大木なのだけど…
先の育林交流集会後、私は木曽の林業家と川上村に泊まったのだけど、翌朝、林業機械展に行く前に、吉野林業の山を案内した。
吉野の山と木曽の山を比べてもらおうというわけだが、やはり吉野で見せるとしたら巨木の人工林だろう。
単なる巨木の森なら、各地にあるだろうが、吉野の価値は、それらの木は人が植えて育てたものであること。そこで林齢 300年ほどの杉林に案内した。そこには直径1メートル以上のスギが、1000本以上残る。
「これは天然杉だろう」という言葉を聞いて、私としてはしてやったり。
しかし、「買うならあの木だね。通直で枝が高見までない。あちらのは太いけど、枝が多い」
さすがに、ちゃんめ値踏みをしている。
ここは、かなり奥地で吉野林業的な育林を十分に行われた場所ではない。それでも、美しい木に育っている。
切り株をチェック。芯は多少目荒で偏心しているが、やっぱり年輪がスゴい。
そこで、次は同じ巨木の森でも、非常に同心円の幹をしていて、価値の高い森を。
台風後で通行止めの標識を振り切って林道奥に入る。幸い巨木の群生地まではたどり着けた。ただ、私の知っている森からは、かなり伐採が進んでいる。林齢 は200年以上なのだが、以前よりかなり明るくなっていた。
その切り株を見る。きれいな円形だ。木目も詰まっている。最初こそ、おお! と驚いていたが、よく見ると…。
よく見ると、目割れしているではないか。
目割れとは、目廻りともいうが、ようするに年輪に沿って割れていること。この割れは、木材の価値を著しく下げる。
なぜなら、そこで木材は断裂していて、柾目を取れなくしてしまうからだ。せっかくの大径木の意味がない。
「この木を買った業者は、泣いているね」
伐ったのは素材生産業者か、あるいは山主・山守自身かわからないが、たしかに、これは価値ある! と思った木が目割れしていては、泣けるな。何百年も育てたのに価値が低いと言われるのは…。おそらく台風か何かで揺さぶられたか、あるいは凍裂か。
そういえば、昨日は森林総合研究所関西支所の講演会というか、研究発表会に行ってきたのだが、そこでも和歌山で100年もののスギを伐ったら、辺材が腐朽していたケースが紹介されていた。間伐の際に付いた傷から菌類が入ったらしいのだが、100年の価値は吹っ飛んでしまう。
林業が山師の世界なのは、このせいだな。
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