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森と林業の本

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2011/10/23

福島の林業復興シンポジウム

福島から帰った。

これは、福島の夕方のニュースの映像。

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地元では当たり前なのだろうが、ニュース内容とは別に画面の周りに「放射線測定値」とか「原発情報」が流れている。ちょうど台風接近とか選挙速報など緊急時の即時性のある情報提供で行われる手法だ。

西日本に住んでいると、なかなか被災地現地の情報は流れなくなっている。もちろん被災地のニュースはあるが、東京経由だし、何かイベント性のある話題だけなのである。
ネットなどに広がる声も、結局は肌で感じられるものではない。しかし、このような映像画面を見ると、ある意味、日常に放射線がある暮らしを感じさせる。

 

今回の訪問は、林業復興祭である。そこで開かれた林業復興シンポジウムに出席するのが目的だった。私は、講演とパネルディスカッションのコーディネーターの両方ということで、少々荷が重かった……うえに前夜の酒が……(笑)。

実は、講演者はもう一人いて、その村松学習院大学教授は放射線の専門家。だから実害としての放射線の話はそちらにお任せして、私は風評被害を払拭する手立てを示すとともに、福島県の林業をいかに変革するか、という話である。

そのうえでパネルディスカッション。

ここでもテーマは、やはり林業の変革と活性化なわけだ。

しかし、会場の声を求めると、圧倒的に関心を持ち、切実に訴えるのは放射線問題なのである。だから質問も、まず村松教授に集中し、さらに林野庁の井出氏が国を代表する形で突き上げられてしまう(^^;)。

いずれにもパネリストは、真摯に向き合って応えたと思う。ただ、この問題に明確な回答はなく、聴衆を満足させることはできない。私はコーディネーターでよかったと思った(笑)。
ただ、強引に時間を30分延長させた。これぐらいの権限なら、コーディネーターにあるのだよ( ̄ー ̄)。

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バネリストは、ほかに女優の葛城奈海さんとグリーン発電会津の笹島さん。

ただ、何ができるのか、と問われたときに、私からは「もっと福島県人は声を上げるべきだ」と返答した。残念ながら福島県人は大人しすぎる。みんな抑制が効きすぎているように思えてならない。
むしろ、放射線なんて、たいしたことないんだよ、と声を上げないようにしているかに感じる。問題は放射線レベルだけではなく、その脅威によって地域の破壊が進んでいることなのだが、そのこともいま一つ伝わりにくい。
また明確な脱原発の声も聞こえてこない。まさか(全国の原発の)再稼働を容認しているのだろうか、現知事は。

声を上げているという人もいるというが、残念ながら、その声の向かう方向が内向きなのだ。県庁を突き上げたり地元のマスコミが県内に報道しても、全国に伝わらない。

パネリストに声を届けてくれ、という意見も出たが……もちろん、それは大いにやるべきだが……それも他力本願に聞こえてしまう。いや、本来の他力本願とは、自身が手を尽くした末に天命に従うという意味なのだが、やはり福島の現場の人自身が強力に国に訴えるべきだろう。その必死さがあって、周りが動き出す。

たとえば、福島から1万人が東京に向かって国会議事堂を取り囲んだらどうだろう。呼応する全国の人々で100万人に膨らむのではないか。そうなると、いかにアホな国会議員や役人でも、今起きている事態に目が覚めるのではないか。

もし、やるんなら呼びかけ人になるよ。

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コメント

ご苦労様でした。

大坂人vs福島人
どうみても、大坂人が声がでかい 笑
東北人は、穏やかである。

しかし、今回に限って言えば、福島人も大いに主張すべきです。
放射能汚染は、一体誰が責任をとるべきか。
今後、どうすればこれから大きくなる子どもたちにいいのか。
真剣に議論すべきですね。

また、林業の再生を福島県から始めるように、提案して下さい。

ほんとうに、仰られますように、地元の方達の生の声はなかなか入って来ませんね。

そして、この件に対して、どの分野でも、「実際に確かな答えはない」というのが、一番確かなことだと思うのです。
例えば、食品の安全基準なんかでも、幅広いグレーゾーンのうち、何処から現実的なリスクと考えるのかどうかについても明確な答えは得られません。

その中で、“飯舘村除染計画書”というものがリリースされていますが、概算総額3,224億円かけて、除染を行うとのことと、飯舘村除染事業組合(仮称)[地元企業、公社、森林組合等]をつくり、・除染作業の管理、・受託地元雇用の創出 ・作業従事者の安全管理等を行うって、これ現実的なプランなのでしょうか。?それに、3,224億円かけて、どこまで達成できるのでしょうか。?驚いたのは飯舘村民の除染活動への参画って書いているのですが、地元が苦しんだ上の選択だと想いますが、しかし、とても正気の沙汰とは思えません。

http://www.vill.iitate.fukushima.jp/saigai/wp-content/uploads/2011/10/b2eb22467554edc1286c0f22672344be

●9月28日 飯舘村が独自に公表した除染計画について 小出裕章(MBS)
http://hiroakikoide.wordpress.com/2011/09/29/tanemaki-sep28/


『福島から1万人が東京に向かって国会議事堂を取り囲んだらどうだろう。呼応する全国の人々で100万人に膨らむのではないか。そうなると、いかにアホな国会議員や役人でも、今起きている事態に目が覚めるのではないか。』・・・とても賛成です!!。

この林業祭の情報が引っかからずに行けませんでした。残念!
県民の態度というのは、突出して声を出す人と「お任せ」の人に大別できると思います。で、「脱原発」ってのは某政党がずっと主張してきたこともあって、その関係者がリードしているわけで、いまいちくっつきにくいのは、そういう事情もあるのかと感じています。まあ、私自身がそうですが。
森林に関して言えば、放射性廃棄物を国有林に仮置きするというのが、どうなのかなと、個人的に心配しています。
これと全く違うのですが、今回の仮設住宅で、福島は県産木材を大量に使って建てたものがあるのですが、そのあたりの評価はどうだったのでしょうか。
あれほど大量の杉を短期間に集めてログハウスにするってのは、歴史的な偉業だったと、個人的には思っているのですが。

連投失礼します。
林業復興というテーマで思ったのですが、今回の大震災によって一時的に建設工事が増大し、新築戸数も増えるわけですが、そこで「ここぞ」と入ってくるハウスメーカーが、どんな木材を使うのかというのが、かなり重要なポイントではないかと思います。例えば「天然住宅」のような「地元材」志向の会社などが、短期間でどこまで受注できるのかという問題もあります。地元材を供給しやすいバックアップを普及させないと、円高ということもあって輸入集成材の需要が伸びるのではないかと感じています。大手のハウスメーカーが、構造材に地元のスギを使うでしょうか。ほとんど期待できないと思います。

今回、私が強調したのは、このピンチはチャンスだ、ということです。今後膨大な復興需要が発生し、復興投資が行われ、特区など規制緩和も期待できる。これに現地の林業が乗じなくてどうする? ということです。
が、そのためには地元がやる気を持たないといけない。

また外野も含めて、夢物語的な復興計画を描いては挫折するのは火を見るより明らかです。どこまでなら可能なのか線引きして、割り切る覚悟がいる。積極的に再構築する覚悟がいる。さもないとなし崩しに衰退するでしょう。

それらを福島の人には求めたいなあ。

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