておけばよい。
そして、その後が肝心だ。伐採跡地はやはりマツを植えよう。痩せた土地にもっとも向いた樹木なのだから。
今や全国的にマツ材は不足気味。みんなマツクイムシにやられたからだ。また土壌の肥沃化によって天然更新しにくくなった。
しかし、マツクイムシに強い品種は、すでに開発されている。ただ植林する機会が少ないだけだ。しかし、今回の除染活動に合わせて大々的に植林すれば、数十年後には素晴らしい松林がつくれるだろう。そしてマツ材の供給基地として福島は成立できるのではないか。
国産木材と言えばスギとヒノキばかりになっている現状で、マツを増やせば林業地として差別化できる要素になる。
チェルノブイリではマツが早く枯れたという事実もあるのだが、それは強度の放射線に弱いだけで、福島のような低レベル放射能なら生育に問題はない。ただ放射性物質を吸収して枝葉や材に蓄積する心配はあるのだが、これは研究を要する。除染後ということを考えれば、土壌に残る分の量は極めて少ないだろう。
それがマツ材の生産に支障をきたすと想像できない。さすがにマツタケはいくら生えても、食せるかどうか心もとないが……。
現在、大規模な松林が残されているのは、青森県の太平洋岸だそうだ。幸い津波にもあまりやられずにすんだとか。ぜひ機会があれば視察したいと思うが、東北は松林とマツ材で復興をめざせるのではないか、と夢見ているのである。
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