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森と林業の本

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2011/10/05

最後の国有林野事業特別会計

国有林野事業特別会計の来年度予算要求が発表されている。
その歳入・歳出は、4,762億6,200万円。対前年度比5.8増%だそうだ。

それで思い出した。この特別会計は、2013年度に消えて、一般会計化するのだった。だから、今回の予算が特別会計としては最後になる。

ここで、この特別会計の歴史を振り返るのは、面倒だからやめとくが、道路や空港の特別会計みたいに、ごっそり儲けたお金をプールして、国家財政が火の車の時にも使い放題……という性質のものではなく、逆に林野事業の大赤字でとうにも首が回らなくなったから廃止するものである。

最大時には、累積債務が3兆8000億円となり、とうとう2兆8000億円を一般会計で面倒見ることになって、残り1兆円を自力で返しなさい、ということになった。(1998年)

が、今でも債務は1兆3000億円あるそうで、むしろ膨らんでいる(T-T)。

そこで、とうとう特別会計そのものを廃止して、一般会計化することになった・・・と認識している。まあ、この手の会計や政治の動きは複雑すぎてよくわからない。ただ、「事業仕分け」でも取り上げられたことは、このブログに触れた記憶がある。

これほど赤字を膨らませた原因などを考えるとうんざりするが、もともと林野事業を特別会計にしたのは、単年度ではなく長期にお金を動かせる方が、数十年単位で森づくりを考えねばならない林業には向いていると考えたからではないだろうか。

これまでの経緯はともかく、日本の林政を長期的な視点で支え、その原資として特別会計を使う理念自体は正しいような気がする。現在の日本の財政事情では、毎年やり繰りするばかりで、とても50年100年単位の森林政策は無理だろう。

加えて、国有林担当の署員を、2~3年で動かす人事も、国有林を悪くした元凶と思っている。それこそドイツのフォレスターを見習って、一人が一生かけて一カ所の森林を見ていくくらいの制度にすべきではないか。
そして、林野事業の予算も、景気に左右されず、現場の判断で使えるようにしたら……。

そういえば明治期に、各地の自治体が、地方財政を安定させるため、さかんに造林を行っていた。どうも土倉庄三郎が主張して、それを核山村が取り入れた気配を感じるのだが、森づくりは、自治体の財政に寄与するものだったのだ。

こんな理想を描いても、結局はその時々の人間が好きなように制度をいじるからなあ。林野会計も、林業バブルの頃には利益を一般会計に上納し、不振になると一般会計からさまざまな名目で補てんしてもらう……など、形骸化してしまった。そして、現在を迎えるのだから。

森林林業再生プランには、長期的視点が欠けていると思うのだが、林政に樹木の時間を加えるには、まずは財政からかもしれない。

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政策・行政関係」カテゴリの記事

コメント

「林野事業の大赤字でとうにも首が回らなくなったから廃止するものである」
「今でも債務は1兆3000億円あるそうで、むしろ膨らんでいる(T-T)」
について、いささか引っかかるところがありましたのでコメントさせていただきます。

 森林ジャーナリストたる田中さんであれば、林野庁の公表資料には目を通されてからご発言いただければ、うれしく思います。
 特に、今回のお題の国有林については、現在、林政審議会国有林部会での論議が続いてるところであり、その議事概要や資料は全てHPで公表されています。

 国有林は10年度の抜本改革時点では1兆円少々の債務があり、その時点で、これが1兆2千億円強まで増加することは予定されていました。平成15年までかけて組織や人員の縮減など改革を進めることとしており、プライマリーバランスが取れるのは16年からと見込んでいたためです。
 結果的には予定どおり16年度からプライマリーバランスが確保された(つまり新規借入金なしの)状態となっています。
 15年度までの借入金は、予定の1600億円よりは若干増えて2150億円程度となり、結果的に四捨五入の関係もあって1兆3千億円の債務となっておりますが、大きな違いではありません。

 この「15年までは債務は膨らみ、16年からバランスが取れる」ことについては、当時の国有林としても、さまざまな媒体で明確に説明し収支の見通しも公表してきたのですが、未だにこのようなことをおっしゃる方が、それも森林・林業関係のジャーナリストの中にいらっしゃることは、国有林に関わる者として少し悲しいことと感じております。

 9月に開催された林政審の資料、
http://www.rinya.maff.go.jp/j/rinsei/singikai/pdf/110908koku1.pdf
のP.11に詳しい内容が示されていますのでご覧ください。

 いつも面白く読ませていただいておりますが、時折、このように「公表されているものをご存じないのかなあ」と感じることがあるものですから、あえて書き込みをさせていただきました。
 失礼の段、ご海容くださいませ。

読み始めて、おっと、私の使った資料が古かったか、間違った解釈をしていたか……と思ったのですが、よくよく読めば、1兆3000億円(四捨五入後)の借金があるという事実に誤りはないですようですね。
ちなみに現在は、単年度赤字はない(プライマリーバランスは取れている)のは承知しています。

正直言って、ご指摘の点は、関係者は気になさるのでしょうが、私にはどーでもいいことです。おそらく国民の大多数も興味ないでしょう。
私は林野庁ウォッチャーでもなければ、林政ジャーナリストでもありません。そんな政府資料を読む余裕はありません。
まあ、半年すぎてから、福島県の放射能汚染調査をするというのんびりさには、あきれて怒っていますが。

どうせなら、匿名でなくご意見を述べてほしいですし、もっと専門家らしい大所高所からの森林林政論をうかがいたいものです。


今回の話題についてどうこうというのではないのですが、一読者としては「ジャーナリスト」がお書きになる文章は、それなりに確かなものであって、いちいち関係しそうな資料を当たって裏をとる余裕はなかったものですから、資料を読む余裕もないまま文章を発表されているという部分はちょっとショックでした。たぶんコメントされた方は、資料に目をお通しになっていれば、「」のような断定にはつながらないはず、と思われたのではないでしょうか。あと、匿名性の問題は今回はあてはまらないのではないでしょうか。うっかりチャックを開けて歩いている人に「私は○○という者だが、あなた、チャック開いてますよ」とはならないでは。ところで、お怒りが汚染調査の話に向かっているのはなぜでしょうか?。

よくお読みください。
上記のコメントが、もし赤字額が1兆300億円ではないという指摘なら、素直に間違いだと訂正します。額は間違いないのに、その裏事情を披露して、この赤字額の膨れ方は問題ないかのような書き方をされる「役人的発想」に反発したのです。
そもそも2兆8000億円の赤字は、税金で穴埋めされたことに対してどのように思っているのか。あんまり気にしていないようだが。
だからチャックは開いていませんよ。

そして、無料で書いているブログとプロとして書く記事と一緒にしないでください。

突然訪問します失礼しました。あなたのブログはとてもすばらしいです、本当に感心しました!

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