自然破壊的スポーツ、自然に優しいスポーツ
原稿が書けないと、とりあえず森を歩くことにしている。
雑音がないところで歩き、森を眺めていると、何か頭の中が整理されるような気がするからだ。これでアイデアが浮かべばもうけもの……て、まあ、パソコンの前に座っているのがイヤなので、現実逃避の言い訳かもしれない(笑)。
今日は時間もあまりなかったので、お手軽に矢田丘陵の遊歩道を選んだ。入り口に車で乗り付けられるからだ。
整備されているから歩きやすい……と思ったら、つい脇道に逸れて、藪こぎ一歩手前になってしまったのだが(笑)。
そこで思い出した。生駒市がこの遊歩道を作る際に、クレームを付けてきた団体があったそうだ。
森を切り開くのがケシカランという理由である。
市は話し合いの場を設けて、市民が遊歩道を歩くことによって自然と親しみ、健康と癒しを取り戻し……とまあ、ありきたりの説明をしたそうだが、彼らは納得しない。木を伐ること自体がケシカランという発想だから、話し合いは平行線。
ところで、この団体の素性を調べると、意外なことがわかった。なんとモトクロスをしている人々なのだ。おいおい、モトクロスって、山をバイクで走り回る、自然破壊のスポーツだろ。
と、怒鳴り合ったのかどうかは知らないが(^^;)、とにかく彼らの抗議は抗議として、遊歩道は完成したのである。
そこで考えてみた。
世の中に数多あるスポーツのうち、自然に優しいスポーツ、自然破壊的なスポーツとは何か。
一昔前なら、自然破壊の筆頭にあ買ったのがゴルフだろう。しかし、今頃そんな意見は下らない。造成時はともかく、自然被覆度はかなり高い。むしろ、野球やサッカーの方が自然破壊度は高いのではないか。
だって、野球(サッカー)に使われるグラウンドは全国に何十万カ所あるか。それらの合計面積は、ゴルフ場より多いかもしれない。そこには芝生さえ植えず、土がむき出しなのだから、自然度は低いだろう。
そして、エンジン系スポーツは、どう見ても自然破壊度が高い。化石燃料を遣いまくって、騒音出して、ろくでもない。それもトラックの中で収まるのならともかく、野外を走るモトクロスやトライアルなどは最悪ではないか……。
では、自然に優しいスポーツは。登山・ハイキングは、オーバーユース問題はさておき、自然に親しむ度合いが高いし、登山道の設置はたいした負荷はかけていまい。
遊歩道とは別ルートだが、人が入った形跡がある。奥行きはないから道ではなく、広場のようにして使ったのかもしれない。
うん。なかなかよいムードだ。自動車の騒音が聞こえるのが玉に傷だが、許容範囲だろう。ここで森林療法とか、森の幼稚園を行う場にしてもいいのではないか。
そんなことを考えていると、地面に目についたものがある。
小さな直径5、6ミリくらいの白い玉がわかるだろうか。
これらが無数に落ちている。材料は合成樹脂のようだ。
これは、おそらくBB弾と呼ぶ、エアソフトガンの弾である。昔の銀玉鉄砲みたいなものだ。
おそらく、ここでサバイバルゲームをしたのだ。ようするに戦争ごっこである。敵味方に分かれて、エアガンで撃ち合い勝ち負けを決める。だから大量の弾が落ちているのは、ここが「戦場」だったことを示す(^o^)。
そうか、サバイバルゲームもスポーツだと見立てると、これは自然破壊か優しいか。
やはり優しいスポーツだろう。山や森をそのまま理由するのだから。ほとんど自然を破壊する要素はない。BB弾を除いては。
何しろ大量に撃ちまくり、まき散らす。プラスチック製なら、自然界に残るわけだ。最近は生分解性プラスチックを使ったものも出てきているが、どの程度普及しているかわからないし、分解すると言っても数年間はかかる。その間、自然の落葉の中に白い姿を点々と見せているのである。
そこで思いついた。木材でBB弾は作れないのだろうか。木材なら、すぐに腐るし、森の中に散らばった場合も違和感がない。木製BB弾を使うエアソフトライフルも登場しないだろうか。
同じサバイバルゲームをするなら、痕跡残すようでは、本当のサバイバルにはならない。レンジャー部隊などは、一切の痕跡を消しつつ移動するのだよ。
« 周回遅れの吉野林業 | トップページ | 『森・識』書評・東京新聞 »
「森林学・モノローグ」カテゴリの記事
- 本日も…呪いの廃神社(2023.03.22)
- 最凶パワースポットの呪い(2023.03.21)
- 離島の思い出~黄島(2023.03.16)
- 読まずに書く「マザーツリー」論(2023.03.14)
- 木馬の再現実験をした頃(2023.03.12)
木材でBB弾は作れないのだろうか…なるほどです。
稲作やってた私は「鉛ではなく化成肥料で散弾作ってくれ」と思っていました
投稿: G3insatsu | 2011/11/26 00:13
おそらく鍵は、形の安定性でしょうね。寸法が伸び縮みしたら、エアで発射できなくなるから。
木材でなくても、肥料団子や種子入り団子でサバイバルゲームしたらいいのに。
投稿: 田中淳夫 | 2011/11/26 01:11
木ペレットBB弾、賛成(^-^)/
投稿: 茂吉 | 2011/11/26 01:56
森を一人さまよっていたらサバゲー集団と遭遇したことがあるなあ.あれは怖かった.
で,足元のプラBB弾に気づいたのだけど,そこまでNatureにこだわるのならどんぐりを撃てばいいのにと思ってしまいました.こういうこと言うと軍ヲタからは絶対馬鹿にされるのだけど.
投稿: あがたし | 2011/11/26 08:55
思いついた。完璧なBB弾を木材でつくるのではなく、木質ペレットやドングリを発射できるエアソフトガンを作ればいいんだ(^o^)。
木質ペレットが弾になれば、安く供給できるぞ。赤字のペレット工場も助かるし。
投稿: 田中淳夫 | 2011/11/26 09:10
私のトライアルクラブは長年に渡って『森林整備』をしています。
10万坪規模のキャンプ場でトライアルの大会を開催するに当たり選手が移動するルートにある倒木や枝葉を取り除いたり、競技セクション付近では、見通し良くするために(明るくする)とか選手や観客の怪我防止のため、また快適雰囲気を作るために所謂森林整備をします。
大会開催準備としての森林整備にも相当の時間を掛けます。その準備そのものの方が楽しみだと言う者もいます。
準備スタッフは自前の(自慢の!!)道具を持ってますし『myチェーンソー、しかも一人で数台』を有する方もいます。
来月開催の大会に向けての森林整備は難儀したようです。
・・・先般の台風の影響で多数の倒木がありチェーンソーで『切り捲った』との報告を受けました。(私は高齢のため準備作業には参加してません)
今後の森林整備のために『エンジン式小型ロープウィンチ』を購入しましたので活用して行きます。
バイクスポーツ愛好家の、『影の努力』を知っていただきたくて記述しました。
因みに私のクラブは当該キャンプ場で30年間、活動しています。
投稿: ベンツ仙人 | 2011/11/26 10:22
やる気を出す方法です(^|〜)
「やる気」は脳のほぼ真ん中にある側坐核(そくざかく)という部分が働き脳内物質が分泌することで「やる気」がでてきます。(参考文献:海馬—脳は疲れない)
側坐核(そくざかく)は脳の真ん中に左右ひとつづつある小さな器官です。
側坐核に刺激を受けると「やる気」が出るのですが、この側坐核はやっかいで、あなたがやる気を出そうと思っても、なかなか活発に動き出しません。
では、どうすればこの側坐核が活発に働き、やる気が出てくるのか?
答えは、 実際に行動する、 です。
脳の側坐核は作業すると、興奮し活発に動き出し、やる気に繋がります。 これを作業興奮といいます。
田中さんは、歩き回ることでご自分の脳の側坐核を興奮させていたんですよ。
私も、桂川、宇治川,木津川の合流する三川合流地域を自然観察してますが,オレンジ色のBB弾が足下に散乱しているのを目にします。
また、以前は河川敷でモトクロスのコースができてましたが、モトクロスを運ぶ車が入れないようにゲートを設けてからコースはなくなり、今では元に戻りました。要するに、草ぼうぼうです。
最近は、八幡市から下流の淀川沿いに立派なアスファルトの道路(地震発生時の緊急道路とか)ができましたので,土日は高価なバイクにまたがった中年のバイクライダーが走り回っております m(〜|〜)m
投稿: 高桑進 | 2011/11/26 11:32
こ~ゆ~のを書けば、きっとモトクロスやトライアルをしている人から反論などが来るだろうな、と期待しておりました(^o^)。
ここに記したのは、純然なるスポーツの環境負荷について考えたものです。もしトライアルなどを行う団体が、バイクが引き起こす負荷部分を埋めるために森林整備にも汗を流すのなら、それは素晴らしいことです。
見方を変えると、森林ボランティアのような趣味の林業作業も、技術がなければ環境負荷を与えているかもしれませんね。
投稿: 田中淳夫 | 2011/11/26 13:24
「やる気を出すため」というより、現実逃避かもしれません(~_~;)。だって、歩きながら上記のようなことを考えて、これはブログのネタができた、とほそくんでいたのだから。
肝心の原稿のアイデアはどうしたんだ、と突っ込まないでください(-.-)。
ところで、オレンジ色のBB弾があるのですか。どうせなら黒か焦げ茶くらいにすればいいのに。そうしたら目立たなくなるだけマシです。環境的には何の解決にもならないけれど。
投稿: 田中淳夫 | 2011/11/26 13:28
適当に、かつ費用もかけないで楽しい現実逃避を楽しむ術を心得ておられるのですから、素晴らしい!
サバイバルゲームは他人に迷惑をかけないでやる分には,いいと思いますが。色々なゴミをまき散らしていくのは良くないでしょう。
あの色のついたBB弾、もしかして野鳥や動物が間違って食べているかもしれませんので、弾丸として使えるペレットか、現在のペレットを弾丸にするエアライフルを開発するのもいいですね。
投稿: 高桑進 | 2011/11/26 17:02
褒め殺しですな(~_~;)。
たしかにBB弾は、鳥獣が誤って飲み込む可能性がありますね。そこのところはサバイバルゲーム関係者はどのように考えているのだろう。
本当は、当たると砕けて粉になるような弾だったらいいんですけどね。
投稿: 田中淳夫 | 2011/11/26 22:31
ごっ・・・ごめんなさい。昔「ラリー」やってました・・・。
ところで、もうじき海岸近くで「パンパン」と銃声がする時期です。
「狩猟」はスポーツとは言えないかもしれないけどが「鉛球を飲み込んだ鳥が死んだ」って報告が時たまありますね。
でも殿様や王様の「狩場」は自然がいっぱいだったし・・・。
恐らくは、我々庶民がキャンプへ行って清流に界面活性剤をジャブジャブと流したり湖畔でBBQをした後に鉄板の油分を湖水で洗うのがイチバン自然環境への負荷は高いかと・・・
投稿: 建具屋・都築@三河湾岸です | 2011/11/27 11:51
田中様
お世話になります。
BB弾ですか?以前、自然にもどるBB弾がありましたが、使っていないのでしょうか?
ダンロップで有名なゴルフ場は、白蟻の宝庫でした。グリーンキーパーさんの話だと白蟻さんは大変ありがたい重機だそうです」芝を傷めることなく、いつの間にか大木の切株を消してしまうそうで、重機が要らないそうです。切株にゴルフボールが当たっても不運でかたづけられるそうですが、重機で痛めた芝にはクレームがつくそうで・・・。
投稿: 海杉 | 2011/11/28 17:11
キャンプのほとんどはキャンプ場内で行われていて、無粋なほど管理されていますから、さほどの環境負荷はないでしょうが(もっとも、管理者の意識次第だけと)、川辺などで勝手に行われているキャンプやバーベキューの環境負荷は高いでしょうね。
自然にもどるBB弾とは、生分解性プラスチック製のものでしょう。ただ、これも分解まで数年かかるんですね。
合成樹脂を食べてくれる白蟻でも大発生してくれないかな。
投稿: 田中淳夫 | 2011/11/28 22:46