咄嗟のときは…ウサギ型?カモシカ型?
娘と、咄嗟のときにとる行動について雑談した。
自転車がぶつかりそうになったのに、逃げるどころか逆に動かなくなった子供の話題がきっかけなのだが、では火事に遭遇したら、すぐに逃げるのがいいのか、周りを見渡して確実な逃げ道を探すのがいいのか・・・・・。
私は、森で出会った動物の話をした。ウサギは、出会うと脱兎のごとく(^^;)、飛び跳ねて逃げる。ところがニホンカモシカは、立ち止まってこちらをじっと見て、それから動き出した。シカもだいたいそう。さて、どちらが正しい?
実は、どちらも正しいとか間違っているとは言えない。それぞれにあった習性があるのだ。
ウサギは、すぐに動かねば餌食にされる確率が増える。だから、とにかく逃げる。しかしカモシカやシカの場合、どちらの方向に逃げるかが重要だったりする。
それぞれの動物の特性と、本能に縛られているのだろう。
さて、人間はどちらだろう。
非常ベルがなって、火事だ! の声を聞いても動かない人は多い。間違いじゃない? と思ったり、まだ周りは逃げていないと付和雷同したり、ここでパニクってはみっともないし失敗すると自制したり。ある意味、現実感がない。
また全体を指導すべき立場の人は、その場の人々がパニックになるのを極端に恐れる。とにかく平静に保ちたがる。だから、できるだけ事件・災害も小さめに広報して、「落ち着いてください」を連呼する。(もっとも自分らは、パニクッてるのだが。)
だが、実は脱兎の方が助かる事件事故だって、かなりある。むしろ確率的には高い。パニックになった方が、結果的に逃げられることも多いのである。平静を演出したことが、被害を大きくすることもある。(震災時の津波対応でも、それは見られた。)
さて、森林を扱う場合、どちらがよいのだろう。
私は、よく「人の時間・樹木の時間」という言葉を使うのだが、樹木はゆっくり生長する。また寿命は人の10倍以上あるものも少なくない。だから結果が出るのも遅い。そこに人間的感覚の時間を持ち込むと、遅くてもたもたしているように感じる。それが森林政策の失敗につながりやすい。
皆伐して大造林して、一斉林をつくろうと決めた政策が、まだ一巡しないうちに「やっぱり天然更新」だと変わったり、100年の長伐期の森にすると言っていた森を40年後には伐採してしまったり。
そんな経験を繰り返したからだろうか、林業家は、すぐに行動に移さない(^^;)。いわばカモシカ型で、いくら改革が必要だと言っても、なかなか動かない。よく周りを見渡して、本当かなあ、と立ち止まっている。これまでは、それでよかった面もある。
森林の成立には永い年月がかかるから、思いつきで動くと取り返しが付かないからかもしれない。
現代社会は、スピードを激しく求められる。グローバル化という名の世界均一基準に当てはめると、早い者勝ちになるのだろう。とりあえず、早いものは、とりあえず今は餌にありつける。(将来はわからんけど。)結果的に樹木の時間は投げ捨てられ、人と人の戦いになってしまう。
しかし、樹木の生長は早まらないのである。急いだツケはどこかに回る。
今は、「咄嗟のとき」ではないか。政治も経済も環境問題や技術改革も、みんな曲がり鼻にある。情報技術がグローバル化を押し進める。
さあ、咄嗟のとき、どんな行動を取るのが結果的に正しいのだろうか。
« 「木づかい運動」を進めてよいのか | トップページ | 根曲がり杉 »
「森林学・モノローグ」カテゴリの記事
- トランプ米大統領と、緑の植民地主義(2025.01.21)
- 阪神大震災、改めて思い出す(2025.01.17)
- 雪化粧。そして、うぴ子(2025.01.12)
- ジビエ嫌いのジビエ・ビジネス(2025.01.11)
- 森の奥で根っこを張る(2025.01.05)
咄嗟の時ですか。。
もちろん、飛びかかりますとも。
危険を感じたら、噛め。
(熊の掟)
ホントはその前に、そっと消えます。
(熊の掟の前の掟)
投稿: 熊(♀) | 2011/10/12 23:37
私も、クマに襲われるような咄嗟のときには、相手に飛び掛かって抱きつこう……(^o^)。
こりゃ、かまれるな。
投稿: 田中淳夫 | 2011/10/12 23:54
カラス型になりたいですよ。環境の変化に順応してしぶとく生き残る、みたいな。嫌われるかもしれませんが。
投稿: kao | 2011/10/13 10:51
カラス型もあるか。
私の希望は、ナマケモノ型(^o^)。
外敵に襲われることのない環境でく(襲われる心配もせず)、ずっと動かない……。でも、案外進化上では長く命脈を保っているんですよ。
投稿: 田中淳夫 | 2011/10/13 11:12
こんにちは。
「シカは、・・・・」
立ち止まって、こちらをじっと見て・・・・
あろうことか。
わざわざ、車の前に飛び出してブツカッテきます。(p_q*)
有り得ない行動。
自暴自棄なのか、死中に活を求めた。?・・・のか。
グローバル化しないと世界の孤児になるというのも、
過多な情報の前にパニックになっているのでは。?
案外、これは、鹿的な行動なのかもしれませんね。
しかし、野生の鹿は、車にぶつかっても、平気なようで、
ビックリするくらいボディーが凹んで、手痛い修理費を払うのは人間の方・・・。
でも、日本に鹿ほどの底力があるのだろうか。?って考えちゃいますけれど・・・。
投稿: | 2011/10/13 17:10
まず、じっと立ち止まって周りを見る。冷静な行動。
そして、おもむろに選んだ方向が車の前(^^;)。わざとぶつかる。それからパニックになって騒ぐ。
……原発事故に対する日本人の反応だね。。。
さて、シカほどたくましく生きられるか。
投稿: 田中淳夫 | 2011/10/13 23:32